1日1時間の運動で最大の長寿効果が得られるとの研究報告

米国国立がん研究所(NCI)ニュースノート

原文掲載日 :2015年4月6日

余暇を利用した身体活動を推奨最小レベルの3〜5倍行うことで、行わない人と比較して最大の死亡率低減効果を引き出せることが、新たな研究により明らかになった。Department of Health and Human Services’ Physical Activity Guidelines Advisory Committee(米国保健社会福祉省、身体活動ガイドライン諮問委員会)が作成した2008 Physical Activity  Guidelines for Americans(米国人のための身体活動ガイドライン2008年版)では、中等度強度の運動を週2.5時間あるいは強度の有酸素運動を週1.25時間行うことを最小推奨レベルとし、さらなる健康利益を得るために運動量を増やすよう奨励している。今回の研究が行われる前は、最小推奨レベル以上の運動をしている人において、どの程度の付加的健康利益が生じる可能性があるのか、専門家の間でも知られていなかった。しかし、今回の研究により、最小推奨レベルの身体活動から顕著な死亡率低減効果が得られることが確認され、身体活動レベルをさらに上げることにより、この効果も高まることが示されたのである。本研究は2015年4月6日付 JAMA Internal Medicine電子版で公表された。

NCI(米国がん研究所)のがん疫学・遺伝学部門のHannah Arem医学博士らは、余暇を利用した身体活動、たとえば運動としてのウォーキング、ジョギングまたはランニング、水泳、テニスまたはラケットボール、サイクリング、エアロビクス、ダンスなどに関する、米国および欧州における50万人以上の男女から得た報告データを調べた。また、人種や民族、教育、喫煙状態、がん既往歴、心臓疾患既往歴、アルコール摂取、結婚歴、body mass index(肥満指数)などのデータも考慮した。 その結果ヘルスケア専門家の参考となるような以下のことが判明した。

1. 余暇を利用した身体活動を推奨最小レベルの同等から 2倍(たとえばウォーキングなど中等度強度の運動を週に2.5〜5時間、ランニングなど強度の有酸素運動を1.25〜2.5時間)行った場合、著しい長寿効果が認められた。具体的には、余暇を利用した身体活動を行わない人と比較して、死亡リスクが31パーセント低下した。

2. 余暇を利用した身体活動を推奨最小レベルの3倍〜5倍行った場合、余暇を利用した身体活動を行わない人と比較して、死亡リスクが39パーセント低下した。

このレベルを達成するには以下のような運動を行うとよいであろう。

・ウォーキング、週7時間
・ゆっくりとした自転車こぎ、週5時間
・10分間に約1.6キロメートルペースのランニング、週2.25時間

  3.  余暇を利用した身体活動を推奨最小レベルの10倍以上行った場合、死亡率における付加的利益は得られなかった。また死亡リスクも上昇しなかった。

原文

翻訳担当者 八木佐和子

監修 小坂泰二郎(乳腺外科/順天堂大学附属練馬病院)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

がんと生活・運動・食事に関連する記事

ストレス誘発性の免疫変化はがん転移を助長する可能性の画像

ストレス誘発性の免疫変化はがん転移を助長する可能性

過去数十年における研究から、お金の心配、仕事の問題、家族の緊張などの慢性的なストレスは、体内に化学変化を引き起こすことが証明されている。こうした変化は、血圧の上昇、炎症、特定のホルモン...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
野菜、ナッツ/豆類が小児がんサバイバーの早期老化を軽減の画像

野菜、ナッツ/豆類が小児がんサバイバーの早期老化を軽減

米国臨床腫瘍学会(ASCO)​​ASCO専門家の見解  
「本研究により、小児期にがん治療を受けた成人において、濃い緑色野菜やナッツ・種子類の豊富な食事と早期老化徴候の軽減との間に強力な...
がん治療中の心身フィットネスにより入院や受診が減少の画像

がん治療中の心身フィットネスにより入院や受診が減少

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCOの見解から引用「本試験によって、オンラインの心身フィットネスプログラムは、がん患者に支障なく提供することができ、治療に伴う合併症を軽減するこ...