ラムシルマブと標準治療薬ドセタキセルを併用した二次治療で進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存期間が延長

ラムシルマブと標準治療薬ドセタキセルを併用した二次治療で進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存期間が延長

 <治療が困難な一般的な4癌種に対する有望な分子標的薬(ASCO2014)> 折畳記事

ステージ4の非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象とした第3相試験であるREVEL試験の結果、新たな血管新生阻害薬であるラムシルマブ[ramucirumab]と標準治療薬ドセタキセルを併用した化学療法は、ドセタキセルとプラセボによる化学療法と比べ、一次治療後に再発した患者の全生存期間(OS)を延長させることが示された。全生存期間中央値は、ラムシルマブ群で10.5カ月であったのに対し、プラセボ群では9.1カ月であった。

「この治療法は、およそこの10年間で、二次治療として患者の予後を改善した初めての治療法です」と、フランスにあるリヨンがん研究センター胸部腫瘍部門長であり、この研究の筆頭著者であるMaurice Pérol医師は述べた。「この生存期間の改善は意義深いものです。なぜなら、進行NSCLC患者の二次治療後の生存期間は、一般的に非常に短いからです」。

ラムシルマブは、VEGF受容体2と呼ばれるタンパク質を標的とした特異的なモノクローナル抗体であり、腫瘍内に新たな血管が形成される(血管新生)のを阻害する。進行NSCLCに対する二次治療薬として承認されている抗血管新生薬はなく、ラムシルマブは現在、進行胃癌治療に限って承認されている。

一次治療後、最終的に全ての患者が再発を起こす一方で、進行NSCLCに対する二次治療には、未だ不十分である医学的な要求が多く存在する。進行NSCLCに対する二次治療薬としてドセタキセル、エルロチニブそしてペメトレキセド(非扁平上皮NSCLS限定)が承認されているが、これらの臨床成果は満足のいくものではなく、腫瘍縮小率はおよそ10%、全生存期間中央値は7カ月から9カ月の間となっている。

この試験では、標準的なプラチナベースの治療を受けたにもかかわらず、進行が認められたステージ4NSCLC患者1,253人(26%が扁平上皮癌患者)が、ラムシルマブとドセタキセル治療群あるいはプラセボとドセタキセル治療群に無作為に割り当てられた。

ラムシルマブを併用することで、ドセタキセルによる二次治療の効果が改善され、腫瘍縮小が認められた患者がプラセボ群では13.6%だったのに対し、ラムシルマブ群では22.9%であった。全生存期間中央値および無増悪生存期間(PFS)中央値はそれぞれ、ラムシルマブとドセタキセル併用群で10.5カ月、4.5カ月であったのに対し、プラセボとドセタキセル併用群では9.1カ月、3カ月であった。この生存期間に対する有益性が、扁平上皮癌および非扁平上皮癌の両亜型を含む、大部分のサブグループの患者において一貫して認められたことから、この治療法がNSCLCの全ての亜型に対して適用できる可能性が示唆された。抗VEGFR薬とドセタキセルを併用した際の安全性に関しては、予想されていた通り、肺出血(肺からの急性出血)の割合に増加は認められなかった。

この研究は、イーライリリー社の完全子会社であるImClone社により支援を受けた。

ASCOの見解:
「この研究は、再発を起こした、あるいは難治性の非小細胞肺癌患者に対する治療の選択肢の幅を広げるものです」と、ASCO専門家であるGregory A. Masters医師は述べた。「ラムシルマブは、化学療法に加えることで、低い毒性を保ったまま、有効な標的薬となるのです。このことは、一次治療後に癌が進行した患者にとって、非常に有益なものとなるでしょう」。

抄録全文参照:http://abstsearch.asco.org/index_wait.html

翻訳担当者 田村克代

監修 後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

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原文掲載日 

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