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センチネルリンパ節生検

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センチネルリンパ節生検

原文更新日: 11/18/2011

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―キーポイント―
•センチネルリンパ節とは、がん細胞が原発巣から最初に転移する可能性が最も高いリンパ節のことです。

•センチネルリンパ節生検(SLNB)は、体内のがんの拡がりやがんの病期を調べるために用いられます。

•センチネルリンパ節生検では標準的なリンパ節摘出手術と比べて侵襲が低く、摘出するリンパ節数も少ないため、有害な事象や影響を受ける可能性が低くなります。

 

1.リンパ節とは何でしょうか?

リンパ節は小型で円形の器官で、身体のリンパ系の一部です。リンパ節は全身に存在し、互いにリンパ管で接続しています。リンパ節群は、頚部、脇の下(腋窩部)、胸部、腹部、および脚の付け根(鼠径部)に存在しています。リンパ管やリンパ節には、リンパ液と呼ばれる透明の液体が流れています。

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(図:原文ページ参照)
図内:扁桃、胸腺、動脈、静脈、リンパ節、リンパ管、脾臓、骨髄
図のキャプション
『リンパ系の解剖図、リンパ管およびリンパ節、扁桃、胸腺、脾臓、骨髄などのリンパ器官を示しています。右上の拡大図はリンパ節とリンパ管の構造を示しており、矢印はリンパ液やリンパ球と呼ばれる免疫細胞がリンパ節に出入りする様子を示しています。右下は骨髄の拡大図です。』
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リンパ液は、毛細血管と呼ばれる細い血管から拡散(漏出)する間質液という液体に由来しています。間質液には、血漿、タンパク質、グルコース、酸素などさまざまな物質が含まれています。身体の細胞のほとんどが間質液に浸っており、そこから成長や生存に必要な酸素や栄養素の供給を受けています。また、間質液は老廃物以外にも細胞から細菌やウイルスなどを受け取り、これらの物質を身体組織から除去するのに役立っています。間質液は最終的にリンパ管に集合し、リンパ液になります。リンパ液は体内のリンパ管を流れ、首の付け根にある2本の太い管に到達し、体内を循環する血液と合流します。

リンパ節は身体の免疫系の重要な器官です。リンパ節には、B細胞やT細胞をはじめとするさまざまな種類の免疫系細胞が存在します。免疫系細胞は、リンパ液中に細菌やウイルスなどの「外来」物質が存在するかどうかを監視します。外来物質を検出した場合は一部の細胞が活性化し、免疫応答が誘発されます。

また、リンパ節はがん細胞が身体の他の部位に転移する能力を有しているかを判断する手がかりとしても重要です。多くの種類のがんがリンパ系を介して転移しますが、がんが最初に転移する部位のひとつが近傍リンパ節です。

 

2.センチネルリンパ節とは何でしょうか?

 センチネルリンパ節とは、原発巣からがん細胞が最初に転移する可能性が最も高いリンパ節のことです。センチネルリンパ節は複数個存在する場合もあります。

 

3.センチネルリンパ節生検とは何でしょうか?

 センチネルリンパ節生検(SLNB)は、センチネルリンパ節を同定して摘出し、がん細胞の有無を調べる手法です。

センチネルリンパ節生検の結果が陰性の場合、そのがんには近傍リンパ節や他の器官に転移する能力がないことが示唆されます。結果が陽性の場合は、がんがセンチネルリンパ節に転移しており、他の近傍リンパ節(領域リンパ節と呼びます)や、場合によっては他の器官にも転移している可能性があります。この情報は医師ががんの病期(体内のがんの拡がり)を診断し、適切な治療計画を立てるのに役立ちます。

 

4.センチネルリンパ節生検ではどのようなことをするのでしょうか?

 執刀医が、センチネルリンパ節の位置を確認するために放射性物質およびブルーダイ(染色剤)のいずれかまたは両方をがん周辺に注入します。次に、放射線を検出する機械を用いてセンチネルリンパ節を検索するか、またはブルーダイに染まったリンパ節を検索します。センチネルリンパ節を発見したら、リンパ節上の皮膚を小さく切開(約1/2インチ≒1.27cm)し、リンパ節を摘出します。

次に、病理医がセンチネルリンパ節にがん細胞が存在するかどうかを確認します。がんが発見された場合は、外科医が生検と同時に、または次回以降の手術時に他のリンパ節も摘出します。センチネルリンパ節生検は、日帰り入院の場合と短期入院が必要な場合があります。

通常、センチネルリンパ節生検は原発巣摘出術と同時に行います。しかし、原発巣摘出術に前後して実施することもできます。

 

5.センチネルリンパ節生検の利点は何でしょうか?

