女性の癌に関する研究発表の概要—米国臨床腫瘍学会(ASCO2014)/NCIパースペクティブ

米国国立がん研究所(NCI)パースペクティブ

原文掲載日 :2014年6月2日

6月にシカゴで行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)の2014年度年次総会で米国国立癌研究所(NCI)が協力し支援した女性癌について数々の臨床試験結果が発表された。これらの結果により、女性癌の治療法および癌と生きる女性のQOL向上の理解に関して重要な進展が示された。以下は概要である。

・ 閉経前乳癌の若齢女性に関する2つの試験で肯定的な結果が出た。そのうちの一つ、SOFT/TEXTと呼ばれる試験は、ホルモン受容体陽性乳癌(ホルモン療法に反応する腫瘍)の女性に対し2種類の抗エストロゲン療法を比較した。エキセメスタンはタモキシフェンよりも無病生存率(再発がなく生存できる率)が良好という結果であった。もう一方のPOEMSと呼ばれる試験は、ホルモン受容体陰性乳癌(ホルモン療法に反応しない腫瘍)の若齢女性が化学療法を受けても妊よう性を失わないことを示した。この2つの試験により、若齢女性における癌研究の重要性が明らかになった。若年層の癌は研究や取り組みがあまりなされていないため、今回の調査は研究の空白を埋める重要なものである。

・ NCIと国際乳癌研究グループ(BIG)が協賛したALTTO試験は、化学療法+ラパチニブおよびトラスツズマブ併用療法が、化学療法+どちらかの単独療法よりも優れているか否かを決定するためにデザインされたものである。この試験は二剤併用療法に対し否定的な結果をもたらしたが、このALTTO試験は、 米国単独ではなく国際的な協力がなされたため、全体的により少ない患者数で、より早期に結果を出すことができた。女性の4年以上の全生存率が90%以上という結果が認められた。これにより乳癌が、高悪性度の疾患から治療可能な疾患という認識に変わり、ラパチニブおよびトラスツズマブの開発に寄与するNCI支援の研究の重要性が強調された。さらに、ALTTO試験で計画された分子研究では、再発した患者8000人中550人の腫瘍特性を、研究者がより良く理解できる可能性を秘めている。科学者にとって将来の薬剤開発の一助となるだろう。

・  ALTTO試験で得られた教訓は、NCIおよびBIGが大規模国際第3相試験であるOlympiA試験(BRCA遺伝子変異キャリアの早期乳癌の補助療法におけるオラパリブの効果を調べる試験 )の早期開始に活かされた。OlympiA試験はNCIが協力する臨床試験グループNRGにより調整中である。OlympiA試験は2014年6月にNCIの国内臨床試験ネットワークにおいて開始する。

・  ALTTO試験の他にも、ASCOの年次総会で取り上げられたPOEMSやSOFT/TEXTなど、いくつかの試験は国際共同試験であった。NCIが支援する臨床試験グループは国際的協力を受けたことで、少ない資源ながらも早期に重要な結論を得ることができた。POEMSおよびSOFT/TEXT試験の結果を早期に発表できたことは、国際的なネットワークと米国内のグループとの協力の賜物であった。

・  生存期間の中央値が2倍に延長したセディラニブとオラパリブを用いた卵巣癌の新しい併用療法に関する臨床試験は、NCI支援による癌ゲノムアトラス(TGCA)研究ネットワークの結果に一部基づくものである。卵巣癌の大規模第3相試験において、この結果を確証づける計画がいくつか存在する。さらに、TCGAの結果により、高悪性度漿液性卵巣癌とBRCA関連乳癌の遺伝子に類似点があることが判明し、この併用療法は一部の乳癌研究においても一助となる。

・米国国立衛生研究所(NIH)の臨床センターで行われたNCI研究では、子宮頸癌における新たな免疫療法が他のHPV関連の癌にも有望であることが認められた。この免疫療法を用いた他の癌治療に関する詳細はこちら。この研究では、患者自身のリンパ球を採取し、研究室にて抗腫瘍作用が最も活性化したリンパ球を培養し、増殖させた細胞集団を患者に注入する。この研究の以前は、ヒトの免疫システムが、子宮頸癌細胞により産生されたHPVタンパク質に対し、効果的な反応を促進しうるかどうかは明らかではなかった。
 

原文 

翻訳担当者 林さやか 

監修 野長瀬祥兼(腫瘍内科/近畿大学医学部附属病院)

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