[ 記事 ]

カルシウムの高摂取により大腸腺腫の発生リスクが一部の患者で低減

• カルシウムの摂取と大腸腺腫の発生リスクに関する先行研究結果では矛盾が見られる。
• 2つの特異的な遺伝子の変異により上記の関連に変化が生じることが明らかになった。
• 遺伝子研究によりカルシウムの高摂取による恩恵を受ける患者を特定できる可能性がある。

 

研究者らはカルシウムの摂取と大腸癌の前癌病変である大腸腺腫の発生リスクとの関連性についての先行研究で、一貫した結果がみられないことに対する説明となりうる理由を明らかにした。4月6~10日にワシントンD.C.で開催された2013年AACR年次総会において研究データを発表した研究者によると、今回の知見は、カルシウムの高摂取もしくはカルシウム補給による利益を受ける患者を特定する上で有益となる可能性があるという。

 

これまでの先行研究によって、カルシウムの高摂取が大腸腺腫および大腸癌の発生リスクの低減と関連することが示唆されたが、米国テネシー州ナッシュビルにあるDepartment of Medicine at Vanderbilt-Ingram Cancer Center およびVanderbilt University School of Medicine in Nashvilleの疫学部門に所属する研究スタッフ、Xiangzhu Zhu博士によると、女性の健康イニシアチブ(Women’s Health Initiative)から提供された7年間の追跡データからは大腸癌との関連性を裏づけるものは見られなかったとした。

 

Zhu博士らは2段階の試験を実施し、大腸腺腫の発生リスクとカルシウムおよびマグネシウムの摂取量ならびにカルシウム/マグネシウム比との関連が、体内のカルシウムおよびマグネシウムの量の調節に関与している14の遺伝子での一般的な変異により変化するかどうか調べた。

 

Zhu博士らは、ナッシュビルにおいて行われている大腸内視鏡検査を用いた症例対照研究である、Tennessee Colorectal Polyp Studyの患者から、ポリープ群1,818人と対照群3,992人の評価を行った。このうちカルシウム摂取量の最も高い患者群において、解析の対象とした14の遺伝子のうち、腎臓でのカルシウムの再吸収に不可欠な働きをするものとして,この2段階の試験において特定され、複製されたKCNJ1およびSLC12A1の2つの遺伝子のうち、いずれか一方に変異が認められない患者については、大腸腺腫の発生リスクの低下は見られなかった。

 

Zhu博士によると、本試験の被験者全体のうち52%については、上記2つの遺伝子のうちいずれか1つについて変異保因者であり、13%については、2つの遺伝子のいずれについても変異保因者であるとした。カルシウムの摂取量が最も高い群(上位33%に位置する患者)については、上記2つの遺伝子のうちいずれか1つの変異保因者である場合、大腸腺腫の発生リスクが39%低下し、2つの遺伝子のいずれについても変異保因者である場合、大腸腺腫の発生リスクが69%低下し、有意な関連が見られた。さらに、カルシウム摂取量が最も高い群について、2つの遺伝子のいずれについても変異が認められた患者については、進行性または多発性の腺腫のリスクが89%低下した。

 

Zhu博士は、研究データに基づき、上記2つの遺伝子のうち1つの変異保因者である場合1日あたりのカルシウム摂取量が約1,000 mg未満の場合、腺腫の発生リスクが高まり、2つの遺伝子のいずれについても変異保因者である場合については特に高まる。なお腺腫については50%以上、進行性または多発性の腺腫については120%以上、発生リスクが高まるという。「上記の遺伝子に変異が認められる患者については、大腸腺腫の発生リスクを低減するためにカルシウムの摂取量を増やす必要がある」とZhu博士は述べている。

 

「われわれの研究成果は、カルシウムの摂取と大腸癌の前癌病変との関連性に関する先行研究の結果に矛盾がみられることに対し一つの可能性のある理由を明らかにするものと思われます。カルシウムは主に早期の段階において大腸癌を予防する可能性があり、さらに、カルシウムの再吸収に関与しているKCNJ1およびSLC12A1の遺伝子に変異が認められる人に限り、リスクの低減効果が得られる可能性があるからです」とZhu博士は述べる。「われわれの知見が今後の研究によって立証された場合、大腸癌の新たな個別化医療の発展にとって極めて重要なものとなります」。

 

本試験は、米国国立衛生研究所(National Center for Complementary and Alternative Medicine/Office of Dietary Supplements)の資金援助(Grant Number 5R01AT004660-04 (PI: Qi Dai))によって行われた。本プロジェクトは、バンダービルト消化器癌専門研究プログラムの一事業である、Tennessee Colorectal Polyp Studyの助成により実施された。

 

# # #

AACRについて
1907年に設立された米国癌学会(AACR)は、世界初かつ最大の専門家組織で、癌研究および癌の予防と治療という使命の推進に尽力している。AACRの会員は、90カ国以上、34,000人にのぼり、基礎研究、トランスレーショナル研究および臨床研究に関わる研究者、人口動態研究者、他の医療従事者および癌患者支援者から成る。AACRは、癌関連のあらゆる分野の専門知識を結集し、年間20以上の学会および教育ワークショップを開催して癌の予防、生物学、診断および治療における進歩を促している。最大の学会はAACR年次集会で、17,000人以上が参加する。さらにAACRはピアレビュー学術誌7誌と癌サバイバー、癌患者、および介護者向けの雑誌を発行している。AACRは、価値ある研究に対して資金を直接提供しているほか、多数の癌関連機関と連携して研究助成金を提供している。AACRは、Stand Up To Cancerの学術パートナーとして、癌患者に利益があると見込まれる個人およびチームの研究について、専門家による査読、資金の管理や授与、科学的な監視を行っている。AACRは、癌から命を守るための癌研究および関連のある生物医学の意義について、議員や政策立案者と積極的に意見交換を行っている。

 

翻訳谷口淳

監修畑啓昭(消化器外科/京都医療センター)

原文を見る

原文掲載日

【免責事項】

当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。
翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

関連記事