OncoLog 2015年3月号◆維持療法の改善が、骨髄腫患者の幹細胞移植後の生活の質を高める | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2015年3月号◆維持療法の改善が、骨髄腫患者の幹細胞移植後の生活の質を高める

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OncoLog 2015年3月号◆維持療法の改善が、骨髄腫患者の幹細胞移植後の生活の質を高める

MDアンダーソン OncoLog 2015年3月号(Volume 60 / Number 3)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

維持療法の改善が、骨髄腫患者の幹細胞移植後の生活の質を高める

高用量化学療法後の自家造血幹細胞移植によって多発性骨髄腫患者の生存期間を延長させることは可能である。しかしながら、移植後も依然として患者の再発リスクは高い。維持療法がこうした患者の寛解持続期間を延長することから、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターでは、臨床試験で患者の転帰をさらに改善するための新たな維持療法レジメンが探索されている。

 

骨髄腫患者とその主治医は、予測される寛解持続期間延長のベネフィットと維持療法による副作用リスクとのバランスを検討しなければならない。「課題となっているのは、寛解維持に有効であると同時に、レジメンが簡便で副作用が少なく軽度であり、患者が何年にもわたって容易に続けられる治療法を見つけ出すことです。患者が日常生活における障害を最小限に抑えながら治療を継続できるようにすることが目標です」と、リンパ腫・骨髄腫部門准教授のJatin Shah医師は言う。

 

レナリドミド維持療法

低用量レナリドミドは骨髄腫患者に最もよく用いられる維持療法レジメンである。最近実施された2件の臨床試験では、低用量(10 mg)のレナリドミドを連日経口投与することにより、幹細胞移植後の寛解持続期間が無治療経過観察と比較して18~24カ月延長することが示された。また、このうち1試験の初期データは、この治療法が生存期間を延長させることも示唆している。

 

維持療法による副作用を最小限に抑え、治療に対する忍容性を高めるため、これまでレナリドミドは単剤投与するのが一般的であった。しかしながら、下痢、発疹および疲労などの軽症の副作用は依然として発現する。最大の懸念は二次原発癌である。二次原発癌はレナリドミド維持療法を受けた骨髄腫患者の8~9%に発現するが、この治療を受けなかった患者では3~4%に発現するに過ぎない。「このようにリスクが倍増しても、二次癌がごく少数の患者に発現することに変わりはありません」とShah医師は言う。「しかし、二次癌の発現は患者が知っていなければならない重要なリスクです」。

 

ボルテゾミブとixazomib

低用量レナリドミドによる維持療法が有効かつ忍容性にすぐれることは示されたが、研究者らは、二次癌のリスクを最小限に抑えながら寛解持続期間および生存期間をさらに延長させる方法を探求している。レナリドミドとプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブの併用投与が初発および再発骨髄腫患者に有効であることが示されている。しかし、ボルテゾミブの投与方法は注射または点滴に限られるため、維持療法としてボルテゾミブ投与を受ける患者は、1、2週間に1回、無期限に通院しなければならないことになる。

 

患者の利便性と生活の質を向上させることを目的として、MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、第二世代プロテアソーム阻害薬であり経口投与薬のixazomib(別名:MLN9708)とレナリドミドの併用投与による骨髄腫の維持療法について臨床試験で検討中である。「私達はこの治療法が寛解持続期間延長の有効な戦略になると考えています」と試験責任医師であるShah医師は言う。「しかし、どれだけの改善が得られ、どのような副作用が発現するかはわかっていません。それが臨床試験を実施する理由です」。

 

試験の焦点が再発や生存期間といった長期転帰にあることから、試験担当医師らはまだその結果を待っているところである。「現時点で言えるのは、治療を開始した患者に異常な毒性や予想外の毒性が認められていないということです。私達はこの治療法がほとんどの患者で良好な忍容性を示していることに自信を得ています」とShah医師は言う。

 

