アブラキサンは膵臓癌患者の生存を改善する

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サンフランシスコで開催された2013年消化器癌年次シンポジウムにおいて発表された試験の結果によると、アブラキサン®(nab-paclitaxel)は、転移性膵臓癌患者の生存を化学療法による治療群に比して平均で2カ月間延長させ、2年間生存した患者の割合を大幅に増加させた。

膵臓癌は、あらゆるタイプの癌の中でも最も生存率が低いものの1つである。米国において、毎年約43,000人が新たに膵臓癌の診断を受けており、毎年約37,000人が膵臓癌により死亡している。膵臓癌は進行した病期において診断される場合が多く、このような進行膵臓癌の治療は困難なものとなっている。

ジェムザール®(ゲムシタビン塩酸塩)は、進行性膵臓癌の標準治療薬として使用されてきた。アブラキサンは、現在広く使用されている癌治療薬タキソール(パクリタキセル)の新しい剤型薬である。アブラキサンは、パクリタキセルが比較的小さなタンパク質であるヒトアルブミンに結合している。この剤型により、癌細胞に薬物が直接運ばれやすくなり、なおかつ副作用が抑えられる。

本試験は転移性膵臓癌患者861人を、アブラキサンおよびジェムザールの併用投与群とジェムザール単独投与群のいずれかに無作為に割り付けた。本試験の主要評価項目は全生存期間とした。全生存期間の中央値は、アブラキサンおよびジェムザールの併用群では8.5カ月であったのに対して、ジェムザール単独群では6.7カ月であった。

さらに、アブラキサンを投与した患者は、1年生存率が59%上昇し、治療後1年間生存している患者の割合は、アブラキサンおよびジェムザールの併用群では35%であったのに対して、ジェムザール単独群では22%であったことから、本剤は長期生存を改善したものと思われる。アブラキサンは、2年生存率を倍増させた—治療後2年間生存している患者の割合は、アブラキサンおよびジェムザールの併用群では9%であったのに対して、ジェムザール単独群では4%であった。

アブラキサンはさらに、無増悪生存期間の中央値も改善した。病勢が進行するまでの生存期間は、アブラキサンおよびジェムザール併用群では5.5カ月であったのに対して、ジェムザール単独群では3.7カ月であった。全奏効率(腫瘍の縮小がみられた患者の割合)はアブラキサンおよびジェムザール併用群では23%であったのに対して、ジェムザール単独群では7%であった。

アブラキサンは高い忍容性が認められたものの、末梢神経障害(手足の指のしびれ)の発症がみられた患者の割合が、アブラキサンおよびジェムザール併用群では17%であったのに対して、ジェムザール単独群では1%未満であり、大幅に増加した。

本試験の結果に基づき、各製薬会社は、膵臓癌の治療薬としてアブラキサンの承認を申請する計画である。

参考文献:
Von Hoff DD, Ervin TJ, Arena FP, et al. Randomized phase III study of weekly nab-paclitaxel plus gemcitabine versus gemcitabine alone in patients with metastatic adenocarcinoma of the pancreas (MPACT). Journal of Clinical Oncology. 2012; 30(suppl 34): Abstract LBA148.


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翻訳担当者 谷口 淳

監修 畑 啓昭(消化器外科/京都医療センター)

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