 センチネルリンパ節生検は、医師ががんの病期を診断し、がん細胞が身体の他の部位に転移する能力を発現するリスクを推定するのに役立つほか、一部の患者では、さらに広範囲のリンパ節を摘出する必要がなくなる可能性があります。センチネルリンパ節に転移が認められなければ、他の近傍リンパ節を摘出してがん細胞の有無を調べる必要はないかもしれません。リンパ節全郭清術は有害事象が認められる場合があり、摘出するリンパ節の数が少なければ、副作用を軽減または回避できる可能性があります。予期される副作用には次のようなものがあります。

•リンパ浮腫(または組織腫脹)。センチネルリンパ節生検やさらに広範囲のリンパ節を摘出する際には、センチネルリンパ節やリンパ節群に通じるリンパ管を切断するため、摘出部位を通るリンパ液の正常な流れが遮断されます。このため、リンパ液が異常に貯留する場合があります。リンパ浮腫患者では、腫脹以外に患部の痛みや不快感を伴うことがあり、患部を覆う皮膚が肥厚または硬化する場合があります。腋窩部や鼠径部のリンパ節を広範囲に摘出する場合、腕や脚全体が腫脹する可能性があります。さらに、患部や手足に感染がおこる危険性が高くなります。ごくまれに、広範囲のリンパ節摘出による慢性リンパ浮腫が原因で、リンパ管肉腫と呼ばれるリンパ管のがんが発生する場合があります。
•漿液腫を生じ、手術部位にリンパ液が貯留します。
•手術部位の麻痺、チクチク感または痛み。
•患部がうまく動かせない。

 

6.センチネルリンパ節生検には他にも欠点がありますか?

 センチネルリンパ節生検では他の外科処置と同様に手術部位の短期的な痛みや腫脹、内出血を生じることがあり、感染の危険性が高くなります。また、一部の患者ではセンチネルリンパ節生検に用いるブルーダイに対する皮膚反応やアレルギー反応が認められることもあります。このほかに考えられる欠点は、生検結果が偽陽性となる、つまりがん細胞がセンチネルリンパ節に存在しているのに検出されず、すでに領域リンパ節や身体の他の部位に転移している可能性があることです。生検結果が偽陰性の場合は、体内のがんの拡がり具合について患者さんや医師に誤った安心感を与えてしまいます。

 

7.センチネルリンパ節生検はあらゆるがんの病期診断に用いられるのでしょうか?

 違います。センチネルリンパ節生検は主に乳がんやメラノーマの病期診断に用いられます。しかし、SLNBは大腸がん、胃がん、食道がん、頭頸部がん、甲状腺がん、非小細胞肺がんなど他の種類のがんに対しても利用が検討されています(1)。

 

8.乳がんに対するセンチネルリンパ節生検の利用について、どのような研究結果が報告されていますか?

 乳がん細胞が最初に転移する可能性が最も高いのは、罹患側乳房に隣接する腋窩部、すなわち脇の下のリンパ節です。しかし、胸部中央付近(胸骨付近)に発生した乳がんでは、腋窩部にがん細胞が同定される前に胸骨(胸骨傍)リンパ節に転移することもあります。

腋窩リンパ節の数には個人差がありますが、一般に20個から40個です。これまでは、2つの理由から腋窩リンパ節摘出術(腋窩リンパ節郭清術またはALNDと呼ばれる手術)が実施されてきました。1番目の理由は、乳がんの病期診断と領域再発の予防です。(乳がんの領域再発とは、近傍リンパ節に遊走した乳がん細胞が、新たにがんを発生させた場合におこります)。

