OncoLog2013年8月号◆頭頸部リンパ浮腫患者の日常生活を改善する特別なケア | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog2013年8月号◆頭頸部リンパ浮腫患者の日常生活を改善する特別なケア

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OncoLog2013年8月号◆頭頸部リンパ浮腫患者の日常生活を改善する特別なケア

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2013年8月号

MDアンダーソン OncoLog 2013年8月号(Volume 58 / Number 8)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

頭頸部リンパ浮腫患者の日常生活を改善する特別なケア

頭頸部リンパ浮腫は癌治療の合併症として発声や嚥下 (飲み込む動作)、呼吸に影響を及ぼし得るものであるが、こうした合併症をもつ患者に対して非常によい効果をもたらすユニークなプログラムが開発されている。

 

リンパ浮腫は痛みを伴わないことが多いが、外見に影響を与えうるものであり、根本的治療方法がない。癌患者において、リンパ浮腫は通常、外科手術や放射線治療に伴うリンパ節の障害やリンパ管の損傷によって生じるものである。「リンパ液の流出路に影響を与える治療法はいずれもリンパ浮腫を引き起こす可能性があります」と、述べるのは、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターの頭頸部外科の教授で、言語病理学/聴覚学部門の主任であるJan S. Lewin博士 である。

 

リンパ浮腫は、乳癌を治療した患者の腕や、泌尿生殖器癌を治療後の患者の足にしばしば生じる。頭頸部リンパ浮腫の発生頻度は四肢(手足)におけるリンパ浮腫の頻度よりもよりかなり低く、患者や医師に突き付けられる問題はそれぞれの場合で異なる。

 

頭頸部リンパ浮腫による影響は外見上の問題に止まらない。唇や舌、眼、のどにリンパ浮腫が生じると、重大な機能障害が引き起こされ、命にかかわることさえある。顔面や口唇、頸部の腫脹は発声や嚥下に大きな影響を与えることもある。眼周囲の腫脹は読み書きに影響を及ぼし、歩行にも影響する場合もあり、また、気道に影響するリンパ浮腫は呼吸困難を生じさせることがある。さらに、ストレスの蓄積により、困惑し、患者は抑うつ状態になることさえある。このような精神面への影響も重要であろう。

 

リンパ浮腫の管理

リンパ浮腫の標準治療法は複合的理学療法(complete decongestive therapy:CDT)である。本療法は、損傷されていないリンパ液排出経路を利用して、うっ滞しているリンパ液を流しだすことを目的とする。本療法は、徒手リンパドレナージ (手で優しくマッサージし、リンパ液の流れを改善させる)、圧迫療法(うっ滞部にリンパ液が再貯留しないようにする)、目的に特化した運動(組織の柔軟性を維持させる)、スキンケア(感染症を予防する)を組み合わせることにより展開される。

 

リンパ浮腫の管理は専門的な訓練を受けた理学療法士や作業療法士、マッサージ療法士が行うことが多いが、そういった専門家達でも頭頸部リンパ浮腫患者の診療に当たることはそれほどないであろう。

 

「四肢のリンパ浮腫は、理学療法士や作業療法士の専門領域です。リンパ浮腫が頭頸部に生じると、発声や嚥下、呼吸に影響が認められることがしばしばあり、その治療には特別な技術を組み合わせる必要があります」とLewin博士は述べる。訓練を受けた言語病理学者は頭頸部リンパ浮腫の治療成績を改善に貢献し、リンパ浮腫療法士として認識されるだろう、とLewin博士は考えている。言語病理学者は頭頸部の解剖生理に精通しており、発声障害や嚥下障害を有する患者の治療に関与できる可能性があるのだ。

 

頭頸部リンパ浮腫プログラムは2006年にMDアンダーソンがんセンター頭頸部外科部門で始まったが、現在では認定リンパ浮腫療法士の資格を取得している言語病理学者2名(Brad Smith氏とLeila Little氏)がいる。彼らは、MDアンダーソンがんセンターやその他の医療機関の医師から紹介された患者や、自ら受診して頭頸部リンパ浮腫と診断された患者を対象に、頭頸部リンパ浮腫の評価と治療を行っている。

 

MDアンダーソンがんセンターにおける頭頸部リンパ浮腫の管理プログラムでは、認定リンパ浮腫療法士による外来治療と、患者が自宅で行うセルフケアプログラムを組み合わせて実施している。定期的に外来受診している患者もいるが、大半の患者は、1~3回の外来受診後には、自宅でリンパ浮腫をセルフケアしながら、4~6週間ごとに経過観察のため来院している。「頭頸部は手が届きやすいため、多くの療法について自宅で行うことができます。このような性質上、患者さんの治療アドヒアランス(治療遵守)は良好であるといえます」とSmith氏は述べる。