Shah医師によれば、完全経口レジメンを用いることで、患者がフルタイムで働き、旅行し、楽しみとする活動に参加することが可能になるという。「患者は月1回がんセンターに来院して錠剤を受け取り、良好な生活の質を維持し続けています」とShah医師は言う。「これらの患者の大部分に限界はみられません。治療を受けているにもかかわらず、患者の皆さんが自分が望むことを何でもしているのをみると非常に励みになります。私達は、寛解持続期間を延ばすだけでなく、より質の高い時間を提供できればと願っています」。

 

継続する維持療法研究

Shah医師は、究極的には維持療法が必要な患者とそうではない患者を識別するマーカーが存在すると期待している。「維持療法はほとんどの患者で奏効するため、奏効する患者を特定する方法については問題となりません。問題となるのは、維持療法を実施しなくても経過が良好であり、起こりうる副作用を回避できる患者を特定する方法です」とShah医師は言う。「私達が注目しているものの一つに微小残存病変があります。特別な検査によって深い分子レベルで微小残存病変が存在しないこと、すなわち深い完全寛解が確認できた患者は維持療法を必要としないと思われます。このような検査を取り入れることが次の大きなステップであると私は考えています」。

 

まだ答えが得られていないもう一つの問題は、維持療法の最適期間である。一部の腫瘍専門医は維持療法の実施期間を短縮することで二次原発腫瘍の発現率が低下すると考えているが、MDアンダーソンがんセンターのShah医師らは、より多くのデータが必要と考えている。一部の医療施設で期間を限定した維持療法が用いられることにより、いずれ発現率低下のデータが得られる可能性はあるが、「現時点では、無期限治療、すなわち患者が治療によって利益を得、治療に耐えられる限り維持療法を継続するのが最善の方法であると考えています」とShah医師は言う。

 

将来に目を向けながら、MDアンダーソンがんセンターのShah医師らは骨髄腫に対する維持療法をさらに改善するための新たな試験を計画している。「現在実施中のixazomib試験で得たデータを、レナリドミド単剤投与とレナリドミドとixazomibの併用投与とを比較する第3相試験の実施を支持するデータとして用いることができると期待しています」。

 

MDアンダーソンがんセンターでは、その他の臨床試験も進行中である。年内(2015年中)に開始が予定されている1試験では、新規モノクローナル抗体elotuzumab[エロツズマブ]について検討することになっている。エロツズマブは、大部分の患者のすべての骨髄腫細胞表面に発現するSLAMファミリーメンバー7(SLAM family member 7)と呼ばれる蛋白質を標的とする。「エロツズマブは骨髄腫細胞のみを狙います」とShah医師は言う。「第2相試験では、エロツズマブとレナリドミドの併用によって再発が24~33カ月遅延しました。これは、過去の試験でレナリドミド投与を受けた既存対照患者での11カ月をはるかに上回るものでした。第2相試験で寛解持続期間が2~3倍になる可能性が示されたことは重要です」。

 

エロツズマブは現在のところ静脈内投与製剤であり、患者は治療のために最初は週1回、その後は徐々に月1回のペースに移行しながら来院する必要がある。しかし、「この治療の良い面は、エロツズマブが標準的化学療法とは異なることです。レナリドミドによる副作用以外のさらなる副作用の発現はわずかであると予測されます。これはすぐれたベネフィットです。また、初期試験で生存期間の2~3倍の延長がみられたことから、維持療法にこの併用投与を用いることによる寛解持続期間延長の可能性について私達は楽観的な見方をしています」とShah医師は言う。

 

Shah医師の知る限り、現時点では米国内で他にixazomibまたはエロツズマブによる維持療法レジメンを提供している医療施設はない。Shah医師は言う。「当センターの骨髄腫患者の皆さんに、より長く健康的な人生をもたらす可能性を持った治療法のユニークで画期的な臨床試験を提供できることに私達は大きな喜びを感じています」。

— Kathryn L. Hale

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
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原文掲載日

翻訳原 恵美子

監修吉原 哲(血液内科/兵庫医科大学 輸血・細胞治療学講座 講師)

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