がんの症状および治療の副作用に対する補完療法と統合医療:科学的評価 | 海外がん医療情報リファレンス

がんの症状および治療の副作用に対する補完療法と統合医療:科学的評価

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がんの症状および治療の副作用に対する補完療法と統合医療:科学的評価

NCCIH 国立補完統合衛生センター    NCCIH Clinical Digest for health professionals

20155

身体的および精神的治療法

科学的な証拠により鍼治療、マッサージ療法、マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)やヨガなどの身体的、精神的治療法はがんの症状や治療による副作用の管理に役立つ可能性のあることが示唆されている。Society for Integrative Oncology(米国統合腫瘍学学会)による2009年版臨床実践ガイドラインでは、統合腫瘍学における補完療法や植物製剤の利用について、がん患者の不安、気分障害や慢性疼痛の軽減、およびQOLの改善に対する集学的取り組みの一環として、心身療法が推奨されている。2014年には、同じく米国統合腫瘍学学会が乳がん治療を受けた患者の支持療法としての統合療法の適応に関するガイドラインを発表した。American College of Chest Physicians(米国胸部疾患学会)2013年、肺がんの補完療法および統合医療に関するガイドラインを公表した。これらのガイドラインによる具体的な提言を次に述べる。

鍼治療

鍼治療は化学療法による悪心嘔吐の治療に役立つことを示すいくつかの証拠がある。しかし、鍼治療によりがん性疼痛または他の症状、たとえば疲労、ほてりや口内乾燥などが軽減されるかどうかを決定できる十分な証拠はない。

エビデンスベース
多くのランダム化比較試験の系統的レビューを基にした米国統合腫瘍学学会による臨床実践ガイドライン、同様に米国胸部疾患学会によるガイドラインでは、がんの症状や治療による副作用の軽減に対する鍼治療の有効性を示す証拠のあることが報告されている。

有効性
米国統合腫瘍学学会
により2009年に公表された臨床実践ガイドラインでは、疼痛の管理が不十分な場合、他の治療による副作用が著しい場合、化学療法または外科的麻酔法による悪心嘔吐のコントロールが十分でない場合、あるいは鎮痛剤の量を減らすことが臨床的な目標である場合、補完療法として鍼治療は推奨されている。しかし、疲労やほてりなどの他の症状に対する鍼治療の有用性は立証されていない。

米国胸部疾患学会により2013年に公表された肺がん患者のための補完療法および統合医学に関するガイドラインでは、鍼治療は化学療法または放射線療法による悪心嘔吐に対する補助療法の選択肢であることが示唆されている。このガイドラインでは、症状のコントロールが不十分であるがん性疼痛と末梢神経障害に対しても、鍼治療は補助的な選択肢であることが示唆されている。

口内乾燥症患者を対象とした試験9件(口腔がんの放射線療法を受けた参加者による試験4件を含む)について2013年に実施されたコクラン・レビューでは、エビデンスの信頼性は低いながら、放射線療法後に口渇のある患者では鍼治療により唾液の分泌はわずかながら増加するという結論に達している。

2015年に報告された、70人が参加した臨床試験では、化学療法による遅発性の悪心嘔吐の予防に鍼治療とオンダンセトロンで同等の効果があることが確認された。鍼治療群の参加者では有害事象はより少なく、QOLの改善も認められたとみられる。

安全性
鍼治療による合併症は鍼師が滅菌鍼を使用して適切な方法で行う限りまれである。化学療法と放射線療法は免疫抑制を誘発する可能性があるため、こうした患者を治療するときには、鍼師は清潔な鍼による施術を順守せねばならない。

マッサージ療法

研究によると、マッサージ療法はがんによる症状、例えば疼痛、悪心、不安や抑うつの軽減に役立つ可能性のあることが示唆されている。しかし、この分野では厳密な研究が行われていないため、研究者らはマッサージ療法の効果についていかなる結論にも達していない。

エビデンスベース
がんの症状や治療の副作用に対するマッサージ療法の有効性を示すエビデンスは、米国統合腫瘍学学会による多くのランダム化化臨床試験の系統的レビューに基づく臨床実践ガイドラインだけでなく、米国胸部疾患学会によるガイドラインにより構成されている。

有効性
米国統合腫瘍学学会により2009年に公表された臨床実践ガイドラインで、腫瘍学の研修を受けたマッサージ療法士によるマッサージ療法を不安や疼痛のある患者に対する集学的治療法の一環として考慮するよう推奨している。

