HER2陽性の早期乳癌患者に対し、トラスツズマブ補助療法にラパチニブを追加しても転帰は改善せず | 海外がん医療情報リファレンス

HER2陽性の早期乳癌患者に対し、トラスツズマブ補助療法にラパチニブを追加しても転帰は改善せず

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

HER2陽性の早期乳癌患者に対し、トラスツズマブ補助療法にラパチニブを追加しても転帰は改善せず

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

大規模な第III相臨床試験ALTTO(Adjuvant Lapatinib and/or Trastuzumab Treatment Optimisation)の結果、HER2を標的とした2種の薬剤であるトラスツズマブとラパチニブを併用する術後補助療法では、HER2陽性早期乳癌の患者においてトラスツズマブ単独による標準治療よりも高い効果は得られないことが示唆された。本試験では4年無病生存率は86~88%の範囲であり、治療群間で統計的有意差は認められなかった。

 

「HER2陽性早期乳癌の患者さんのほとんどがトラスツズマブによる標準治療で元気に過ごされていることを嬉しく思います」本試験報告の上席著者である、フロリダ州ジャクソンビルのメイヨークリニック副支部長Edith A. Perez医師は述べる。「しかし、ラパチニブを追加しても効果が伸びないことには驚きました。小規模の試験でこの2種の薬剤を術前に併用したときには有望であったからです。この試験から得られた重要な教訓は、新規の治療方法の価値を十分に評価して理解するためには特定の疾患状況におけるしっかりした臨床試験が必要だということです」。

 

トラスツズマブと化学療法による術後療法で、HER2陽性早期乳癌の患者における癌の再発および死亡のリスクは有意に低減される。しかし、患者の約20%は10年以内に再発し、通常は身体の別の部位に癌が発症する。この臨床試験の目標は、HER2経路を阻害する薬剤を1剤ではなく2剤用いて再発率をさらに低減することであった。

 

本試験-HER2陽性乳癌を対象とした過去最大の補助療法試験-は44カ国946医療施設で実施され、新規に診断された早期乳癌患者8,381人が登録した。手術後、患者はラパチニブ+トラスツズマブを投与する治療(並行群)、トラスツズマブの後にラパチニブを投与する治療(逐次群)およびトラスツズマブのみを投与する治療にランダムに割り付けられた。患者の大半(4,613人)は化学療法の終了後に抗HER2治療を受け、残りの患者は化学療法と同時に抗HER2治療を受け、その後もHER2治療を継続した。ホルモン受容体陽性癌の患者は、該当するホルモン療法も受けた。

 

追跡期間中央値4.5年の時点で、ラパチニブ+トラスツズマブによる治療群(逐次および並行のいずれも)ではトラスツズマブ単独群と比較して無病生存のイベント(侵襲性乳癌の再発、第二の原発癌の発症、あるいは原因を問わない死亡と定義)リスクが数値的に低下したが、この結果に統計的有意性は認められなかった。4年無病生存率は3治療群間で同等(トラスツズマブ群86%、並行群88%、および逐次群87%)であった。

 

トラスツズマブ単剤療法と比較して、併用治療では下痢、皮膚発疹および肝障害などの特定の副作用の発現率が非常に高かった。

 

この試験から得られた重要な結果には他に、重篤な心障害副作用の発現率が低かったことがある。近年、アントラサイクリン化学療法は広範囲に研究されているにもかかわらず、多くの医師は心毒性の懸念からアントラサイクリン化学療法(ドキソルビシンなど)の使用をやめ、代わりにTCH(ドセタキセル、カルボプラチン、トラスツズマブ)レジメンを使用している。しかし、ALTTO試験では患者の95%がアントラサイクリン化学療法を受けたが、うっ血性心不全の発現率は1%未満であった。本試験で安全性が良好であったことから、乳癌についての患者の転帰と合わせ、HER2陽性早期乳癌の患者においてアントラサイクリンを用いた化学療法の後にトラスツズマブを投与することは安全であるとさらに請け合うことができる。

 

この試験では、乳癌の生物学に対する理解を深め、なぜ再発する患者としない患者がいるのかの知見を得るために役立つ血液や組織の検体や大規模な収集を行った。

 

この試験に先立って行われたはるかに小規模なNeoALTTO試験では、手術前にラパチニブとトラスツズマブの2剤による治療(術前補助療法と呼ばれる)を実施し、病理学的な完全奏効(手術時点で乳房およびリンパ節に侵襲性癌が認められない)の割合がトラスツズマブ単独治療と比較して倍となった。しかし、ALTTO試験では、2剤による治療はトラスツズマブ単独の抗HER2治療と比較して乳房組織での奏効率は改善するものの、長期的な転帰改善にはつながらなかった。ALTTO試験は、ある特定の治療を他と比較する際に長期的な治療効果の代理マーカーとして乳房における病理学的な完全奏効を指標とすることに疑問を投げかけたため、今後の乳癌臨床試験のデザインに影響を及ぼすと考えられる。

 

本試験は、GlaxoSmithKline社、ならびに米国国立癌研究所と国立衛生研究所の助成を受けた。

 

ASCOの見解:

「この結果は、適切にデザインされた臨床試験を実施することの重要性を示すよい例です」ASCO会長のClifford A. Hudis医師は述べる。「この例では、薬剤を術前に併用して乳房組織での奏効率が上昇しても、そこから無病生存を予測することはできませんでした。別の薬剤を用いた他の臨床試験では違う結論が得られるかもしれませんが、現時点でこの試験から得られたのとは、HER2陽性乳癌においてトラスツズマブは安全性が良好で有効な補助療法であることの再確認です」。
抄録の全文(英語)はこちら

 

原文掲載日

翻訳石岡優子

監修林 正樹 (血液・腫瘍内科/敬愛会中頭病院)

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

関連薬剤情報

一覧

週間ランキング

  1. 1非浸潤性乳管がん(DCIS)診断後の乳がんによる死亡...
  2. 2BRCA1、BRCA2遺伝子:がんリスクと遺伝子検査
  3. 3リンパ腫患者の余命は、診断後の無再発期間2年経過で通...
  4. 4若年甲状腺がんでもリンパ節転移あれば悪性度が高い
  5. 5ルミナールA乳がんでは術後化学療法の効果は認められず
  6. 6コーヒーが、乳がん治療薬タモキシフェンの効果を高める...
  7. 7早期乳がんの一部は小さくても悪性度が高い
  8. 8治療が終了した後に-認知機能の変化
  9. 9アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する
  10. 10DNA修復遺伝子の生殖細胞変異は前立腺がんの生存に影...

お勧め出版物

一覧

arrow_upward

ユーザー 病名 発信元種別 発信元名 治療法別 がんのケア がんの原因・がんリスク がん予防 基礎研究 医療・社会的トピック 注目キーワード別 薬剤情報名種別

女性のがん
消化器がん
泌尿器がん
肉腫
血液腫瘍
その他
民間機関
その他