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メルケル細胞がんにおけるPD1阻害の有望性(ECC2015)

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メルケル細胞がんにおけるPD1阻害の有望性(ECC2015)

欧州臨床腫瘍学会(ESMO) プレスリリース

 

ペンブロリズマブによる全身治療で示された高い奏効率―メルケル細胞がん

 議題:メラノーマ/腫瘍免疫学

PD-1を阻害するモノクローナル抗体ペンブロリズマブ[pembrolizumab]を投与したメルケル細胞がん(MCC)患者のうち5人に確定奏効、3人に不確定奏効が認められたとの第2相臨床試験の結果が、2015年9月25~29日、オーストリアのウィーンで開催された欧州がん学会(ECC2015)で発表された。

 

MCCは患者の免疫反応(免疫からの攻撃)をしばしば回避することから、治療が難しい。そのため今回の奏効は特に注目に値する。MCCは、まれではあるものの悪性度の高い皮膚がんの1つで、紫外線曝露、また本疾患において高頻度に検出されるメルケル細胞ポリオーマウイルスと関連している。

 

転移したMCCでは化学療法が奏効しても、それを持続させることは困難であり、無増悪生存期間は90日前後に止まることが多い。

 

しかし、MCCの腫瘍はPD-L1を発現することから、研究者はMCCを免疫療法の標的とする、つまりPD1阻害に反応させることが可能なのではないかと考えた。

 

患者コホートの拡大を盛り込んだ試験デザイン

9月27日、一般演題(proffered papers)セッション「メラノーマと皮膚がん(”Melanoma and Skin Cancer”)」において、米国シアトルにあるワシントン大学医学部皮膚科専門医でありフレッドハッチンソンがん研究センターの研究者であるPaul Nghiem氏は、がん免疫療法臨床試験ネットワーク(CITN)および米国国立がん研究所がん治療法評価プログラム(CTEP)のメンバーを代表して本試験から得られた所見を発表した。

 

CITNが実施した今回の第2相臨床試験の目的は、進行MCCにおけるPD-1経路阻害の治療的有効性を検証することであった。また、欧州がん学会では、腫瘍ウイルスステータス、抗ウイルス免疫反応、腫瘍生検で検出した他の免疫マーカーなど、さらに長期にわたる追跡調査や相関研究で得られた結果が報告された。

 

今回の第2相臨床試験は非盲検単一群Simon法2段階試験として計画され、最初の患者9人の中で1以上の奏効が確認された場合、患者を24人に拡充することが認められた。全身治療歴のない進行性・切除不能MCC成人患者が試験適格とされた。また患者は、免疫不全あるいは自己免疫疾患に罹患していないこと、ECOGパフォーマンスステータス(全身状態)が良好であることが(試験参加上)必要とされた。

 

初回画像・臨床的評価で認められたペンブロリズマブの奏効

この継続中である臨床試験には18人の患者が登録、3週間毎にペンブロリズマブ2 mg/kgの投与、9~12週間毎に効果判定 (RECIST 1.1)を受けている。

 

これまで試験に登録された患者10人に対し、少なくとも1回の画像的・臨床的効果判定が実施された。その結果、完全奏効(CR)が1人の患者で、不確定CR(uCR)がもう1人の患者で達成されたことが判明した。部分奏効(PR)は4人の患者で、不確定PRは2人の患者で確認された。2人の患者は、病勢進行のため試験を中止した。

 

残る8人の患者に対しては、まだ初回スキャンが実施されておらず、そのうち、内臓の病態に関する放射線学的評価を待っている段階とはいえ、臨床的に評価可能な病変を有する3人においては、ペンブロリズマブ投与後、臨床的に評価可能な病変の退縮が認められた。

 

有害事象としては、初回投与後1人の患者でグレード4の心筋炎が発症し、2回投与後1人の患者でグレード4のトランスアミナーゼ上昇が認められた。しかし、2人ともペンブロリズマブを中止し、ステロイドを投与した後、改善に向かった。

 

興味深いことに、これらの患者は双方とも腫瘍に対する良好な奏効が得られ、1人において皮膚転移巣の退縮、もう1人において広範囲な内臓転移巣のPRの持続が認められている。

 

今回の試験結果を検討したCaroline Robert医師は、メルケル細胞がんなどの希少疾患への医療に対するニーズの高さを力説し、また、今回の試験では客観的に高い奏効率が示されたと述べている。入念に計画された橋渡し研究により、今回の試験結果がさらに重要な意味をもつようになるかもしれない。治療歴のある患者を対象とした、別の免疫療法薬、抗PDL-1抗体の第2相臨床試験が症例集積を完了した。

 

結論

著者らは、今回の試験がメルケル細胞がんにおけるPD-1阻害の最初の報告であると強調し、特筆すべきこととして次のように挙げている。初回全身治療としてペンブロリズマブを単独投与し、評価を行った患者10人のうち8人がPD-1経路阻害による奏効のエビデンスを示した(投与後に実施したスキャンで認められた確定奏効が5人、不確定奏効が3人)。臨床的に評価可能な転移を有し、患者数追加時に参加した患者3人のうち3人で臨床的腫瘍退縮がみられた(初回スキャンの前)。試験に組み入れられた患者18人のうち14人が臨床試験での抗PD-1療法を続けている。

 

今回高い奏効率が得られた一因は、ポリオーマウイルス(MCCを高頻度に誘発)由来の抗原に対する免疫反応なのではと研究者らは推測する。

 

上記のデータを発表することで、MCCにおけるPD-1経路阻害薬の迅速な臨床試験が促進され、悪性度の高いこのがんを患う患者にとって有益な結果がもたらされ得ると著者らは結論づけている。

 

【画像キャプション訳】
左上写真の脚注:治療前
右上写真の脚注:ペンブロリズマブ初回投与から3週間後
左下写真の脚注:治療前
右下写真の脚注:ペンブロリズマブ初回投与から12週間後における初回CT

腹部、骨盤、右大腿皮膚(1病変を左上写真に示す)に転移を有する転移性メルケル細胞がん(MCC)を発症した70歳の女性。骨盤転移巣(左下写真の矢印で示す)が膀胱を圧迫し、頻尿を誘発した。ペンブロリズマブ(2 mg/kg)の初回投与1週間後、頻尿が解消、下肢の病変も退縮した。下肢病変(右上写真)については投与3週間目に生検を実施した。その際、免疫組織化学検査で強固なリンパ球浸潤があった。MCC腫瘍細胞は消失していた。13週目(ペンブロリズマブ4回投与後)のCTにより、膀胱後壁腫瘤の完全消失(右下写真)、およびRECIST(固形がんの効果判定基準)に基づく50%超の縮小が確認された。この患者は副作用を発症することなく臨床試験での投与を継続し、腫瘍のサイズは縮小しつつある。
画像著作権:Paul Nghiem

 

参照

22LBA Activity of PD-1 blockade with pembrolizumab as first systemic therapy in patients with advanced Merkel cell carcinoma

 

原文掲載日

翻訳八木佐和子

監修小宮武文(呼吸器内科/NCI Medical Oncology Branch)

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