米国統合腫瘍学学会により2014年に公表された、乳がん治療を受けた患者の支持療法としての統合療法の適応に関するガイドラインは、乳がん治療後の患者の気分障害の改善にマッサージ療法を推奨している。マッサージ療法はグレードBと評価されており、「マッサージ療法から得られる利益は中等度であるという確かな根拠か、あるいは利益は中等度から高度であるという中等度の根拠がある」とされている。

米国胸部疾患学会により2013年に公表された臨床実践ガイドラインは、通常の治療によっては適切に管理できない不安や疼痛のある肺がん患者に対する総合的ながん支持療法の一環としてマッサージ療法を推奨している。

2014年に報告された、559人が参加者した研究12件のメタアナリシスでは、疼痛のあるがん患者に対するマッサージ療法の有効性が評価された。これらの試験はマッサージ療法が疼痛、特に術後疼痛の緩和に役立つことを示唆している。

安全性
副作用の可能性を避けるには、マッサージ療法士は医療提供者の同意がなければ強い圧力をかけるべきではなく、また、腫瘍や既知の血栓の真上、または放射線療法後で皮膚が炎症を起こしやすい状態になっている可能性のある部位などは避けるべきである。

 

マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR

瞑想トレーニングの一種であるMBSRはがん患者の不安、ストレス、疲労や睡眠障害の解消、一般感情の改善に役立ち、QOLの向上に役立つというエビデンスがある。マインドフルネス研究の参加者の大多数は早期がんや原発性乳がん患者であるため、マインドフルネストレーニングを支持するエビデンスはこれらの集団で最も強い。

エビデンスベース
がん症状または治療による副作用に対するMBSRの有効性を示すエビデンスベースは、米国統合腫瘍学学会による数多くのランダム化比較試験の系統的なレビューに基づく、いつかの臨床実践ガイドラインにより構成されている。

有効性
米国統合腫瘍学学会により2009年に報告された臨床実践ガイドラインでは、不安や気分障害、慢性疼痛を軽減し、QOLを改善する集学的取り組みの一環としてMBSRを含む心身療法が推奨されている。

米国統合腫瘍学学会により2014年に公表された、乳がん患者の支持療法としての統合療法の適応に関する臨床実践ガイドラインでは、めい想、特にMBSRは放射線療法中と治療後の気分や抑うつの改善、ならびにQOLの改善に推奨されている。ガイドラインはMBSRをグレードAと評価しており、「得られる利益は高度であるという確かな根拠がある」と述べている。

これらのガイドラインは治療中および治療後の長期にわたる不安の改善にMBSRを推奨している。MBSRはグレードBと評価されており、「得られる利益は中等度であるという確かな根拠、あるいは利益は中等度から高度であるという中等度の根拠がある」とされている。

2013年に報告された、放射線療法施行中の早期乳がん女性172人のランダム化比較試験では、8週間のMBSRプログラムを栄養指導および通常の治療と比較した。MBSRプログラム参加中に放射線療法を受けた患者では、QOL、心理社会的対処能力、抑うつと不安など、多くの心理社会的側面において有意に改善が認められた。

2013年に報告された、9試験のメタアナリシスでは、乳がん患者のメンタルヘルスに対するMBSRによる効果のエビデンスが検討され、この集団においてMBSRにはストレス、抑うつや不安を改善する中等度から高度の好ましい効果のあることが認められた。

安全性
瞑想は健常者には安全であると一般的に考えられている。しかし、身体的制約のある者は、動きのあるような瞑想訓練に参加できない可能性がある。

不安障害やうつ病などの特定の精神状態にある者では、瞑想により症状が発症したり、悪化する可能性のあることが少数ながら報告されている。

ヨガ

ヨガにはがん患者の不安、抑うつ、精神的苦痛の改善に役立つ可能性のあることを示す予備的な証拠がある。またヨガは乳がん患者とサバイバーの疲労軽減に役立つ可能性もある。しかし、がん患者を対象にヨガの効果を評価した試験はわずかしかない。また、こうした試験のいくつかは、有意義な結論に達するのに必要とされる厳密性を備えて実行されたものでもない。

エビデンスベース
がんの症状や治療の副作用に対するヨガの有効性を示すエビデンスは、米国統合腫瘍学学会による多くのランダム化臨床試験の系統的レビューに基づく臨床実践ガイドラインだけでなく、米国胸部疾患学会によるガイドラインにより構成されている。

有効性
米国胸部疾患学会による2013年版ガイドラインでは、ヨガは肺がん患者の疲労や睡眠障害を改善し、気分やQOLを向上させる集学的取り組みの一環として提案されている。

