早期ステージの結腸直腸がん治療で術前動注化学療法は術後化学療法より優れている可能性

キャンサーコンサルタンツ

肝臓微小転移につながる総肝動脈と、原発のがんに栄養を供給する動脈に、術前化学療法剤を直接注入することで、一部の早期結腸直腸がん患者の転帰が改善する可能性がある。この研究結果は、米国臨床腫瘍学会(ASCO)がサンフランシスコで開催した年次消化器がんシンポジウムにおいて、中国の医師らにより報告された。

ステージIIとステージIIIの標準化学療法では、がんを外科的に切除した後に術後化学療法を実施する。こうした術後補助化学療法の進歩により、近年、結腸直腸がん患者の生存は改善したが、いまだ多くの患者に再発がみられる。がん再発が最も多い部位は肝臓であることから、今回の研究では患者の転帰をさらに改善するために、「肝臓指向治療」に重点的に取り組んだ。すでに有望視されている方法の一つが、肝臓に血液を供給する肝動脈からの化学療法剤投与である。この治療法では、カテーテルを肝動脈内に直接挿入して、化学療法剤を注入する。

今回の臨床試験では、中国の5病院のステージII、III結腸直腸がん患者688人を、即時に初回切除を実施する群と、原発の腫瘍への主な栄養供給動脈および総肝動脈経由にて術前動注化学療法を実施し、1週間後に初回切除を実施する群とに、無作為に割り付けた。両群の全患者に対して、同一の術後補助化学療法を実施した。

術前動注化学療法実施群では5年推定での肝転移リスクは61%低下し、死亡リスクは41%低下したことが、試験結果から明らかになった。重要なこととして、術前動注化学療法、外科療法および術後化学療法を受けた群の75%でがんの再発がなかったのに対し、外科療法と術後化学療法を受けた群で再発がなかったのはわずか61%だった。こうした有益性はステージIIIの患者に限り、統計学上有意であるが、ステージIIの患者にも改善傾向がみられたことが、詳細な分析により明らかになった。

また、研究著者らの報告によれば、術前の原発および肝動注化学療法は結腸直腸がん手術や患者の術後状態に何ら影響を及ぼすことはなく、治療は安全で実行可能であり、特にステージIIIの患者では肝転移発現率が低下し、無病生存および全生存が改善する可能性があると結論づけた。

参考文献:
Xu J, Xia J, Gu Y, et al. Effect of preoperative hepatic and regional arterial chemotherapy on metachronous liver metastasis after curative colorectal cancer resection: A prospective, multicenter, randomized controlled trial. J Clin Oncol 33, 2015 (suppl 3; abstr 511).


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翻訳担当者 岐部幸子

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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