OncoLog2013年3月号◆新薬によってイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病患者の治療選択肢が増加 | 海外がん医療情報リファレンス

OncoLog2013年3月号◆新薬によってイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病患者の治療選択肢が増加

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OncoLog2013年3月号◆新薬によってイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病患者の治療選択肢が増加

MDアンダーソンがんセンター月刊OncoLog誌2013年3月号

MDアンダーソン OncoLog 2013年3月号(Volume 58 / Number 3)

 Oncologとは、米国MDアンダーソンがんセンターが発行する最新の癌研究とケアについてのオンラインおよび紙媒体の月刊情報誌です。最新号URL

 

新薬によってイマチニブ耐性慢性骨髄性白血病患者の治療選択肢が増加

イマチニブに耐性となった慢性骨髄性白血病(CML)の二次治療薬として、この一年でいくつかの標的薬が承認された。これらの薬剤には、第二世代のチロシンキナーゼ阻害剤ボスチニブおよび第三世代のチロシンキナーゼ阻害剤ポナチニブが含まれており、CMLの標準治療が変わる可能性がある。

 

CMLの治療

CMLは、フィラデルフィア染色体転座によって生じるBCR-ABL融合タンパクにより引き起こされる。このタンパクが存在するからこそ、CMLは標的療法にとって理想的なものとなる。イマチニブは最も効果の高い初期の標的抗腫瘍薬の一つで、これまで何年もの間CMLの一次治療薬とされてきた。「CML患者のほとんどは、慢性期と呼ばれる時期にCMLと診断されますが、慢性期にはBCR-ABLに明確な薬剤耐性変異は認められません。したがって大抵の場合、初めはイマチニブが大変よく効きます」とJorge Cortes医師は語った。Cortes氏は、テキサス大学MDアンダーソンがんセンター白血病学の教授である。

 

CML治療の主要な目標は、細胞遺伝学的完全寛解であり、これは骨髄中にフィラデルフィア染色体転座が検出されないことを意味する。イマチニブで治療した患者の多くは完全寛解を得るが、完全寛解を得られなかった一部の患者は、その後二次治療へと移行する。したがって、イマチニブ耐性CMLに対する二次療法の開発に関心が集まっており、この目的で現在臨床試験を行っている薬剤、および米国食品医薬品局が最近承認した薬剤がいくつかある。

 

ボスチニブ

ABLはチロシンキナーゼであるので、CMLに対する二次治療の候補薬のほとんどが、ダサチニブ、ボスチニブおよびポナチニブといったチロシンキナーゼ阻害剤である。ボスチニブは、これらの薬剤の中でもっとも期待できる薬剤の一つである。一般的にイマチニブより効果が高いと考えられており、CMLをイマチニブ耐性にする変異のいくつかに打ち勝つことができる。

 

ボスチニブは、正常な血液細胞の増殖にあまり影響しないため、その副作用は他のチロシンキナーゼ阻害剤と比べて軽度で、大部分はまれなものである。たとえば、ニロチニブ、ダサチニブおよび他のいくつかのチロシンキナーゼは、c-KITおよび血小板由来増殖因子受容体のような増殖因子受容体をも阻害する。これらの受容体は、ある種の骨髄細胞の正常な増殖にとって重要である。しかし、これらの受容体に対するボスチニブの作用は、他の多くのチロシンキナーゼ阻害剤ほど強くないので、好中球減少症および血小板減少症の頻度はニロチニブおよびダサチニブより低い。またボスチニブでは、イマチニブ耐性CMLの治療に承認されている他の第二世代チロシンキナーゼ阻害剤に比べて、心毒性および膵炎の頻度も低い。一方で、ボスチニブでより多くみられる副作用もいくつかある。

 

ボスチニブが大変魅力的である理由の一つは、重大な副作用がないことである。しかしながら、Cortes氏はこう述べた。「他のほとんどの化学療法と比べて、チロシンキナーゼはすべて大変安全ですが、それでも副作用は起こりえます。医師は起こりうる副作用について患者に説明し、患者とよく話をしなければなりません」。ボスチニブに関連する主な副作用は下痢で、患者の最大80%でみられるが、その多くは軽度で対処可能である。

 

ボスチニブはCMLに対する他の多くの現行治療より優れているが、すべての患者に効果があるわけではない。例えばBCR-ABL遺伝子に起こるT315I点変異によって、CMLはイマチニブ、ボスチニブおよび他の大部分のチロシンキナーゼ阻害剤に対して耐性となる。

 

ポナチニブ

ポナチニブは大変強力なチロシンキナーゼ阻害剤で、他の既知のBCR-ABL遺伝子変異すべてに対する有効性を保ちつつT315I点変異にも効果を示すよう特別にデザインされた。ポナチニブは、他のチロシンキナーゼが持つ副作用の多くを有するが、これまで治療困難であった変異に対して有効であるため、大変期待されている。ポナチニブは、T315I変異陽性BCR-ABL、および他の複数のチロシンキナーゼ阻害剤が奏効しない患者に対して非常に効果的であるので、CML患者に対する二次治療薬として最近承認された。

 

新規一次療法は?