米国統合腫瘍学学会 による2009年版臨床治療ガイドラインでは、ヨガを含む心身療法は不安、気分障害や慢性疼痛の軽減およびQOLの改善に対する集学的取り組みの一環として推奨されている。

米国統合腫瘍学学会による乳がん患者の支持療法としての統合療法の適応に関する2014年版ガイドラインでは、ヨガは放射線療法や化学療法を受ける患者の不安の改善に推奨されるとともに、疲労のある患者に推奨されている。

2015年に報告された、ランダム化比較試験のデータの二次分析では、60歳以上のがんサバイバー97人のがんに関連した全般的な疲労に対する4週間にわたるヨガ治療の効果が評価された。ヨガ介入群の参加者では標準的治療が行われた参加者に比べ、がんに関連した疲労、身体的疲労、精神的疲労や広範囲にわたる副作用による負担は有意に低かった。

2014年に報告された、補助化学療法を施行中の非転移性乳がん女性60人のランダム化比較試験では、抑うつ、不安および疲労に対する8週間のヨガ治療の効果が評価された。ヨガを行った参加者では全般的な疲労の軽減を認めたが、抑うつや不安に有意な改善は認められなかった。

39人が参加した試験の2014年のコクランレビューでは、血液悪性疾患患者の精神的苦痛、疲労、不安、抑うつと睡眠の質に対するヨガの効果が検討された。レビューでは、血液悪性疾患患者の症状の管理にヨガがどの程度効果的であるかを決定するにはデータが不十分であると結論づけている。

安全性
ヨガは体を動かすので、ヨガを始める前にヨガのどのような側面が安全でない可能性があるのか、がん患者は医療提供者と話し合うことが重要である。

 

天然物

植物製剤とがんに関する2008年のレビューでは、いくつかのハーブは副作用や悪心嘔吐、疼痛、疲労や不眠などの症状の管理に有望であるが、エビデンスは限られており、多くの研究は適切に計画されていないと結論づけている。症状の管理にハーブを使用することは、従来のがんの治療法との相互作用の懸念がある。植物サプリメントはがん治療に使用される薬剤の有効性に悪影響をおよぼす可能性がある。ハーブと薬剤との相互作用の可能性について医療従事者と話し合うべきであり、相互作用の可能性は医療従事者によって評価されるべきである。

生姜

生姜はハーブであり、従来の制吐剤の補助療法として使用する場合、がん化学療法に関連する悪心の治療に役立つ可能性がある。

エビデンスベース
いくつかのランダム化比較試験により、化学療法による悪心に対する生姜の有効性が示されている。

有効性
がん患者576人が参加した無作為化多施設二重盲検試験では化学療法による悪心に対する生姜サプリメントの効果が検討された。この研究では、生姜サプリメントを12回、化学療法を始める3日前から開始することにより、化学療法による急性の悪心の重症度は有意に軽減された。

2011年に報告された骨肉腫小児および若年成人(8~21歳)31人のランダム化二重盲検試験では化学療法60サイクルの期間における、プラセボと比較した根生姜粉末剤の制吐作用が評価された。根生姜粉末剤をオンダンセトロンとデキサメタゾンによる治療の付加療法として投与した場合、化学療法による急性および遅延性の悪心嘔吐の重症度は有意に低下した。

安全性
少量の生姜の摂取では副作用はほとんどない。最も多く報告された副作用は放屁(ほうひ:おなら)、鼓脹(こちょう:腸管内にガスが溜まる)、胸焼けと悪心であった。こうした影響はほとんどの場合、生姜粉末剤と関連していた。

その他の天然物

がん患者には概日リズム(体内時計)の異なる者もいる。ハーブであるバレリアンとセントジョーンズワートは睡眠を改善する可能性があるが、セントジョーンズワートはイリノテカンなどの化学療法剤、インジナビルなどの抗レトロウイスル剤と相互作用を起こすことが知られている。いくつかの試験ではカモミールやラベンダーなど、他の植物製剤による睡眠に対する作用が非がん集団で検討されたが、いずれの条件においてもこうした植物製剤の使用を支持するエビデンスはほとんどない。

二つの大規模試験では、ベータカロテンを含むサプリメントは喫煙者の肺がんリスクを高めることがわかっている。

 

原文掲載日

翻訳小縣正幸

監修大野 智(腫瘍免疫学、免疫療法、補完代替医療/大阪大学・帝京大学・東京女子医科大学)

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