 

初回来院時には、徒手リンパドレナージが実施されるとともに、圧迫帯が提供される。圧迫帯とはうっ滞部からのリンパ液を最大限排出させるために用いるための道具である。オーダーメイドの圧迫帯を必要とする患者もいるが、そのような圧迫帯は高価なことが多く、保険適応にならない場合もある。通常であれば安価な標準仕様の圧迫帯を患者さんにフィットするように調節することで対処可能である、とLittle氏は述べる。また、調節済の圧迫帯には違和感がなく、必要であれば睡眠中も装着できる、とLittle氏は付け加える。

 

長期的な改善

「頭頸部リンパ浮腫を抱える患者さんの大半は、『 朝起きた時に浮腫みが最もひどく1日の経過の中で少しずつよくなっていきます 』と話されます。こうした訴えは、浮腫が1日の間に徐々に悪化するという四肢リンパ浮腫に悩む患者さんたちの訴えとは正反対ですね」とSmith氏は述べる。「このようなことから、腕や足の浮腫は一生にわたり治療が必要なことがよくあります。一方で、頭頸部リンパ浮腫を抱える患者さんに対しては速やかに治療効果が認められることが多く、生涯にわたる治療は不要です」。

 

Lewin博士によると、頭頸部リンパ浮腫患者における治療効果を客観的に評価する標準化された方法はないのだという。その代わりに、写真で評価したり、巻き尺で計測したりして、治療後の経時的な変化を記録する。「過去6年間の自験データから、半数以上の患者は初回のフォローアップ外来で改善が確認されました。外来ベースの加療であれ、在宅ベースの加療であれ、治療プログラムを遵守している患者さんのうち70%以上でリンパ浮腫が軽減されました」と述べる。

 

浮腫が軽度の患者については、治療によって6カ月以内に浮腫はをほぼ完全に消失させることができます。重度の瘢痕化を伴う患者や、浮腫のひどい患者さんでは、それよりも長い治療期間が必要となります。浮腫が完全には消失しない場合であっても、ほとんどの場合に何らかの改善点がみられます」とSmith氏は述べる。

 

「リンパ浮腫の管理で最初に試みるべき治療法は複合的理学療法(CDT)ですが、標準治療法が無効なために症状が慢性化するケースや、重症の頭頸部リンパ浮腫を抱える患者さんにおいては、手術療法が治療選択肢となります」とLewin博士は述べる。

 

「組織が線維化する前の早期にリンパ浮腫を治療することで、より良好な長期治療成績が得られます」とLittle氏は付け加える。「頭頸部癌の治療終了後4~6週間経っても浮腫が消失しない場合は、医療機関の紹介を受け、評価を受けるべきなのです。通常、このような浮腫に対する治療方法が存在するからです。リンパ浮腫を抱えながら生きていく必要などないのですよ」。

 

追加情報:
Smith BG, Lewin JS. Lymphedema management in head and neck cancer. Curr Opin Otolaryngol Head Neck Surg. 2010;18:153–158.
The University of Texas MD Anderson Cancer Center. Lymphedema specialists tackle post-surgery swelling

. 2013.

【写真キャプション訳】
[写真1] リンパ浮腫療法の施行前および施行後
口腔癌に対する化学放射線療法の終了7週後(ベースライン評価時)(左)およびリンパ浮腫療法10カ月後(右)

[写真2] 頭頸部リンパ浮腫に対する圧迫帯による治療
圧迫帯によりリンパ液を最大限排出させる。頸部リンパ浮腫患者のほとんどにおいて、圧迫帯の使用が複合的理学療法の主軸となる。

[写真3] リンパ浮腫療法の施行前後の比較
喉頭癌の切除術6週後(ベースライン評価時)(左)およびリンパ浮腫療法5カ月後(右)

[写真4] リンパ浮腫療法の施行前後の比較
頭頸部に多発した癌に対する下顎半側切除術から6週後(ベースライン評価時)(左)およびリンパ浮腫療法6カ月後(右)

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
OncoLogに掲載される情報は、教育的目的に限って提供されています。 OncoLogが提供する情報は正確を期すよう細心の注意を払っていますが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターおよびその関係者は、誤りがあっても、また本情報を使用することによっていかなる結果が生じても、一切責任を負うことができません。 医療情報は、必ず医療者に確認し見直して下さい。 加えて、当記事の日本語訳は(社)日本癌医療翻訳アソシエイツが独自に作成したものであり、MDアンダーソンおよびその関係者はいかなる誤訳についても一切責任を負うことができません。

原文掲載日

翻訳永瀬祐子

監修佐々木裕哉 (血液内科/小倉記念病院)

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