OncoLog 2015年1月号◆大腸癌の肝転移・肺転移の同時切除により2回目の手術は不要に | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2015年1月号◆大腸癌の肝転移・肺転移の同時切除により2回目の手術は不要に

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

OncoLog 2015年1月号◆大腸癌の肝転移・肺転移の同時切除により2回目の手術は不要に

MDアンダーソン OncoLog 2015年1月号(Volume 60 / Number 1)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

大腸癌の肝転移・肺転移の同時切除により2回目の手術は不要に

大腸癌が肝臓と肺の一方または両方に転移した患者は、2回の手術と2回の回復期を耐えねばならないという喜ばしくない問題に直面することも多い。しかし、新しい外科的アプローチでは、肝臓と肺の病変部を同じ1回の手術で切除することができる。

 

大腸癌では肝臓と肺への転移がもっともよく見られるが、その両方に癌が転移した患者が別々に手術を受けた結果生じる合併症を減らすため、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの外科医らが、肝転移病変の切除後に続けて経横隔膜的に肺転移病変を切除する手技を開発した。

 

「われわれは、患者の利益となるよう、1回の麻酔導入下で肺と肝臓の手術を実施することができます」。胸部・心臓外科教授のReza Mehran 医師はこのように話す。

 

転移の全切除の利点

「肝臓および肺に大腸癌の転移がある患者の場合、両方の転移を全切除することで生存に関して最良の転帰を得ることができます」。腫瘍外科学教授で肝臓および膵臓部門のチーフのJean-Nicolas Vauthey医師はこう述べている。この手術が生存に関して有利であることは、Mehran医師、Vauthey医師ならびにYoshihiro Mise医学博士およびその他のMDアンダーソンの研究者らによる共同研究により示されている。この研究は、大腸癌で肝臓と肺に転移した患者における3年および5年の全生存率を比較した後ろ向き研究である。化学療法と肝転移切除のみ受けた患者は、化学療法のみを受けた患者よりも生存率が高かったが、化学療法と肺転移・肝転移両方の切除を受けた患者と比べると生存率は低かった。

 

この研究では肝臓と肺の病変部の切除を別個の手術で実施した患者も含まれているが、MDアンダーソンの別の研究において、肝切除および経横隔膜的な肺切除を同時に行った患者でも、別個に切除を行った患者と同様の転帰が得られ、なおかつ出血が少なくて済むことが示されている。

 

「この新しいアプローチの何が新しいかと言えば、胸部切開なしに、ひとつの切開で同時に両方の切除を行うことができることです」とVauthey氏は述べた。

 

適応患者の選択

大腸癌が肝臓および一方または両方の肺に転移し、肝転移を完全に切除可能である患者は、全員が肝転移と肺転移の同時切除を考慮する対象である。これは肝臓病変が2段階の切除を要する場合も含まれ、肺病変の切除はいずれかの段階で併せて行われる。

 

肝切除は肺転移の切除の対象とならない患者に対しても行われることがあるが、肺転移の切除については、肝転移の切除が不可能な患者の場合、予後が不良であるため実施されないのが普通だ。

 

MDアンダーソンでは、大腸癌が肝臓と肺に転移している患者は手術前の2~3カ月間化学療法を受けることが多い。化学療法前後にはCTスキャンを実施すれば、肝転移および肺転移の一方または両方を切除すべきかどうかの判断材料になる。

 

「われわれは、化学療法後のCTで観察された大きさの変化に基づいて肺転移の診断をしています」とVauthey医師は話す。

 

化学療法実施中に肝転移または肺転移が増大した場合は予後が思わしくないため通常切除の対象とはならない。とはいえ、70~80%の患者では肺病変に化学療法が奏効するか病勢安定を得られる。化学療法が奏効する患者は外科手術の対象となる。

 

