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がん治療後ケアに関する3つのガイドラインを発表

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がん治療後ケアに関する3つのガイドラインを発表

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

 連絡先 Kirsten Goldberg
571-483-1548
Kirsten.Goldberg@asco.org

 

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、多くのがん体験者に深刻な影響を及ぼす神経障害・疲労・うつ・不安といった諸症状の予防と対処に関して、科学的根拠に基づいた3つの診療ガイドラインを発表した。今回発表されたガイドラインは、がん治療後ケアについて予定されている一連のガイドラインの最初の3つにあたる。ここでは、がん体験者への心身両面におけるケアの必要性が強調されている。

 

このガイドラインは、米国におけるがん体験者の数が1971年の300万人から今日の約1370万人にまで劇的に増加したことを受けて発表された。これは重要な進歩ではあるけれども、がん体験者は、がんやその治療が原因となって生じるさまざまな課題に長期間にわたって直面しなければならない。がん体験者は、若年死亡やがん治療の副作用といったがん以外の健康上の問題についてもリスクが高いという問題がある。積極的な治療を終えた後に治療後のケアへ移行することは、長期的に最適な健康状態を保つうえで重要である。治療後のケアが予定も調整もされていないと、がん体験者はがん治療後の高いリスクやフォローアップ計画も知らないまま放っておかれてしまう。

 

このガイドラインに加えて、Cancer.Net(ASCOの患者向けウェブサイト)ではASCOの最新の推奨に基づいたがんサバイバーのための情報を更新した。

 

ASCOガイドライン―化学療法により生じた末梢神経障害への対処

ASCOの新たなガイドライン 「成人のがん体験者における、化学療法により生じた末梢神経障害の予防と対処に関するASCOの治療ガイドライン」は化学療法により生じた末梢神経障害(CIPN、ある種の化学療法、とりわけプラチナ製薬剤、ビンカアルカロイド、ボルテゾミブ、タキサン製剤を含む化学療法、による消耗性の副作用)の予防と治療について科学的根拠に基づく推奨を示している。化学療法による治療を受けているがん患者のうち、おおよそ30%から40%の患者に化学療法によって末梢神経障害が生じる。症状は、腕や脚のしびれや鈍痛から激しい痛みまで多岐にわたる。深刻な症状が起これば、投与量の減量や、他の化学療法へ変更を余儀なくされる可能性もある。深刻な症状が何年も続く患者も少数ながら存在する。

 

本日Journal of Clinical Oncology(JCO)誌に発表されたASCOガイドラインには、末梢神経障害の症状を緩和するために有効かもしれない薬剤がいくつか示された。しかしながら、末梢神経障害の発症を予防する薬剤については推奨はしていない。

 

「神経障害に特効薬はない」公衆衛生修士で、ASCOサバイバーシップ・ガイドライン・アドバイザリーグループの共同代表であるGary Lyman医師はいう。「神経障害の予防や治療に使用される薬剤の中には副作用を引き起こし、他の薬剤の効果を妨げるものもある。もしもその薬剤による効果が科学的に証明されていないなら、投与しないほうがいいことを明らかにしておきたい」。

 

ガイドラインによる推奨のポイント

予防

・質が高く、一貫した科学的根拠が不足しているため、神経毒を有する薬剤を用いて化学療法を行う際に、末梢神経障害の発症予防のための薬剤の使用は推奨されない。
・とりわけ、次のような物質は末梢神経障害の予防には用いてはいけない。
アセチル-L-カルニチン、amifostine、アミトリプチリン、CaMg、ジエチルジチオカルバミン酸、グルタチオン、ニモジピン、Org 2766、オールトランス型レチノイン酸、rhuLIF、ビタミンE

 

治療

・医師は末梢神経障害が生じた患者にデュロキセチンを投与してもいい。
・三環系抗鬱薬、ガバペンチン、バクロフェン含有の局所ゲル、アミトリプチリン、ケタミンなどの効果については確固たる根拠は得られていないが、これらの薬剤を特定の患者に試してみてもよい。

 

医師は、どの患者が末梢神経障害を発症するか、症状がどれくらい重いのか、どのぐらい症状が続くのか、を予測することはできない。末梢神経障害が早いうちに診断されれば、副作用として神経障害のない治療を選択することにより、末梢神経障害の症状や永久に神経障害が残る危険性を減らすことができる。医師は、治療開始前に末梢神経障害が生じる可能性について患者に話し、そして治療中は末梢神経障害症状の発症や程度を観察することが求められる。

 

この臨床治療ガイドラインを策定するにあたり、Dawn L. Hershman医師とCharles L. Loprinzi医師が共同代表を務めるASCO専門委員会は関連する医学文献の正式なシステマティックレビューを行った。このレビューでは末梢神経障害への対処に関する48のランダム化臨床試験が検討された。

