癌患者の3人に1人は不安障害などの精神的な健康問題を抱えている/米国臨床腫瘍学会(ASCO) | 海外がん医療情報リファレンス

癌患者の3人に1人は不安障害などの精神的な健康問題を抱えている/米国臨床腫瘍学会(ASCO)

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癌患者の3人に1人は不安障害などの精神的な健康問題を抱えている/米国臨床腫瘍学会(ASCO)

米国臨床腫瘍学会(ASCO) プレスリリース

 

概要
•ドイツ全土のがんセンターで実施された大規模研究の結果が2014年10月6日にJournal of Clinical Oncology誌電子版で発表され、癌患者の32%は、不安障害、うつ病性障害、適応障害など臨床的に重要な精神保健上の問題を抱えていたことが明らかになった。これらの疾患の有病率は一般集団を上回るものであり、主に不安障害および適応障害の有病率が高かったことに起因していた。
•米国臨床腫瘍学会(ASCO)の専門医Don Dizon医師による説明の引用。
•ASCOの癌情報ウェブサイトCancer. Netの追加情報リンク。

 

ドイツの研究者らの報告によると、医療センターの入院および外来の癌患者2100人超を対象に面接を実施したところ、その3分の1近くがそれまでの4週間以内に、不安障害、うつ病性障害、適応障害といった精神障害の厳密な診断基準を満たし臨床的に問題となるレベルの精神的または情緒的な苦痛を経験していた。このような障害の有病率は、癌の種類によってさまざまであり、最も高かったのは乳癌(42%)および頭頚部癌(41%)、次いで悪性黒色腫(39%)の患者であった。有病率が最も低かったのは前立腺癌(22%)、胃癌(21%)、膵癌(20%)の患者群であった。十分に標準化された診断面接によって、癌患者の精神的および情緒的な健康状態を評価したものとしては最大規模となった今回の研究結果はJournal of Clinical Oncology誌10月6日号で発表される。

 

「今回の知見は、われわれ医師が、精神的および情緒的苦痛の徴候や症状には充分な注意を払う必要があることを裏づけるものです。長期的にみてより重度で未治療の精神的健康障害にしばしば結びつく恐れがある場合、必要に応じて診察、サポート、治療を求めるよう患者さんに指導しなければなりません。本研究では、より綿密な経過観察を要する患者についても解明を進めました」と本研究の筆頭著者でLeipzig大学(ドイツ)の精神腫瘍学教授Anja Mehnert博士は述べ、「精神的苦痛は決して1人のものでも特殊なことでもないこと、このような精神的および情緒的な問題は、特に心理的なサポートや精神医学による最新の治療によって一時的なものにすることができることを、悩みを抱える患者さんに伝え安心させたいとも考えています」と結んだ。

 

著者らによると、心理学的サポートの選択肢には、個人やカップル、家族またはグループを対象とした心理療法、リラクゼーション療法、イメージ療法などがある。

 

これまでの研究で癌患者に苦痛の増大がみられることが報告されているが、著者らは、患者数が少ない、診断や評価の基準が異なる、乳癌患者に過大評価がみられるために評価にばらつきがあることを指摘している。

 

この多施設共同試験はGerman Cancer Aidから資金提供を受け、Hamburg大学のEppendorfメディカルセンターによって調整が行われた。参加施設はFreiburg、Heidelberg、Leipzig、Wurzburg大学のメディカルセンターなどであった。研究者らは、ドイツの病院や外来がん医療センターもしくはリハビリテーションセンターで癌患者2141人(18~75歳)と面接し標準化された質問を行った。質問に対する回答は速やかにコンピューターの診断プログラムへと入力された。この検査では過去4週間以内に起こったさまざまな心理学的症状が評価された。患者の診断は、「精神障害の診断と統計マニュアル」(精神保健の専門医が使用する標準的な分類判定基準)に準拠して分類された。対象となった患者の癌の種類で特に多かったのは順に乳癌(44%)、前立腺癌(15%)、大腸癌(14%)で、癌と診断されてからの平均経過期間は13.5カ月だった。試験参加者の51%は女性であった。

 

試験の結果から、32%の患者が1つ以上の臨床的に重要な精神的健康問題(本研究では精神的健康障害と定義)を抱え、一般人を上回る有病率であること、そのうち18~20%は臨床的に重要な精神障害を有していると推定されることが判明した。

 

面接前の4週間以内に、患者の11.5%が不安障害を経験し、11%で適応障害の基準に適合した(主に混合性不安抑うつ症候群、癌などによる著しい生活の変化が原因となり4週間以上持続したもの)。さらに6.5%で気分障害(大うつ病など)の徴候があった。

 

恐怖症、パニック障害または全般性不安障害といった不安障害の率11.5%は一般集団の率9%をわずかに上回るものであったが、他の精神面の健康診断における有病率は一般集団と同等であった。一般集団の調査で評価されることが稀な適応障害において、今回の有病率の結果(11%)は、この癌患者集団における精神障害の有病率を全体的に上昇させる有意な要因となった可能性がある。

 

Mehnert博士は、乳癌のような比較的治療しやすい癌の患者が、胃癌や膵癌のように比較的治療の難しい癌の患者以上に精神的苦痛を受けていたことに驚き、これらの所見を解釈するにはさらに研究が必要であることを指摘した。そしてドイツと米国の精神面の健康診断における有病率は類似しているため、今回の所見を米国の患者にも一般化できる可能性があると述べた。

 

同博士らは今後、4週間より長い期間で患者の精神面の健康状態を評価する別の研究結果を発表することにしている。今回の研究の所見は癌患者の将来の支援プログラムを計画する上で有益なものとなり、特定の癌の患者に対するプログラムの指針となるような追加情報をもたらすと考えられる。

 

専門医の見解
ASCO専門医Don S. Dizon医師
「癌と診断されることは患者さんにとってつらいことだと常に考えてきましたが、このような感覚がいかに日常的に起こり得るのかが今回の所見から示唆されています。また今回の知見では、癌の種類が何であれ、精神面の健康問題は共通して存在すると医師がいつも認識しておくことの重要性も強調されています。患者さんは状況に応じてサポートを受ける必要があります。さらに、精神的苦痛はいかに多く生じ得るものであるのかを患者さんがきちんと自覚しておくこと、困難な状況を管理する上でのサポートが患者さんやその家族に利用可能であることも重要です」。

 

原文掲載日

翻訳緒方登志文

監修太田真弓(精神科、児童精神科/さいとうクリニック院長)

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