化学療法後、肺病変が病勢安定となった患者の場合、病変が腫瘍である場合と単なる瘢痕組織である場合があるので悩ましい。このような症例は、さまざまな領域の医師チームで検討し、肺病変を切除するかどうかはケースバイケースで判断する。Vauthey医師は「腫瘍が大きく石灰化していなければだいたい手術しようということになります」と述べている。「経横隔膜的手術による合併症の確率は低いので、100%癌だと確信できなくても疑わしき肺病変は切除すると決めてしまってもよいでしょう」。

 

肺の腫瘍が小さい場合は切除しないことが多い。「触診できないほど小さな腫瘍の場合は様子を見ることが多いです」とMehran氏は言う。「患者には1年以内に再度CTを受けに来ていただいて、腫瘍が大きくなっているようなら取りましょうと話しています」。

 

肺病変の位置も手術するかどうかに関わる。「楔状切除ができないほど深いところに腫瘍がある場合は、放射線治療をする方が多いです」、とMehran医師は話している。

 

同時切除

肝転移と肺転移の同時切除の実施中は、片肺換気を行うためダブルルーメン(二重構造の)気管支チューブを用いる。肝臓外科医が腹部切開を行い、開放で肝切除を実施する。肺の手術を予定していない場合とまったく同様に手術を行っている、とVauthey医師は話す。

 

肝切除が終わると、胸部外科医に交代する。転移のある肺を収縮させ、肺にアプローチできるのに十分な大きさだけ横隔膜を切開する。その後、下肺間膜を切開し、肺を移動できるようにする。

 

次いで、CTスキャンにより腫瘍の位置がわかっている胸部外科医が、横隔膜の切開部から肺の腫瘍をひとつひとつ触知する。手で確認しながら、外科的ステープラーにより楔状切除を行う。「指で腫瘍をつまみ、周辺の組織から切り離されるようにステープラーで留めていきます」とMehran医師は話す。

 

Vauthey医師はさらに、この経横隔膜的アプローチは肺の両側に転移した患者にも実施されていると述べた。「まず右側の横隔膜を切開して右肺の病変を切除し、その後横隔膜を閉じて右肺を再膨張させ、左肺を収縮させて左側の横隔膜を切開します」。

切除が完了すれば胸腔チューブを挿入し、横隔膜を閉じ、腹部切開を閉じる。

 

胸腔チューブは通常手術の翌日に抜く。入院期間は肝切除のみの場合と同じで6日間であることが多い。

 

「今のところ、肝転移と肺転移を同時切除した患者に合併症は発生していません。忍容性の高い手技と言えます」とMehran医師は言う。「同時切除は非常に患者に優しい手術です。癌治療のために患者は手術を二度も受けなくていい、麻酔を二度もかけられなくていい、それに同じ目的のために二度も痛みを味わわなくてもいい、これが同時切除の利点なのです」。

 

【上段写真キャプション】
大腸癌患者に肝転移と肺転移の同時切除を実施する外科医チーム。この手術では先に肝臓病変を切除し、その後横隔膜を切開して肺病変を切除する。画像はYoshihiro Mise医師の厚意による。

【中段写真キャプション】
経横隔膜的肺切除においては外科医が肺を触診して肺病変の位置を確認し(左)、外科的ステープラーで切除する(右)。画像はYoshihiro Mise医師の厚意による。

【下段図キャプション】
肝臓および肺に大腸癌が転移した患者の分析において、化学療法と肝転移および肺転移の切除を実施した患者は、化学療法と肝切除のみ実施した患者、ならびに化学療法のみ実施した患者と比較して、全生存期間中央値が長いことが示された(P < 0.01)。

出典:Mise Y, et al., Ann Surg Oncol. 2014

— Bryan Tutt

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳橋本 仁

監修畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  2. 2がんに対する標的光免疫療法の進展
  3. 3個別化医療(Precision Medicine)に...
  4. 4アルコールとがんについて知ってほしい10のこと
  5. 5非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  6. 6リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  9. 9ルミナールAタイプの乳がんでは術後化学療法の効果は認...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 五十音 アルファベット 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他