 

ASCOガイドライン―成人のがんサバイバーにおける疲労のスクリーニングと対処

ASCOの新たなガイドラインASCOガイドライン「成人のがんサバイバーにおける疲労のスクリーニング、アセスメント、対処に関するASCOの治療ガイドライン」では、疲労を感じている成人のがん患者に対する、スクリーニング・評価・対処の方法について推奨される事項が記載されている。すべてのがん体験者に対して、当初の治療が終了した段階で疲労について評価を行い、そして疲労に対する対処法を提示することが、推奨されている。

 

「疲労はがん患者には極めて一般的な症状です。このガイドラインが、疲労をスクリーニングしてこれに適切な対処をすることが、すべてのがん体験者のケアに確実に組み込まれることの一助になると期待しています」と、公衆衛生学修士で、ASCOサバイバーシップ・ガイドライン・アドバイザリーグループの共同代表であるSmita Bhatia医師は述べた。

 

がん治療を行っている間に、患者の大多数が何らかの程度の疲労を感じ、およそ3分の1の患者は治療終了後も何年にもわたって疲労感を感じ続ける。疲労の原因となるがん・がん治療やその他の治療・血球数・他の慢性疾患等の異なる要因が、どの患者においても疲労と合併して認められる。このような疲労の原因となるすべての要因について考慮することが重要である。

 

ガイドラインによる推奨のポイントは以下のとおり

・全患者が、最初にがんと診断された時点で疲労の有無につきスクリーニングされなければならない。
・医療従事者は、疲労が生じてからの経過、がんの状態、治療可能な疲労の原因について調べなければならない。
・全ての患者に、正常な状態とがんに関連しておこる疲労との違い、疲労の原因、疲労を起こす要因、について教えなければならない。また患者には、肉体的な運動、心理学的な治療法(認知療法や行動療法や心理教育療法など)、心と体の治療法(ヨガや針治療など)のような疲労に対処する方法を知らせなければならない。

 

本日Journal of Clinical Oncology(JCO)誌で発表されたこのガイドラインを策定するために、Julienne E. Bower博士とPaul Jacobsen博士が共同代表を務めるASCOの専門家委員会は、診療ガイドラインデータベースと関連する医療文献の正式なシステマティックレビューを行った。本ガイドライン作成においては、疲労についての全カナダガイドライン(Pan-Canadian guideline)と、National Comprehensive Cancer Network の2つのガイドライン、がんに関連する疲労とがんと向き合って生きるためのガイドライン、を下敷きにした。

 

ASCOガイドライン―成人のがん癌患者の不安とうつへの対処

ASCOの新たなガイドライン「成人のがん患者における不安やうつ症状のスクリーニング、アセスメントおよび治療に関するASCOの治療ガイドライン」では、がんによって生じる感情面や行動面での負のできごとを軽減する上で、医療従事者は重要な役割を持つことを強調している。

 

「ストレスはがん患者には非常によく認められる症状ですが、そのタイプや原因はさまざまです。また、うつは、常に意識していないと見過ごしがちです」とBhatia医師は述べた。

 

JCO誌に本日発表されたASCOガイドラインでは、がん治療を受けているすべての患者に対して、うつや不安の症状について評価を行うことを推奨している。すべての患者に支持療法を行うべきであり、中程度から重度の不安やうつ症状を認める患者には適切な治療を行うべきである。

 

ガイドラインでは上記に付け加えて次の項目を推奨している

・医療従事者は、すべてのがん体験者についてうつや不安の症状を定期的に評価すべきである。
・評価に当たっては、妥当性が確認されかつ公表されている方法と手順を用いなければならない。
・がんに罹患した状況においてストレスを感じるのは普通であること、ストレスの徴候と症状、ストレスを減らす方法、疲労への対処法に関する教育、等の支持療法に関する支援、をすべてのがん体験者に行うべきである。
・心理学的、心理社会的および精神医学的な治療を、中程度から重度のうつや不安症の症状を訴えるがん患者に行うべきである。

 

「医師は、患者が病気について少し不安になったり落ち込んだりすることは普通だと考えて、こういった症状にはあまり注意を払わないことがある。しかし、このような症状を注視し、ストレスが患者のQOLを阻害し始めた時点で踏み込んでいくことが重要だ」と、Lyman医師は話した。

 

このガイドラインを策定するにあたり、Barbara L. Andersen博士とJulia Howe Rowland博士が共同代表を務めるASCO専門家委員会は、臨床診療ガイドラインデータベースと関連する医学文献の正式なシステマティックレビューを行った。本ガイドライン作成においては、成人のがん患者における精神的苦痛(うつや不安)についての全カナダガイドライン(Pan-Canadian guideline)、を下敷きにした。

原文掲載日

翻訳池上紀子

監修田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学教授)

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