ボスチニブは他のチロシンキナーゼ阻害剤と比べて利益が大変多いことから、Cortes氏はCMLに対する一次治療としてボスチニブを用いるためのいくつかの予備研究を行った。最初の研究では、ボスチニブの細胞遺伝学的奏効率および分子学的奏効率がイマチニブより高いかどうか、確認を試みた。Cortes氏は述べた。「ボスチニブとイマチニブの細胞遺伝学的奏効率は同等であることがわかったので、この試験の主要エンドポイントについては、結論が得られませんでした。しかしながら、有害事象数のような他の評価項目においては、ボスチニブの方が優れていました」。

 

本試験で得られたもうひとつの注目すべき結果は、ボスチニブの方が、イマチニブと比べてより速く細胞遺伝学的完全寛解に達したことであった。多くの試験で、効果を示す速さはCML患者の長期生存に大きな影響を与えるとされてきた。しかしながら、ボスチニブがCML治療における標準的治療として推奨され、公式に採用されるには、現在進行中の研究のほか、さらなる多くの研究が必要であろう。

 

また、ポナチニブについても一次治療薬としての研究が行われている。進行中の第2相臨床試験でCortes氏らは、治療歴のない慢性期CML患者における本薬剤の有効性を評価している。耐性が起こりにくいという検査データをもとに、ポナチニブは、耐性獲得の可能性を減少させ、その結果長期転帰を改善する治療選択肢として注目されている。

慢性骨髄性白血病に対する現行治療
イマチニブ:慢性骨髄性白血病(CML)に対する一次治療薬として米国食品医薬品局に承認されたチロシンキナーゼ阻害剤、多くの場合有効
ダサチニブ:一部のイマチニブ耐性変異に対する二次治療用チロシンキナーゼ阻害剤
ボスチニブ:一部のイマチニブ耐性変異に対する二次治療用チロシンキナーゼ阻害剤
ニロチニブ:二次治療に用いるチロシンキナーゼ阻害剤、イマチニブの構造を若干変えたもの
オマセタキシン:T315I変異陽性CMLに対するアルカロイド系翻訳阻害剤
ポナチニブ:T315I変異陽性CMLに対する二次または三次治療用チロシンキナーゼ阻害剤
幹細胞移植:治癒が期待できるが、チロシンキナーゼ阻害剤による治療と比べてリスクが大きい。一次療法としてはほとんど用いられないが、他の療法が奏効しない患者では候補となる。

 

今後の方向性と課題

CML患者は、病気の再発がないことを確認するため頻繁に経過観察する必要があり、多くの患者が、既存の治療に耐性となる変異を伴う再発への不安感を持ち続けている。しかしながら、ポナチニブおよびオマセタキシン(CMLに有効な翻訳阻害剤)が最近承認されたことから、これらの変異は将来的にはそれほど危険なものではなくなるかもしれない。

 

どのCML治療にも共通する問題は、患者が治癒したかどうか確認する手段がないことである。細胞遺伝学的完全寛解に達した患者は、より高感度の分子学的検査を受けることになるかもしれない。分子学的完全寛解は、BCR-ABL転写産物が検出されないことと定義され、医師がCML患者の治療効果を評価する際に得られる最良の結果である。しかし、分子学的検査にも検出限界があるので、それでもなおCMLが完治したかどうかを知る方法はない。「CMLの完治のためには、別の治療選択肢および残存病変を検出するよりよい検査法の開発が必要です」とCortes氏は語った。「現時点で患者に伝えられる最善は『その(白血病の)徴候はみられない』ですが、それは『治った』とは異なります」。さらに高感度の検査が開発されれば、CML患者の治癒のためには、おそらくチロシンキナーゼ阻害剤と他の治療法の併用が必要となるであろうと氏は考えている。チロシンキナーゼ阻害と併用する可能性が最も高いのは、幹細胞移植である。

 

しかしながら、さらに感度の高い検査が開発されるまで、医師は引き続きCMLを慢性疾患として治療するであろう。これは、患者の多くがイマチニブあるいは複数のチロシンキナーゼ阻害剤を、この病気が変異するにつれて順番に用いるといった標的治療を生涯にわたって受け続けることを意味する。

—  Zach Bohannan

【画像キャプション訳】
「CMLの完全治癒のためには、別の治療選択肢および残存病変を検出するよりよい検査法の開発が必要です」。

―Jorge Cortes医師

 

The information from OncoLog is provided for educational purposes only. While great care has been taken to ensure the accuracy of the information provided in OncoLog, The University of Texas MD Anderson Cancer Center and its employees cannot be held responsible for errors or any consequences arising from the use of this information. All medical information should be reviewed with a health-care provider. In addition, translation of this article into Japanese has been independently performed by the Japan Association of Medical Translation for Cancer and MD Anderson and its employees cannot be held responsible for any errors in translation.
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原文掲載日

翻訳徳井陽子

監修吉原 哲 (血液内科/コロンビア大学CCTI)

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