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包括的ゲノム腫瘍検査により肺癌患者に適合する分子標的治療が選択可能になる

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包括的ゲノム腫瘍検査により肺癌患者に適合する分子標的治療が選択可能になる

キャンサーコンサルタンツ

腫瘍遺伝子型検査のルーチン化が進行性肺癌患者の生存率向上につながることを示すデータが得られた。

 

肺癌の中で最も頻度の高いタイプの肺癌患者に対する分子標的治療について、スローンケタリング記念がんセンターの医師らが実施した新たな研究の結果、同疾患の治療に変化がもたらされた。

 

米国内14の病院で構成される肺癌遺伝子変異コンソーシアム(Lung Cancer Mutation Consortium: LCMC)は、肺腺癌患者の治療方針決定に腫瘍遺伝子型判定を組み入れた。今回の研究では、患者から採取した腫瘍の64%でドライバー癌遺伝子が検出された。癌遺伝子は、遺伝子変異によって活性化すると正常な細胞を癌細胞化する。Journal of the American Medical Association (JAMA)誌5月20日号に掲載された研究データによると、当プログラムで特定したドライバー癌遺伝子に適合する薬剤を患者に投与すると、生存率が向上する可能性がある。

 

スローンケタリング記念がんセンター胸部腫瘍科長であり、共同筆頭著者のMark G. Kris医学博士は、次のように話す。「この方法は肺癌患者の治療を変えた。かつて病理医が顕微鏡検査で腫瘍細胞を見つける以外に肺癌の診断方法がなかった頃は、すべての患者に同じ静脈内化学療法を行っていた。しかし、今では腫瘍組織内で癌を進行させる遺伝子変異を見つけ、遺伝子の癌作用を抑制する薬剤を投与することによって各患者に合った治療を実施できるようになった」。

 

Kris医学博士らは10種類のドライバー癌遺伝子を検出するため、米国内14施設の患者1,000人以上を対象として複合ゲノム検査を実施し、腫瘍細胞のDNA解析などを行った。ドライバー癌遺伝子が検出された患者のうち、分子標的治療を受けた患者の生存期間中央値は約3.5年、分子標的治療を受けなかった患者の生存期間中央値は約2.4年であった。ドライバー癌遺伝子が検出されなかった患者の生存期間中央値は2.1年であった。

 

ドライバー癌遺伝子が検出され分子標的治療を実施した患者の方が生存は長かったが、ドライバー癌遺伝子に基づいて分子標的治療を選択した結果として生存率が改善したのかどうかを判定するためにはランダム化臨床試験が必要である。

 

今回の研究では、患者の腫瘍検体でドライバー癌遺伝子が特定されると、医師はその情報に基づいて治療方法を選択した。

 

研究はステージ4または再発した肺腺癌患者を対象とした。1,007人の患者から採取した腫瘍については1種類以上の遺伝子について検査した。733人の患者から採取した腫瘍については10種類の遺伝子について検査し、完全に遺伝子型が同定された。733人の腫瘍検体の64%でドライバー癌遺伝子が特定された。医師らは、症例の28%に対して適合する薬剤または臨床試験による分子標的薬物療法を推奨することができた。

 

Kris医学博士は話す。「われわれがこうした特異的な遺伝子変化を見つければ、医師らはドライバー癌遺伝子を標的とする薬剤や臨床試験を選択できる。その結果、標準的な化学療法よりも腫瘍を縮小できる可能性ははるかに高くなる。癌細胞は正常な細胞よりも癌遺伝子にはるかに大きく依存しているため、副作用もきわめて小さくなる」。

 

2004年、スローンケタリング記念がんセンターの病理学者がドライバー癌遺伝子検査を通常の検査に組み込んで以来、同病院は肺癌患者ごとの治療方針決定における癌遺伝子検査およびゲノム検査の利用において先導的役割を果たしている。この取り組みが始まったのは、スローンケタリング記念がんセンターとボストンの2病院で上皮増殖因子受容体(EGFR)の変異が発見された2003年である。

 

スローンケタリング記念がんセンターの分子診断科長であり、今回の共同研究者でもあるMarc Ladanyi医学博士は次のように話す。「今回の研究の結果、肺癌患者の腫瘍で最も重要な複数の遺伝子変化を通常の検査で同時に検査できることがわかった。検査で得た情報に基づいて肺癌患者に適した分子標的療法を選択することができる。なぜなら、今回の研究の主要結果から、腫瘍にドライバー癌遺伝子が認められた患者に適切な分子標的治療を実施すれば、より良い成果が得られることがわかったからである。この10年間で当センターの検査技術は著しく向上した。当センター最新の複合遺伝子検査法MSK-IMPACTは次世代シークエンシングにより、肺癌という範疇をはるかに超えてあらゆる種類の固形癌における癌関連遺伝子341個をルーチン検査で分析できるようになった」。

 

毎年、米国で13万人、全世界で100万人が肺腺癌と診断されている。

 

本論文を執筆したKris医学博士と、ダナファーバー癌研究所の臨床研究責任医師Bruce E. Johnson医学博士は、LCMCの臨床委員長を務めた。LCMCは米国国立癌研究所(NCI)のGrand Opportunity Grant Programの資金援助、American Recovery and Relief Act of 2009の支援を受けている。

 

 

 


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原文掲載日

翻訳松木宏樹

監修林 正樹 (血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

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