エベロリムス+トラスツズマブ+パクリタキセル併用はホルモン受容体陰性/HER2陽性進行乳癌に有効

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エベロリムス(アフィニトール)+トラスツズマブ(ハーセプチン)+パクリタキセル併用療法は、ホルモン受容体(HR)陰性であるHER2陽性進行乳癌患者に有効と思われる。これらの試験結果は、テキサス州サンアントニオで2014年12月9日~13日に開催された2014サンアントニオ乳癌シンポジウムで発表された。

エベロリムスは、mTORとして知られるタンパク質を阻害することにより効果を発揮する経口薬である。mTORタンパク質には癌細胞分裂および血管増殖を制御する重要な働きがある。エベロリムスは現在、腎臓癌、膵神経内分泌腫瘍、上衣下巨細胞性星状細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫、HR陽性/HER2陰性乳癌の患者の治療に用いられている。以前の試験で、エベロリムスはトラスツズマブおよびパクリタキセルと併用すれば、乳癌に有効であるとされてきた。

HER2陽性進行乳癌の女性に対する一次治療としてのエベロリムス+トラスツズマブ+パクリタキセル併用療法を評価するために、研究者は第3相試験を実施した。試験は、HER2陽性進行乳癌患者(HR陰性、HR陽性いずれも含む)、で、トラスツズマブによる前治療歴がない患者719人を対象とした。患者は、無作為に以下のいずれかの治療群に割り付けられた。(1)1日10mgのエベロリムスならびに週1回のパクリタキセルとトラスツズマブ、(2)プラセボ(不活性代用剤)ならびに週1回のパクリタキセルとトラスツズマブ。試験の主要評価項目は無増悪生存期間とした。

今回の試験で対象とした患者は年齢の中央値(中間点)が53歳で、70.5%が転移しており、約43%がHR陰性であった。中央値3年余りの追跡調査で、研究者は以下の結果を得た。

・全体として(HR陰性およびHR陽性)、エベロリムス投与群の無増悪生存期間は、わずか半月延びただけであった。無増悪生存期間の中央値は、エベロリムス投与群では15カ月で、プラセボ投与群では14.5カ月であった。つまり無増悪生存期間は両群で基本的に相違はない。
・HR陰性患者では、エベロリムスがより効果的であると考えられる。これに該当する女性患者は、HR陰性プラセボ投与群の患者に比べて、無増悪生存期間中央値が7カ月長かった(エベロリムス投与群20カ月、プラセボ投与群13カ月)。これは病状進行のリスクが34%減少したことになる。
・今回の試験ではエベロリムスの安全性は他の試験結果と同様であった。エベロリムス投与群において、プラセボ投与群より多くみられた共通の副作用には、口内炎(口と唇の炎症)、下痢、および脱毛があった。

研究者は、一次治療としてのエベロリムス+トラスツズマブ+パクリタキセル併用療法は、すべてのHER2陽性進行乳癌患者の無増悪生存期間を改善するわけではないが、HR陰性患者には有益であると結論づけた。これらの試験結果は、エベロリムス+トラスツズマブ+パクリタキセル併用療法がHR陰性/HER2陽性進行乳癌患者の一次治療として有効である可能性を示唆している。

参考文献:

Hurvitz SA, Andre F, Jiang Z, et al. Phase 3, Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Multicenter Trial of Daily Everolimus plus Weekly Trastuzumab and Paclitaxel as First-Line Therapy in Women with HER2+ Advanced Breast Cancer: BOLERO-1. Program and Abstracts of the 2014 San Antonio Breast Cancer Symposium; December 9–13, 2014; San Antonio, Texas. Abstract S6-01.


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翻訳担当者 大木勝弥

監修 原 文堅(乳腺科/四国がんセンター)

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