OncoLog 2015年9月号◆House Call「がん治療薬の種類」 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2015年9月号◆House Call「がん治療薬の種類」

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OncoLog 2015年9月号◆House Call「がん治療薬の種類」

MDアンダーソン OncoLog 2015年9月号(Volume 60 / Number9)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

House Call「がんの治療薬の種類」

抗がん剤といえば、「化学療法」という言葉が最初に思い浮かぶかもしれない。ところがこの用語は、作用や副作用が異なるさまざまな種類の抗がん剤を意味する。各種の抗がん剤を理解することが、患者や家族、友人にとって有用である。

 

一般に、抗がん剤はほぼ、細胞傷害性薬剤、分子標的薬、免疫療法薬の3種類のいずれかに分類される。細胞傷害性薬剤は、がん細胞と健常細胞を区別することができないため、あらゆる種類の細胞を殺傷する。従来の化学療法薬のほとんどがこのグループに属する。分子標的薬は比較的新しい種類の薬であり、がん細胞の増殖を促進する特定の分子に作用してその働きを妨害する。免疫療法薬は、がんと闘う体の免疫系を刺激する。

 

患者にとって各種薬剤の大きな違いは副作用である。細胞傷害性薬剤は体内のあらゆる細胞に影響を及ぼすため、重症の副作用を引き起こすことがある。どの細胞傷害性薬剤も同じ副作用を生じるわけではないが、一部の薬剤の副作用には脱毛、悪心および疲労がよくみられる。細胞傷害性薬剤によって神経が損傷する可能性もあれば、集中力や記憶力が低下することもある。一方、分子標的薬はふつう、がん細胞に影響を及ぼし、副作用はそれほど重症ではないことが多く 、発熱、下痢、血液凝固や創傷治癒の障害、皮膚障害、高血圧、肝障害などが生じる。また、免疫療法は、インフルエンザ様の症状、発疹または血圧低下を起こす可能性がある。

 

細胞傷害性薬剤による薬物療法

細胞傷害性薬剤はがん細胞を殺傷または傷害し、複製(細胞が分裂して二つになること)できないようにする。細胞傷害性薬剤は、その機能、構造および他の治療法との関係によって分類される。薬剤の中には、下の複数のグループにあてはまるものもあることに留意することが大切である。
・アルキル化剤は、細胞のDNAに損傷を与えて細胞が複製できないようにする。
・代謝拮抗剤は、RNAまたはDNAの構成成分 と置き換わり、RNAまたはDNAの複製を妨げる。
・抗腫瘍性抗生物質は、がん細胞のDNAを攻撃し、細胞が増殖して複製を続けることができないようにする。
・トポイソメラーゼ阻害剤は、DNAが複製する時に、DNAの二本鎖の分離を助ける酵素(タンパク質の一種)の働きを妨げる。
・有糸分裂阻害剤は、細胞が二つの娘細胞に分割する過程である有糸分裂を止める。

 

分子標的療法

標的療法は、分子標的薬または個別化医療(precision medicines)としても知られており、特定の標的(通常はがんの増殖や進行に直接的にまたは間接的に関与するタンパク質あるいは遺伝子)の作用を妨げるように作られている。標的薬には主に低分子薬とモノクローナル抗体の二種類がある。それぞれ異なる方法でがん細胞を標的とする。

 

低分子薬は細胞の中に入り込むことができ、細胞内の標的とするタンパク質に作用する。低分子薬の多くは一般名の末尾にイブ(-ib)がつく。

 

モノクローナル抗体薬は、天然の抗体(細菌、ウイルスまたはがん細胞の表面にある標的タンパク質 に結合するタンパク質)同様に機能し、体の免疫系が侵入してくる細胞の場所を確認して破壊することができるようにする。モノクローナル抗体薬の一般名には末尾にマブ(-mab)がつく。

 

分子標的薬はその機能からさまざまな種類に分けることができる。がんの研究が進むにしたがって、種類も増えている。よく用いられる標的薬をいくつか下に紹介する。
・シグナル伝達阻害剤は、がん細胞に複製せよという信号を送る酵素の働きを妨げる。
・アポトーシス誘導剤は、がん細胞の制御された細胞死を引き起こす。
・血管新生阻害剤は、腫瘍に向かって新しい血管が形成されるのを妨げる。
・ホルモン療法は、体の中で特定のがんが生き残るために必要なホルモンが作られるのを止める。ホルモン療法薬は特定のホルモンに作用するが、低分子薬やモノクローナル抗体のように特異的な分子を標的とするものはほとんどない。
・抗体薬物複合体は、細胞傷害薬または放射性薬剤の分子が、がん細胞を標的とするモノクローナル抗体に結合している薬剤である。

 

免疫療法

免疫療法は、体の自然な免疫系ががんと闘うのを助ける。モノクローナル抗体など分子標的薬の一部は、特定のタンパク質に対する免疫応答を刺激するため、免疫療法薬と考えることもできる。このほか、免疫療法は免疫系による一般的な応答を刺激する。非特異的な免疫療法薬のうち、よくある2種類を下にあげる。
・インターフェロンは、体の免疫細胞ががんまたは感染症と闘う力を向上させる。
・インターロイキンは、免疫細胞の増殖と複製を促進する。

 

治療の組み合わせ

細胞傷害性薬剤、分子標的薬、免疫療法薬のいずれも互いに併用するだけでなく、手術や放射線療法など他のがん治療と併用することができる。がん細胞が細胞傷害性薬剤または分子標的薬に対して耐性を発現する可能性があるため、そのような各種併用療法が推奨されることが多い。

—–K.Nair

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳ギボンズ京子

監修金田澄子 (薬学)

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