乳癌HER2検査ガイドラインの改訂(ASCOおよび米国病理学会) | 海外がん医療情報リファレンス

乳癌HER2検査ガイドラインの改訂(ASCOおよび米国病理学会)

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乳癌HER2検査ガイドラインの改訂(ASCOおよび米国病理学会)

米国臨床腫瘍学会(ASCO) 米国病理学会

速報:
連絡先:
Aaron Tallent
571-483-1371
Aaron.Tallent@asco.org

 

米国臨床腫瘍学会(The American Society of Clinical Oncology:ASCO)および米国病理学会(College of American Pathologists:CAP)が2013年10月7日、合同で改定ガイドラインを発行した。ガイドラインの精度を改善し、進行性乳癌患者を対象としたヒト上皮成長因子受容体2(HER2)の検査の報告を目的とするものである。本改定ガイドラインは、医学研究文献の系統的レビューに基づいて作成されており、腫瘍医や病理医を対象に、HER2過剰発現の検査方法、検査結果の解釈、推奨するHER2標的療法に関し詳細に提言したものである。本ガイドラインの初版は2007年にASCO発行のJournal of Clinical Oncology(JCO)誌およびCAP発行のArchives of Pathology & Laboratory Medicine誌に発表されている。今回の合同ガイドラインは乳癌専門家や癌のバイオマーカー専門家で構成されたASCO、CAP合同ガイドライン改定委員会により作成された。

 

新規に診断された全乳癌患者の約15%がHER2陽性であり、この腫瘍では、乳癌腫瘍の増殖や転移を制御するHER2遺伝子のコピー数の増加またはHER2タンパク質が高発現していることを意味する。通常、HER2陽性腫瘍はHER2陰性腫瘍と比較して増殖が速い。HER2検査は、トラスツズマブ(ハーセプチン)、ラパチニブ(タイケルブ)、ペルツズマブ(Perjeta)、T-DM1(Kadcyla)などによる有効性の高い、HER2標的療法の効果が得られる患者を特定するために実施する。これらの治療薬はHER2陽性の進行性乳癌患者の生存期間を大幅に改善する可能性がある。このことから、最も効果が得られる可能性のある患者に、確実にHER2標的療法を行うため、HER2の状態を正確に決定することが重要である。また同時に、効果が見込まれない患者ではこれらの療法による副作用や治療費を回避することができる。

 

「より個別化された治療決定につながり、臨床転帰を改善すると認められている癌のタイプを特定する能力が飛躍的に向上しています。その結果、以前にもまして、癌治療の専門家が、適切な治療法と適切な患者とを適合するのを助ける質の高い腫瘍マーカー検査が求められています。今回のガイドライン改定は新たなエビデンスに基づきHER2検査を強固なものにし、明確に推奨するものです」と述べるのはAntonio C. Wolff医師。米国内科学会名誉上級会員(Fellow of American College of Physicians:FACP)、米国臨床腫瘍学会フェロー(Fellow of the American Society of Clinical Oncology:FASCO)、ASCおよびCAP乳癌HER2検査委員会共同委員長、米国ジョンズホプキンス大学キンメル総合がんセンターの腫瘍学教授でもある。

 

FDAに承認され、現在米国で利用されているHER2検査法には、免疫組織学的検査(IHC)とin-situハイブリダイゼーション法(ISH)の2種類がある。IHC検査法は腫瘍細胞表面上のHER2タンパク質の発現量を評価し、またISH検査法は各癌細胞表面上のHER2遺伝子のコピー数を評価する方法である。初版のガイドラインではIHC検査法および蛍光検出によるin-situハイブリダイゼーション(FISH法)に焦点を当てていたが、今回の改定ガイドラインでは、bright-field ISHとして知られる比較的新しい診断法の推奨が加えられている。この試験法も同様にHER2遺伝子の増幅を評価し、蛍光顕微鏡ではなく通常の光顕微鏡を用いる方法である。明視野顕微鏡を用い従来よりも容易に進行性乳癌成分を同定することが可能となり、検査結果のばらつきが、多少減少する。

 

今回のガイドラインでは以下を奨励している。

•新たに診断された浸潤性乳癌(原発病巣、転移病巣)の全症例で、HER2の状態を必ず検査すること。最低でも1つの腫瘍検体でHER2タンパク質の発現(免疫組織化学[IHC]検査法)またはHER2遺伝子増幅(in situハイブリダイゼーション[ISH検査法])を必ず実施すること。
•HER2検査結果が陽性であり、HER2検査結果と組織病理学的に明確な不一致がなければ、HER2標的療法の役割について検討すること。
•HER2検査結果が境界域である場合は、HER2標的療法を奨める判断を見送ること。初回HER2検査結果が境界域である場合、他の検査法で同一検体の再検査を必ず行う、もしくは他の検体で再検査を必ず行うこと。
•HER2検査結果が陰性の場合、HER2標的治療薬を投与しないこと。組織病理学的に明らかにHER2検査結果と一致していない場合、追加のHER2検査を検討すること。
•技術的問題のため腫瘍検体で所定の検査(IHCおよびISH)のいずれか、または両方が行えない場合、または検査(複数検査の場合も含む)で陽性、陰性、または境界域か報告できない場合、HER2検査結果を判定不能として報告すること。
•検査機関はCAPによる認証、または同等の認証機関当局により設定された基準に適合していること確認すること。

 

まれに、検査結果を陽性または陰性と判定することが難しい場合がある。他の組織検体で追加の検査が実施できない場合、病理医および腫瘍医はHER2標的療法を奨める前に、その患者で得られている臨床データの全てを検討すること。

 

また、M. Elizabeth H. Hammond医師(FCAP、ASCO、CAP乳癌HER2検査委員会共同委員長、米国ユタ大学医学部病理学部教授)は「HER2検査結果が境界域の患者数は、以前は多かったのですが、HER2検査の質が向上したことから境界域判定や不正確な検査結果が減少したという証拠が示されています。われわれは、この結果には前回の2007年発行での推奨が少なくとも寄与していると考えられます。現行のガイドラインにより、この分野で残る課題が解決され、最終的に乳癌患者全員の検査結果が改善することを願っております」と述べる。

 

ガイドライン委員会は、エストロゲン受容体やHER2など確立された乳癌バイオマーカーの検査の質を評価する目的のプログラムに参加する病理学検査室が大幅に増加したことについても述べた。更新版ガイドラインでは、HER2 検査実施の理由、用いる検査の種類、検査結果の解釈、再発の場合は再検査が必要となる可能性など、医者が患者と検討するべき要点についての詳細な推奨事項が盛り込まれている。また、更新版ガイドラインでは、乳癌患者のケアや治療の決断に影響を与える検査の実施に関係するすべての医師と医療体制が緊密に協力することが極めて必要であることが強調されている。

 

改訂版ガイドラインを発行するにあたりASCO、CAPは、腫瘍医や病理医のために検査所見やその推奨事項をまとめた臨床関連ツールや情報リソースを作成した。このリソースには、医療現場での質問に関する補足の情報、並びにIHC法およびISH法での検査結果の解釈に関する基準や報告対象の項目などが含まれている。ASCO、CAPはまた、患者手引きガイドを作成し、ASCO癌情報ウェブサイト(www.cancer.net)および(cap.org)よりそれぞれ入手することができる。

原文掲載日

翻訳菅原宣志

監修原野謙一(乳腺科・婦人科癌・腫瘍内科/日本医科大学武蔵小杉病院)

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