イピリムマブによる進行性黒色腫の長期延命効果が明らかに

キャンサーコンサルタンツ

アムステルダムのESMO2013欧州臨床腫瘍学会で発表された集積データによれば、免疫学的療法、イピリムマブ(Yervoy)で治療した進行性黒色腫患者の一部は10年間も生存している。

あらたに皮膚癌と診断された人は毎年100万人を超えるが、そのうち、約6万8000人が黒色腫である。米国では、毎年8000人を越える人が黒色腫で死亡する。黒色腫はそのほかの皮膚癌に比べて、体内の他の部位に拡がり易い(転移し易い)ため危険である。

免疫療法とは、免疫系を活性化して癌細胞を攻撃させる治療法である。進行性黒色腫の治療薬として2011年に認可されたイピリムマブは、CTLA4として知られている分子を標的にする。CTLA4はT細胞の表面にあり、免疫反応を阻害すると考えられている。イピリムマブは、このCTLA4分子を標的にして、腫瘍細胞に対する免疫システムの反応を強める可能性がある。

研究者によって、総計1,861人の患者(治療歴のある1,257人と治療歴のない604人)を含む12回の臨床試験データ(2回の第3相試験、8回の第2相試験および2回の観察研究)が集積された。さらに、治験用新薬利用範囲拡大制度で追加した2,985人の患者についても解析が行われた。

初めの1,861人の患者については、データから、3年間生存率が22%、7年間生存率は17%となり、7年を越えて生存した患者については死亡者が認められなかった。追加した2,985人の患者のデータ解析では3年間全生存率は21%であった。

1,861人の患者の一次解析では、全生存期間中央値が11.4カ月であった。サブグループ解析によれば、投薬歴のない患者の全生存期間中央値は13.5カ月で、3年間生存率は26%であったが、治療歴のある患者の全生存期間中央値は10.7カ月で、3年間生存率は20%であった。全患者4,846人を合わせた解析では、全生存期間中央値は9.5カ月であった。

イピリムマブで治療した進行性黒色腫の患者は、3年目に生存安定期に入り、その安定期が少なくとも10年に延びたと研究者は結論づけている。この結論は、歴史的に不治の病とされてきた進行性黒色腫治療に対する見方が根本的に変って、進行性黒色腫が、いまや慢性疾患として治療できる可能性がでてきたことを意味している。

参考文献:
Schadendorf D, Hodi FS, Robert C, et al. Pooled analysis of long-term survival data from phase II and phase III trials of ipilimumab in metastatic or locally advanced, unresectable melanoma. Presented at the 38th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Amsterdam, Netherlands, September 27-October 1, 2013. Abstract LBA24.


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翻訳担当者 大木勝弥

監修 関屋 昇(薬学)

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