高い血中ビタミンD濃度が、進行性大腸癌患者における生存の著しい改善に関連

米国臨床腫瘍学会(ASCO)の見解:
「生存改善に加えて、ビタミンDは癌の成長速度を遅くする、あるいは治療の効果を高めるなどの可能性が示唆されるなど、高い血中ビタミンD濃度は化学療法に耐性を示す癌に対して長期にわたり関連した」と本日の報道会見司会者であり、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の専門医でもあるSmitha S. Krishnamurthi医師は述べ、「生存改善がビタミンD自体によるのか、あるいは高い血中ビタミンD濃度に関連する他の因子によるものなのか、決定づけるためにはさらなる研究が必要である」と指摘した。

新たに転移性大腸癌と診断された患者の第3相試験データによる前向き分析は、血中ビタミンD濃度の高い患者は化学療法および分子標的療法による治療後、転帰が良好であることが明らかとなった。血中ビタミンD濃度が最も低い患者の全生存期間中央値24.5カ月と比較し、最も高い患者は32.6カ月であった。本研究は次回サンフランシスコで開催される2015 Gastrointestinal Cancers Symposiumで発表される。

本研究は、前臨床研究と疫学研究において観察されているビタミンDの抗癌作用に関する、増えつつある証拠に付け加わる。現在、癌診断の前後におけるビタミンDサプリメント摂取の有用性を確認するためランダム化試験が行われている。

「われわれの研究では、血中ビタミンD濃度が高いほど有意な生存改善と関連していると示されている。最終目標は、本研究を大腸癌治療に対するビタミンDサプリメントのランダム化試験を行い、患者への有効な介入に転換することである」と述べたのは、主著者であり、マサチューセッツ州ボストンにあるバードメディカルスクールのダナファーバー癌研究所助教Kimmie Ng医師である。「大腸癌の治療としてビタミンDを推奨するには時期尚早だが、適切な血中ビタミンD濃度を維持することが、骨の健康のためなど、その他の健康に良いことであることは認識している」とも述べた。

研究者らは、新たに診断された進行性大腸癌に対し3つの異なる一次治療(化学療法+ベバシズマブとセツキシマブ、化学療法+ベバシズマブ、化学療法+セツキシマブ)を比較する第3相試験のCALGB80405に登録された患者1,043において、試験に参加した時点の血中ビタミンD濃度(25-ヒドロキシビタミンD)を測定した。患者の血中ビタミンD濃度は、最小値群の平均8ng/mLから、最大値群の平均27.5ng/mLに及んだ。全患者の平均値は17.2 ng/mLであった(推奨される健康的な範囲は20~30ng/mL)。高齢者、黒色人種、食事とサプリメントからのビタミンDの摂取量が少ない、体格指数(BMI)高値、全身的な身体状態の悪化、低い身体活動、これらすべてが低い血中ビタミンD濃度との関連があった。血液標本が冬と春に採取された患者は有意にビタミンD濃度が低下しており、米国の北部と北東部に居住する患者も同様であった。これらすべての因子は、低ビタミンD濃度と関連していることがすでに過去の報告で明らかとなっている。全体的に、ビタミンDサプリメント摂取を申告した患者は、ごくわずかであった。

この分析の(目的の)ために、患者は、まずビタミンD濃度を基準に患者を5群に分けられた。そして、予後因子と健康的な行動を補正した結果、研究者らはビタミンD濃度最小値群(平均24.5カ月)の患者と比較し、ビタミンD濃度最大値群(平均32.6カ月)の患者の方が有意に生存期間が延長していることを明らかにした。また、高い血中ビタミンD濃度は病勢進行まで期間延長と関連していた(最大値群12.2カ月に対し最小値群10.1カ月)。患者が受けた治療の種類による有意差は認められなかった。

Ng医師は、現在進行中の臨床試験では、癌予防と癌治療におけるビタミンD補充の潜在的効果を研究していると述べた。

本研究は、米国国立衛生研究所(NIH)内の米国国立癌研究所(NCI)より資金提供を受けている(K07 CA148894, R01 CA149222, CA31946, CA33601)

翻訳担当者 米川恵理子

監修 大野 智(腫瘍免疫/早稲田大学・東京女子医科大学)

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