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発生率の高い小児軟部肉腫を引き起こす遺伝子変化をNIHの研究者らが解読

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発生率の高い小児軟部肉腫を引き起こす遺伝子変化をNIHの研究者らが解読

米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース

原文掲載日:2014年1月23日

 

研究者らが小児軟部肉腫である横紋筋肉腫の腫瘍を引き起こす遺伝子変化を解読し、この疾患には特徴的な二つの異なる遺伝子型が存在することを突き止めた。この悪性腫瘍で特定された遺伝子変化は、同疾患を有する小児患者のための標的診断ツールや治療法の開発に役立つ可能性がある。米国国立衛生研究所(NIH)の一部である国立癌研究所(NCI)の研究者およびその協力者らが実施したこの研究は、2014年1月23日にCancer Discovery誌に発表された。

 

横紋筋肉腫は、小児に最も多くみられる軟部肉腫であり、身体のあらゆる部位の筋肉に発生する。非転移癌と診断された患者の80%が、治療に関連したかなりの副作用が発現する可能性があるものの、5年以上生存する。しかし、転移癌患者では、積極的治療を実施したとしても5年生存率は約30%である。

 

横紋筋肉腫の原因となる遺伝子異常の特徴を明らかにするNCIの取り組みを主導したのは、癌研究センター小児腫瘍学部門腫瘍ゲノミクス科長のJaved Khan医師と専門研修医のJack Shern医師である。

 

「組織の採取や検証がきわめて複雑であることから、こうした研究を実施するのは非常に困難です」とKhan医師は述べた。「したがって、この研究は勇気ある小児患者さんとそのご家族がいなければ可能でなかったことを心に留めておかねばなりません。生命を脅かす疾患に直面しているにもかかわらず、自分たちはこの研究の利益を直接受けることはないと知りながら、研究者が将来横紋筋肉腫と診断される子供たちを助けるための教訓を得ることを願って腫瘍を提供してくれたのです」。

 

Khan医師のチームは、正常細胞の検体とペアにした計147の横紋筋肉腫の腫瘍における遺伝子変化を調べるのに、複数の先進的な配列決定技術を用いた。この配列決定ツールによって、腫瘍細胞に生じる複雑な分子現象を解明し、正常DNAと腫瘍DNAとを比較し、遺伝子変異を特定するとともに、どの遺伝子が活性化または不活性化されて横紋筋肉腫の進行を引き起こすのかを正確に特定することが可能となった。

 

Khan医師らの研究によって、横紋筋肉腫二つの異なる遺伝子型が特定された。一つ目の遺伝子型は、PAX3またはPAX7融合遺伝子のいずれかを特徴とする。融合遺伝子とは、二つの異なる遺伝子の一部が結合してできた遺伝子である。二つ目は、PAX融合遺伝子を持たないが、重要なシグナル経路に変異が存在する遺伝子型である。シグナル経路とは、細胞分裂や細胞死などの一つ以上の細胞機能を調節するために連携して働くタンパク質のグループをいう。

 

また、研究者らは、他の種類の小児癌と同様、小児の生存期間中に生じる腫瘍DNAの変異(体細胞突然変異として知られる)の総数が、小児が生まれつき持っているDNA変異と比べて比較的少ないことを突き止めた。体細胞突然変異率は、PAX融合遺伝子を持つ腫瘍で特に低かった。しかしながら、研究者らは、いずれも過去に横紋筋肉腫で変異がみとめられているNRAS, KRAS, HRAS, FGFR4, PIK3CA, CTNNBなどの複数の遺伝子、またこれまで同疾患との関連がみられなかったFBXW7およびBCOR遺伝子に比較的高頻度の体細胞突然変異があることを発見した。

 

さらに、RAS/PIK3CAシグナル経路の遺伝子でも変異が特定された。全体で、この経路における変異は横紋筋肉腫の腫瘍の93%にみとめられた。興味深いことに、PAX融合遺伝子を持たない腫瘍での変異遺伝子の多くは、PAX融合遺伝子が産生したタンパク質によって活性化または不活性化されることが判明した。

 

「さらに研究が必要ではあるものの、今回の私たちの研究は、研究者たちに横紋筋肉腫の小児患者に対する既存の治療選択肢に比べてより有効性にすぐれ、副作用の少ない、ゲノミクスに基づいた治療介入を開発する根拠を与えることになるかもしれません」とShern医師は述べた。

 

本研究を足がかりとして、Khan医師のチームは、今回の横紋筋肉腫のゲノム解析で特定された遺伝的原因を標的とした治療介入の試験を計画し実施する予定である。

 

本研究は、Children’s Oncology Group(研究に使用された患者腫瘍検体の多くを収集、保存)およびマサチューセッツ州ケンブリッジのBroad Institute of the Massachusetts Institute of Technology and Harvard University(患者腫瘍検体をさらに提供し、バイオインフォマティクス面のサポートを実施)を含む共同研究であった。

 

(図スクリプト訳)
網羅的ゲノム配列解析によって小児横紋筋肉腫の主な亜型を形成する変異が明らかになっている。

 

参考文献:Shern J F et al. Comprehensive genomic analysis of rhabdomyosarcoma reveals a landscape of alterations affecting a common genetic axis in fusion-positive and fusion-negative tumors. Cancer Discovery. January 23, 2014. DOI: 10.1158/2159-8290.CD-13-0639

 

原文

翻訳原恵美子 

監修寺島慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター 小児がんセンター)

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