個別化医療(Precision Medicine)に関して知っておくべき5つのこと/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

個別化医療(Precision Medicine)に関して知っておくべき5つのこと/ダナファーバー癌研究所

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個別化医療(Precision Medicine)に関して知っておくべき5つのこと/ダナファーバー癌研究所

2015年2月18日

バラク・オバマ大統領は『個別化医療に関する取り組み(Precision Medicine Initiative:プレシジョン・メディシン・イニシアチブ)』開始のため2016年の連邦予算を2億1500万ドル増額すると主張しています。この研究予算の増額は、がんの遺伝的要因、特にがんにおける個別化医療に米国民の注目を集めるでしょう。

以下は個別化医療に関する事実のいくつかです。

1) 個別化医療または「高精度医療(Personalized Medicine:プレシジョン・メディシン)」とは何ですか?

医師は同じ疾病が患者によって異なる経緯をたどることや、誰にでも合う治療などというものが存在しないことを昔から認識していました。患者にとって最も安全で効果的な治療を選択するため、個別化医療は患者の(またそのがんや腫瘍の)特定の遺伝子構成を利用し、がんや他の疾病の診断と治療をより正確なものにするのです。

がんの場合の個別化医療では、がんを引き起こしている遺伝子変異や他の変化を特定するため患者の腫瘍のDNA検査を行います。その後、特定の患者のがんの原因となっている腫瘍のDNA変異に最も適合する、もしくはその変異を「標的とする」治療が行われます。このような治療はまだ広くは普及していませんが、がんの専門家の多くは個別化医療が将来のがん治療の中心となると考えています。

2)すべての患者が個別化医療もしくは標的療法の対象となるのですか?

すべてのがん患者が治療の際に標的療法を必要とする訳ではありません。標的療法の対象となるのは、使用可能な薬剤によって阻止することのできる遺伝子変異を有する腫瘍を持つ患者です。ある種の遺伝子に変異のある患者、使用可能な薬剤がない遺伝子変異を持つ患者、遺伝子変異を特定できない腫瘍細胞を有する患者は、一般的に個別化医療の対象となりません。

米国国立がん研究所によれば、患者が特定の基準を満たす場合にのみ標的療法の対象となります。また、その基準は個々の疾病によって異なります。これらの基準は、米国食品医薬品局が標的療法を承認する際に設定されます。

3) ダナファーバーがん研究所での『個別化医療への取り組み(Precision Medicine Initiative)』にはどのようなものがありますか?

現行の個別化医療の例としては、2011年にダナファーバーがん研究所とブリガム・アンド・ウィメンズ病院が共同で立ち上げたプロファイル・プロジェクトがあります。

がんと診断されたすべての成人患者は同意の上で腫瘍サンプルの分析を受け、遺伝子変異や他のがんに関連するDNAの異常の有無を調べることができます。

「私たちはプロファイル・プロジェクトに本当に期待しています。なぜなら、このプロジェクトは、私たちが解剖学的基準でなく分子技術を使用してがんの理解を深める第一歩であるからです」と、ダナファーバーがん研究所の副研究主任であるWilliam Hahn医学博士は述べています。

「過去30~40年間に獲得したがんを進行の原因に関する全知識を持って、ようやくその基本的な部分を腫瘍のDNA内から探ることができます」。

プロファイル・プロジェクトが始まって以来、患者の腫瘍の遺伝子プロファイル10,000件が集められ、現在も毎月200件の遺伝子プロファイルがデータベースに追加されています。このプロファイル検査は最近、ボストン小児病院の小児患者にも拡大されました。

4) 個別化医療研究の恩恵を受けたがんにはどのようなものがありますか?

非小細胞性肺がんの患者で上皮細胞成長因子受容体(EGFR)と呼ばれるたんぱく質に異常のある腫瘍を持つ患者が、EGFRたんぱく質を標的とする薬剤に劇的に反応した、という研究をダナファーバーがん研究所と日本の研究者が10年前に発表しました。

「この研究以前、肺がん治療はほとんど進歩していませんでした」と、ダナ・ファーバーがん研究所の臨床研究主任であり、Pasi Jänne医学博士、Matthew Meyerson医学博士、 William Sellers医師(現在はノバルティス・バイオメディカル研究所在籍)らと共に2004年の研究を率いたBruce Johnson医学博士は述べています。

「現在では、分子標的薬を用いて治療したEGFR遺伝子変異を持つ患者では、1年間の腫瘍縮小と共に平均2~3年の生存期間が見られ、中には5年以上生存する方もいます」。

肺がんの他では、トリプル・ネガティブ乳がんおよびHER2陽性乳がん、大腸がん、神経芽細胞腫、小細胞性肺がんや他のがんの個別化医療に関する発見が、ダナファーバーがん研究所の研究者によってなされました。

ダナファーバーがん研究所およびブリンガム・アンド・ウイメンズがんセンターの臨床医は他にも、腎臓がん、白血病、肉腫を含むがんの遺伝子変異のいくつかをピンポイントで狙う標的治療を行っています。

5)個別化医療は将来どのようになっていくでしょうか?

個別化医療の新研究は現在、遥かに多くの遺伝子変異を幅広い種類のがんにおいて特定することに注力しており、最終的には、将来、臨床家がより多くのがんを標的療法によって治療できるよう目指しています。

ダナファーバーがん研究所およびブリンガム・アンド・ウイメンズがんセンター、ボストン小児病院、ハーバード大学・マサチューセッツ工科大学ブロード研究所は、がん個別化医療共同センターを設立しました。この共同研究は進行がん患者のための「個別化医療への道すじ」を拓くと同時に、個別化医療の発展を加速することを目的としています。

「特に臨床での意思決定に影響してくるため、このセンターは私たちががんの遺伝学における大きな問いに答えるための最適な場となります」と、ダナファーバーがん研究所医学部の准教授であるLevi Garraway医学博士は述べています。「私たちは、遺伝子や他の分子の変異のうちどれが腫瘍の分子標的薬への反応の予測を可能にするか、なぜ一部の患者は薬剤への耐性を得るのか、そして次に試みるべき治療に関してそれが何を意味するのかを理解するよう努めていきます」。

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高橋多恵 訳
下村昭彦 (腫瘍内科、乳がん、早期開発/国立がん研究センター)
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原文

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