10代および若年成人がん患者の多くが終末期に積極的治療を受ける

10代および若年成人がん患者の集団を対象とした最大の研究で、患者が十分な説明を受けた上での治療法選択の支援についてはさらなる調査が必要であることが示唆される

ダナファーバーがん研究所

 
 
ダナファーバー/ボストン小児がん血液疾患センターおよびカイザーパーマネンテ南カリフォルニア(Kaiser Permanente Southern California)の研究者が実施したレトロスペクティブ研究によると、がん末期の青年および若年成人の3分の2超は死亡前の1カ月間に1種以上の積極的治療介入を受けていた。

本日JAMA Oncologyに発表された本集団を対象とした最大の研究の結果では、患者が終末期の治療選択肢を熟考するに際し適切な支援を受けているか、この治療パターンは患者が熟慮した希望を反映しているかについてさらなる研究の必要性を提言する、と著者らは述べている。

本研究の研究者らは、2001年から2010年までにがんで死亡した15~39歳の患者633人を対象に死亡前1カ月間における4種の積極的処置(集中治療、救急治療室、化学療法、入院)の利用状況を評価した

カイザーパーマネンテ南カリフォルニアで治療を受けた患者は、ステージIVのがんと診断されたか、あるいはがんの再発が認められた患者のいずれかであった。患者111人のサブセットを対象とした初期のレビューでは、98%の症例に死亡が予測されていたことが判明した。

本研究では以下が判明した。

  • 若年患者は、死亡前1カ月間に集中治療や救急治療室を利用する傾向が65歳以上のメディケア患者の倍以上であった。これらの治療介入を利用した高齢患者は10%未満であったのに対し、青年および若年成人は22%であった。
  • 化学療法および入院の利用は両年齢群で同程度であった。若年患者の11%は死亡前の2週間に化学療法を受け、62%は死亡前の30日間に入院していた。

「終末期に直面している若年者については特に難しい」と、筆頭著者であるダナファーバー/ボストン小児病院の小児がん専門医で、ダナファーバーがん研究所のPopulation Sciences’ Center for Outcomes and Policy Research 部門の研究者であるJennifer Mack氏(医学博士、公衆衛生博士)は述べた。 「積極的治療の利用は、さらに長生きできるなら如何なる手段でも使いたい若年者が医師から詳細な説明を受けた上での決断かもしれないが、医療介入の一部は生活の質の低下という代償を伴う本研究は、患者がどのような治療を受けているか、患者の終末期に彼らの生活の質を最良とするためにわれわれはどうすればよいかについて問題を提起するものである」。

青年および若年成人の終末期治療については十分に研究されていない。フランスの1施設で患者45人の転帰を調査した先行研究がある。カイザーパーマネンテ南カリフォルニアは、民族的、人種的、経済的に多様な370万人の患者人口を有するマネージドケア組織である。

「われわれは、患者と早期に予後について話し合い、治療に関する意向を確認し、その意向が反映されたケアを提供すべく一緒に取り組んでいくことを考えるべきである」とMack氏は述べた。「積極的治療は患者の望みかもしれないが、思慮のある対話がなされることなく、死期が近いことも知らされずに患者は治療を受けながら亡くなるかもしれないのである」。

その他の著者は、カイザーパーマネンテ南カリフォルニアのLie H. Chen (公衆衛生博士)、 Kimberley Cannavale(公衆衛生修士)、Olivia Sattayapiwat(公衆衛生修士)、 Robert M. Cooper(医学博士)、Chun R. Chao(博士)である。
本研究は、がん研究ネットワークおよび米国国立がん研究所の資金提供を受けた(U24CA171524)
 

翻訳担当者 近藤あゆ美

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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