ダコミチニブは特定の進行非小細胞肺癌患者に有効

キャンサーコンサルタンツ

EGFR変異陽性またはEGFR阻害剤に奏効しやすい臨床的特徴を有する進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の治療に対して、汎HER選択的阻害剤であるダコミチニブ[dacomitinib]が有望であるという第2相試験の結果が、ボストン、ダナファーバー癌研究所の医師らによってLancet Oncology誌に発表された。

分子標的療法は癌細胞のみを治療し、正常、つまり健康な細胞への損傷を最小限に抑えるように設計された治療法である。癌細胞を“標的”とする癌治療は、治療に伴う副作用を抑え、予後を改善するという利点をもたらす可能性がある。分子標的療法は、NSCLC治療においてますます大きな役割を果たしている。

上皮成長因子受容体(EGFR)の遺伝子変異は、NSCLCのある種の薬剤への奏効に影響を及ぼす可能性がある。EGFRは、数種類の癌の増殖の一因となるため、EGFRの活性を阻害するエルロチニブ(タルセバ)やダコミチニブなどの薬剤は癌の増殖を遅らせることができる。ダコミチニブは経口投与で活性を示す、高い選択性および潜在的抗腫瘍活性を有する第2世代の小分子阻害剤であり、チロシンキナーゼ(ErbBファミリー)の汎上皮成長因子受容体(EGFR)ファミリーに対する阻害剤である。

ダコミチニブはヒトEGFRのサブタイプに特異的かつ不可逆的に結合し、それらを阻害することによって、EGFRを発現する腫瘍細胞の増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する。

エルロチニブと化学療法で治療されたEGFR陽性NSCLC患者においては、化学療法単独で治療された患者と比較すると、癌進行までの期間および生存期間が延長した。

ダコミチニブはまた、エルロチニブによる前治療のある患者においても効果を示した。

非喫煙者、軽い喫煙経験者、あるいは喫煙状況にかかわらずEGFR変異のある者89人を対象にした今回の試験では、癌の進行、受け入れがたい副作用の出現まで、あるいは試験からの離脱まで、28日のサイクルでダコミチニブが投与された。

全体では患者の54%が治療に奏効し、奏効期間の平均値は12.9カ月であった。ダコミチニブは多くの場合、最小限の副作用で忍容性は良好であった。研究者らは、ダコミチニブはEGFR変異を有する可能性が高い進行NSCLC患者の治療において臨床効果が期待できると結論づけた。

参考文献:
Janne P, Ou S-H, Kim D-W, et al. Dacomitinib as first-line treatment in patients with clinically or molecularly selected advanced non-small-cell lung cancer: a multicentre, open-label, phase 2 trial. The Lancet Oncology. Volume 15, Issue 13, Pages 1433 – 1441, December 2014.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 橋本奈美

監修 高濱隆幸(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

欧州肺がん会議2024の画像

欧州肺がん会議2024

ESMO肺がん会議2024は、呼吸器外科医、胸部外科医、呼吸器内科医、呼吸器専門医、腫瘍内科医および放射線腫瘍医、画像下治療を行う放射線科医、病理医など、胸部腫瘍学分野の様々な専門家が...
免疫療法抵抗性肺がんにデュルバルマブ+セララセルチブ療法が有望の画像

免疫療法抵抗性肺がんにデュルバルマブ+セララセルチブ療法が有望

MDアンダーソンがんセンターデュルバルマブ+セララセルチブが肺がん患者の免疫反応を高め、予後を改善することが第2相試験で明らかにテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者...
ROS1陽性肺がんでレポトレクチニブが新たな治療選択肢にの画像

ROS1陽性肺がんでレポトレクチニブが新たな治療選択肢に

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ2023年11月、食品医薬品局(FDA)は、ROS1遺伝子融合と呼ばれる遺伝子変化を有する一部の進行肺がんの治療薬としてrepotrecti...
非小細胞肺がん、アロステリックEGFR阻害による薬剤耐性克服の可能性の画像

非小細胞肺がん、アロステリックEGFR阻害による薬剤耐性克服の可能性

ダナファーバーがん研究所アロステリック阻害薬EAI-432は、EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対する新たな治療法を提供するEAI-432は、ATPポケット以外の部位に結...