複数のリンパ節を同時に切除すると有害な症状が現れることが明らかにされているため、リンパ節腫大や「集塊形成(しゅうかいけいせい)」(塊状になったり互いに付着して離れない)といった腋窩リンパ節転移の臨床徴候が認められない女性の乳がんを、センチネルリンパ節生検のみで十分に病期診断できるかどうか検討しました。

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図中:リンパ節、放射性物質または染色剤、がん
プローブ、センチネルリンパ節
がんとセンチネルリンパ節を摘出
図のキャプション
乳房のセンチネルリンパ節生検。放射性物質およびブルーダイのいずれかまたは両方をがん周辺に注入します(左図)。注入物質を肉眼的に、あるいは放射線を検出する機械で検索します(中央図)。センチネルリンパ節(注入物質を最初に取り込むリンパ節)を摘出し、がん細胞の有無を確認します(右図)。
===

腋窩リンパ節転移の臨床徴候が認められない乳がん女性5,611人を対象とした第3相試験では、米国国立がん研究所(NCI)臨床試験共同研究グループの米国乳がん・大腸がん術後補助療法プロジェクト(National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project)が、参加者を「センチネルリンパ節生検」単独施行群または「センチネルリンパ節生検」+「腋下リンパ節郭清術」併用群に無作為に割り付けました(2)。次に、両群のセンチネルリンパ節転移陰性女性(計3,989人)を平均8年間追跡しました。大多数の女性(87.5%)は乳房温存術を、残りの女性は乳房全摘術を受けました。このうち約88%の女性は術後補助全身療法(化学療法、ホルモン療法、またはその両方)を、82%の女性は放射線外照射療法を罹患測乳房に実施しました。

研究者らは、両群間の全生存率および無病生存率に差がないことを明らかにしました。この結果をもとに、腋窩リンパ節転移の臨床徴候が認められないセンチネルリンパ節生検で陰性の女性が乳がん手術、術後補助全身療法、および放射線外照射療法を受ける場合は、腋下リンパ節郭清術が不要であるかもしれないという結論に達しました。

続いて、もう一つのNCI臨床試験共同研究グループである米国外科学会腫瘍グループが、第3相臨床試験の追加試験成績を報告しました。この試験では、センチネルリンパ節転移陽性で腋窩リンパ節転移の臨床徴候が認められない女性に乳房温存術とセンチネルリンパ節生検を実施し、それ以上リンパ節を郭清しなくても安全に治療できるかどうかを検討しました(3)。この試験では、891人の女性を「センチネルリンパ節生検」単独施行群または「センチネルリンパ節生検」後「腋下リンパ節郭清術」施行群に無作為に割り付けました(3)。参加女性全員が乳房温存術を受けました。このうち95%を超える女性が術後補助全身療法(化学療法、ホルモン療法、またはその両方)を、90%の女性が放射線外照射療法を罹患側乳房に実施しました。

この試験結果が報告された時点では、患者の追跡期間中央値は6.3年でした。両群の5年全生存率(「センチネルリンパ節生検」単独群92.5%に対し「センチネルリンパ節生検」+腋下リンパ節郭清術」群91.8%)および5年無病生存率(「センチネルリンパ節生検」単独群83.9%に対し「センチネルリンパ節生検」+「腋下リンパ節郭清術」群82.2%)は同程度でした。研究者らは、センチネルリンパ節転移陽性で他のリンパ節転移の臨床徴候が認められない女性に乳がん手術、全身療法、および放射線外照射療法を行う場合、センチネルリンパ節生検のみを実施しても安全であり、患者の生存率に影響を与えないという結論に達しました。この試験で、腋下リンパ節郭清術を実施せず、センチネルリンパ節生検のみを行った女性を対象に優れた成績が得られた理由の一つは、センチネルリンパ節以外の腋窩リンパ節や身体の他の部位に波及した可能性がある乳がん細胞を、放射線局所療法や最新の全身療法によって効果的に治療できたためであると考えられます。

 

9.メラノーマに対するセンチネルリンパ節生検の利用について、どのような研究結果が報告されていますか?

