OncoLog 2014年8月号◆乳癌骨転移に対する根治的局所療法の臨床試験 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog 2014年8月号◆乳癌骨転移に対する根治的局所療法の臨床試験

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

OncoLog 2014年8月号◆乳癌骨転移に対する根治的局所療法の臨床試験

MDアンダーソン OncoLog 2014年8月号(Volume 59 / Number 8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

乳癌骨転移に対する根治的局所療法の臨床試験

転移性乳癌は予後不良であり、転移病変に対する全身治療は、根治というよりも進行を遅らせる目的で行われることが多い。しかし一部の患者群においては、転移性病変に対する根治的(definitive)局所療法と全身治療の併用により、長期無増悪生存、場合によっては根治も期待できる可能性がある。

 

「この数年間、私どもは一部の患者(1~3個の骨転移がみられる乳癌)に対して積極的な治療を行ってきました」と、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター放射線腫瘍学部教授であるEric A. Strom医師は述べた。

 

自分が診た患者の中に、この治療を受けた後15年以上も疾患の所見がない例があると、Strom医師は語った。Strom医師とMDアンダーソンの同僚らの多くは、骨転移への積極的治療の有効性を確信したが、この確信を裏づける前向き試験はなかった。

 

臨床試験

6年前MDアンダーソンの医師たちは、乳癌で1~3カ所の骨転移を有する女性に対し、標準的全身療法+手術あるいは放射線療法を併用した根治療法を行う第1相臨床試験を開始した。4カ所以上の転移あるいは遠隔臓器への転移がある患者は本試験から除外した。

 

研究責任者であるStrom医師によると、本試験に登録した患者は、初期治療として化学療法や標的療法、あるいはホルモン療法を含む全身療法を、腫瘍の特性に従って受けた。3~9カ月の全身治療後に患者の再評価を行った。病勢進行がみられた患者は本試験から除外し、担当医が治療計画を再評価した。増悪がみられない患者はそれぞれの転移巣に対する根治的局所療法を受けた。

 

転移巣は、部位によって放射線療法または外科的切除術で治療される。Strom医師によると、例えば脊椎の病変は外科的切除が困難であるが、放射線で効果的に治療することができる、肋骨や頭蓋骨などのほかの部位は、外科的切除できる可能性が非常に高い。また、ある転移巣を外科的に切除し、別の転移巣は放射線で治療することは患者にとって珍しいことではないという。

 

本試験で最も多く行われた放射線療法は強度変調放射線治療である。それは、高線量の放射線を腫瘍に照射し、周囲の組織に対してはかなり低線量の放射線を照射する方法である。「転移性腫瘍に対する放射線量は66~72グレイ(Gy)であり、これは腫瘍を破壊するのに十分な線量です」とStrom医師は述べた。

 

本試験の主要評価項目は3年無増悪生存である。患者は治療終了後1年目は3カ月ごとに追跡調査のため受診し、続く2年間は6カ月ごとに受診する。

 

中間結果

Strom医師らは、2013年8月に中間解析を行った。追跡期間中央値2.25年時点で、24人中13人の患者で疾患の所見がなく、10人の患者で本試験において治療した以外の部位に転移病変がみつかり、また1人の患者は癌とは関係のない理由で亡くなった。外科的に切除した、あるいは放射線により治療した転移部位で再発した患者はいなかった。

 

「転移性乳癌は通常、根治は望めません。多数の患者に疾患の所見がみられないという事実は、非常に説得力があります」とStrom医師は述べた。「少なくとも、転移に対する局所療法は、症状の緩和をもたらします。たとえ後になって、これらの患者でほかの部位に転移がみられたとしても、患者は症状がなく、検出可能な癌のない時期を過ごせるのです。ですから生活の質(QOL)は非常に高いのです」。

 

Strom医師は、本試験で行ったいずれの治療においてもグレード3以上の有害事象はみられなかった、と付け加えた。「放射線療法は信じられないほど忍容性に優れていました」と同師は述べた。

 

患者ごとの個別治療

本試験に登録された患者の多くが、乳癌の初期治療から1年以上経過したのちに、転移を経験していた。しかし、一部の患者では原発腫瘍の治療中に本試験に登録していることから、本試験では、そうした患者の治療には必要に応じて調整を加えている。

 

「原発巣と同時に、転移病変が診断された患者の場合、私どもは最初の化学療法に対して転移巣がいかに反応するかを観察し、次に、転移部位だけでなく乳房の腫瘍や局所リンパ節をも含めた包括的治療計画を作成します」とStrom医師は述べた。ある患者に対しては、Strom医師は胸壁と局所リンパ節および転移部位に対し同時に行う術後放射線療法を行った。

 

医師は、本試験のプロトコールで求める疾患特性を正確に有する患者を見つけることは稀であると認め、本試験は、それに適合する疾患特性を持つ患者を対象としたこの種の試験の中で唯一の研究である、と付け加えた。

 

「転移性乳癌を有する患者のうち、一部の患者は実際、根治可能であるかもしれません」とStrom医師は語った。「1~3の骨転移を有する患者を治療する非盲検試験であり、このような患者を切に求めています」。

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳大倉綾子

監修上野直人(乳癌、幹細胞移植・細胞療法/MDアンダーソンがんセンター)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1がんに対する標的光免疫療法の進展
  2. 2アルコールとがんについて知ってほしい10のこと
  3. 3BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  4. 4個別化医療(Precision Medicine)に...
  5. 5専門医に聞こう:乳癌に対する食事と運動の効果
  6. 6ルミナールAタイプの乳がんでは術後化学療法の効果は認...
  7. 7アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  8. 8リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  9. 9非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  10. 10治療が終了した後に-認知機能の変化

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 五十音 アルファベット 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他