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NCI臨床試験ネットワークの運用

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NCI臨床試験ネットワークの運用

米国国立がん研究所(NCI)パースペクティブ

原文掲載日:2014年3月20日

 

米国国立癌研究所(NCI)は、米国内で新規に癌と診断される年間160万人以上の患者の治療改善を目的とした新しい臨床試験調査ネットワークを開始する。NCI臨床試験ネットワーク(NCTN, NCI’s National Clinical Trials Network)と呼ばれるこの新しいシステムでは、データ管理インフラの改善を基礎とした癌の臨床試験の迅速な開始と完了、新しい試験の優先順位決定を行う標準的プロセスの構築、効率化を目的とした所属研究グループの統合、3000を超える臨床試験実施施設における被検者保護の統一的システムの運用が可能になる。計画への資金提供は2014年早春より行われる。 

 

堅調な実績を残していたものの、旧来のNCI臨床試験プログラム(Clinical Trials Cooperative Group Program, NCI臨床試験共同研究グループ)の各構成要素は効率が低下し、10年以上前から運用手続きのいくつかに変更を求められていた。米国医学研究所(IOM)による2010年の報告(http://iom.edu/Reports/2010/A-National-Cancer-Clinical-Trials-System-for-the-21st-Century-Reinvigorating-the-NCI-Cooperative.aspx)では、実施する必要がある変更方針の評価と改善が行われた。米国医学研究所が提案した、改善作業の指針となる4つの重要な目標は以下の通り:

 

・臨床試験のデザイン、開始、実施における速度と効率の改善
・医学的な技術革新の至適活用
・臨床試験の選択、優先順位決定、支援および完了に関する改善
・患者と医師双方の参加枠拡大の奨励 

 

特に、米国医学研究所をはじめとする各機関からの提案では、NCIが第3、第4相臨床試験プログラム内のグループを、それぞれ能力が高く、全体的なシステムの統合と協力体制の改善を推進する適切な刺激材料を有する少数グループへと統合することが重要であると強調した。こうした提案を受け、NCIは統合、優先順位決定、効率化、技術革新という4つの重要な目標に焦点を当てて新しいNCTNを構築した。

 

NCTNには米国内の癌の臨床研究活動を強化する多くの変更点がある。具体的内容は以下の通り:

 

・新しいシステムではすべての試験を対象とした単一の共通化したITデータ管理システム(Medidata RAVEと呼ばれる)を用い、NCTNの所属組織が主導する試験か否かに関わらず、すべての試験に対して加盟施設の参加を可能にする。ネットワーク参加者すべてが用いる臨床試験システムを一元化することで、臨床試験の迅速な作成と実施、そして臨床試験結果の分析が可能となる。

 NCI中央倫理審査委員会CIRB)の審査範囲が拡大しシステム全体で行われる試験を網羅するようになり、それにより各施設がより多く試験を実施することができるはずである。以前は、各施設が独自で倫理審査を実施する必要があった。NCI中央倫理審査委員会が単一集約的な倫理審査を行うことでシステムが共通化され、倫理審査のコスト、時間、人員の節約につながる。

 ・腫瘍標本バンクとそれの効率的な統合を可能とする情報システムを再設計し、患者治療を決める指針となる分子学的予測試験の開発支援においてより効率的に利用できるようにした。 

 

「新しいネットワークは、癌の臨床研究プロセスの統合と合理化を目的とした比類なき努力の表れなのです」と語るのは、NCIクリニカル・トランスレーショナルリサーチディレクター補佐のJames Doroshow医師である。「公費負担によるNCI支援試験の実施は、試験のデザイン、審査、開始のシステムが複雑になるのです。新しいNCTN55年以上使われていた仕組みに取って代わるものなのです」。

 

NCTNでは、大学の研究者や専門組織、患者、アドボケートなど腫瘍学分野からの幅広い意見を取り入れた包括的な試験作成および実施プロセスを採用している。特に、地域ベースの臨床試験では、試験結果の適用範囲を拡大して癌ケアの提供における全ての段階を網羅するのに重要な役割を担っている。地域施設の臨床研究を支援する新しいシステムであるNCI Community Oncology Research ProgramNCORPNCI地域癌研究プログラム)はNCTNにとって重要かつ相補的役割を担うものであるが、年内に開始して癌治療と癌ケア提供の研究の両方を対象にする。

 

NCTNは新たな治療法確立のためのゴールドスタンダードである第3相試験に焦点を当てる。NCTNプログラムへの資金援助は年間15000万ドル規模で、それに加え他のNCIサポート契約と資金援助プログラムを通じて得られる中枢管理支援のための追加資金が必要になると予測される。

 

ピアレビューの結果をうけ、それぞれ運営・統計センターを持つ4つの成人ネットワークグループと1つの小児ネットワークグループが資金提供を受ける。新しいネットワークグループは緊密な協力体制を結び、新しい癌治療と高度な画像診断アプローチの研究と評価を行う。その一方、旧来のプログラムではそれぞれ管理および統計センターを持つ9つの成人ネットワークが携わっていた。NCTNはこれまでカナダの臨床試験責任医師と臨床試験で長年にわたり協力関係にあったため、カナダのグループもネットワークに組み入れる。

 

NCTNを対象として設立されたLead Academic Participating SiteLAPS)資金は、NCIが指定する多くの癌センターを対象とする。LAPSは、成人臨床試験グループと協力して臨床試験の作成と実施において医学的リーダーシップを担う。LAPSは患者登録コスト上昇による増資を受けるが、新規患者発生の点で高い対応水準を維持する必要がある。約30LAPS1つ以上のNCTN成人グループと協力し、ネットワークの範囲を広げる。

 

この新しいネットワークにおける重要な成果のひとつには、常に新規患者発生率がきわめて低い稀な腫瘍の試験実施が可能となる点がある。稀な癌患者の特定と登録を行う臨床試験施設の全米ネットワークが利用可能となることで、そうした試験の実施がさらに可能となるはずである。また、分子学的な定義で小さなサブセットに分類される癌が増えているため、新しいネットワークではそうした試験への参加資格の可能性がある患者小グループの定義と特定に必要な分子学的スクリーニングを支援する。

 

NCTNの臨床試験責任医師は、どんな重要な臨床試験の疑問点でも対処する態勢がこれまで以上に可能となるのです」と語るのは、NCI Cancer Therapy Evaluation ProgramNCI癌治療評価プログラム)副ディレクターのJeff Abrams医師である。「新たに再活性化し効率化したNCTNを運用することで、医学者は特定の癌、特定の患者集団、もしくは腫瘍の遺伝子スクリーニング、画像診断、放射線治療、手術といった特定の手技に的を絞った試験を実施することができるのです」。

 

原文

翻訳渋谷武道 

監修林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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