研究者らは、センチネルリンパ節転移が陰性で他のリンパ節転移の臨床徴候が認められないメラノーマ患者に対しても、原発巣摘出時に広範囲のリンパ節郭清を省略できるかどうか検討しました。25,240人の患者データを含む71件の試験を対象としたメタ解析結果から、この問題に対する回答が「イエス」であることが示唆されます。このメタ解析では、センチネルリンパ節生検陰性患者の領域リンパ節再発リスクが5%未満であることが明らかになりました(4)。

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図内:リンパ節、放射性物質または染色剤、がん
センチネルリンパ節、プローブ
センチネルリンパ節摘出
図のキャプション
メラノーマ患者のセンチネルリンパ節生検。放射性物質またはブルーダイのいずれかまたは両方をがん周辺に注入します(左図)。注入物質を肉眼的に、あるいは放射線を検出する機械で検索します(中央図)。センチネルリンパ節(注入物質を最初に取り込むリンパ節)を摘出し、がん細胞の有無を確認します(右図)。センチネルリンパ節生検は、がん摘出の前後いずれも実施可能です。
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研究者らは、センチネルリンパ節転移陽性時にセンチネルリンパ節生検と残存領域リンパ節摘出術(リンパ節完全郭清術またはCLNDと呼びます)を実施した場合、メラノーマ患者の無病生存率およびメラノーマ特異的生存期間(メラノーマによる死亡までの期間)に対して治療効果が認められるかどうか、というもう一つの問題を提起しています。この問題に取り組むため、NCI(米国国立がん研究所)とジョン・ウェインがん研究所が多施設共同選択的リンパ節郭清試験II(MSLT-II)と呼ばれる大規模第3相臨床試験に資金提供を行いました。この試験では、センチネルリンパ節転移陽性で他のリンパ節転移の臨床徴候が認められない患者1,900人以上を、直ちにリンパ節完全郭清術を施行する群、または定期的に残存領域リンパ節の超音波検査を実施し、新たなリンパ節転移の徴候が認められた場合にリンパ節完全郭清術を施行する群に無作為に割り付けました。この試験では対象患者を10年間追跡しました。

 

10.センチネルリンパ節生検に関する臨床試験の詳しい情報はどこで入手できますか

 がんに対してセンチネルリンパ節生検を検討した最新の臨床試験に関する情報は、NCIのホームページから入手できます。センチネルリンパ節生検に関する最新の臨床試験にアクセスするか、臨床試験検索フォームを利用して情報を入手できます。または、NCIのがん情報サービス(CIS)にセンチネルリンパ節生検の臨床試験に関する情報についてお問い合わせください。

*日本語では、「がん情報サービス」http://ganjoho.jp/public/index.html をご覧ください。

主要参考文献
1.Chen SL, Iddings DM, Scheri RP, Bilchik AJ. Lymphatic mapping and sentinel node analysis: current concepts and applications. CA: A Cancer Journal for Clinicians 2006; 56(5):292–309. [PubMed抄録]
2.Krag DN, Anderson SJ, Julian TB, et al. Sentinel-lymph-node resection compared with conventional axillary-lymph-node dissection in clinically node-negative patients with breast cancer: overall survival findings from the NSABP B-32 randomised phase 3 trial. Lancet Oncology 2010; 11(10):927–933. [PubMed抄録]
3.Giuliano AE, Hunt KK, Ballman KV, et al. Axillary dissection vs no axillary dissection in women with invasive breast cancer and sentinel node metastasis: a randomized clinical trial. JAMA: The Journal of the American Medical Association 2011; 305(6):569–575. [PubMed抄録]
4.Valsecchi ME, Silbermins D, de Rosa N, Wong SL, Lyman GH. Lymphatic mapping and sentinel lymph node biopsy in patients with melanoma: a meta-analysis. Journal of Clinical Oncology 2011; 29(11):1479–1487. [PubMed抄録]

関連情報 (以下原文*PDQ日本語版は「がん情報サイト」で閲覧できます。)
1.乳癌の治療(PDQ®)
2.がんの病期診断
3.臨床試験共同研究グループプログラム
4.リンパ浮腫(PDQ®)
5.メラノーマの治療(PDQ®)
6.What You Need To Know About™ 乳がんについて知っておくべきこと
7.What You Need To Know About™ メラノーマおよびその他の皮膚がんについて知っておくべきこと

 

*************************
佐々木 真理 訳
小坂 泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)監修
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原文掲載日

翻訳佐々木 真理

監修小坂 泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

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