ASCOは米国内の癌サバイバーに対するケアの改善を求める提言を発表

報道規制が解かれたため、ASCOの声明「癌患者に対する質の高いケアの提供の実現」を発表する。報道規制の解除は当初1月7日午後4時(東部標準時)に予定されていた。

速報
連絡先:Amanda Narod

571-483-1364
amanda.narod@asco.org

声明は、米国内の癌サバイバーに対するケアの改善を目的とした連邦政府政策、医師の教育、臨床ガイドラインおよび研究の改善を提言
バージニア州、アレキサンドリアー米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、米国の1300万人以上の癌サバイバーに対するケアの質を改善するのに役立つ提言を本日発表した。ASCOは、予防、治療およびフォローアップケアの進歩によって以前より多くの人が癌を克服しているこの重要な時期に、提言を公表する。

大きな進歩がみられるものの、癌サバイバーは今もなお、病気や治療に起因するさまざまな難題に長期にわたり直面している。癌サバイバーは、他の健康問題、早逝および治療の副作用のリスク増加と向き合う。積極的な治療から治療後のケアへの移行は、良い健康状態を長期間保つうえで重要な意味を持つ。ケアの計画や調整がなされなければ、癌サバイバーは、リスク増加やフォローアップの実行計画の知識を持たないまま取り残されてしまう。

「患者の多くは、積極的な治療が終わった後も腫瘍専門医の診察を受けたいと考えています。腫瘍専門医は、一次診療従事者とともにフォローアップケアを調整するための計画を立て、主導する良い位置にいます」と米国内科学会特別会員であるASCO会長、Sandra Swain医学博士は語った。「われわれが癌において成し遂げた進歩を示す生き証人である患者たちを、放っておくことはできません。ASCOの声明は、サバイバーケア対策の穴埋めをするためのロードマップを提供しています」。
Journal of Clinical Oncology誌に本日掲載されたASCOの声明は、医療従事者、患者、研究者および議員らが優先すべき癌サバイバーケアの内容について概説している。この声明は、米国内の癌サバイバーの個々のニーズや直面する難題に対応するとともに、最高品質のケアを受けることを保証するのに役立つ枠組みを提供することを目的としている。

サバイバーケアの改善におけるASCOの重要な提言
・専門あるいは技術や知識の異なる医療従事者が協力できるようなケア分担モデルを使って、患者中心の協調的なケアを推進する

・ASCOのQuality Oncology Practice Initiative (QOPI®)のような品質向上プログラムの採用を増やし、すべてのサバイバーに対するケアを医師がチェックしたり改善したりするのに役立てる

・最良のサバイバーケアを定義するのに必要な根拠の基盤を拡大するため、長期的および遅発性の影響に関する研究を拡大する

・種々の癌における長期的なフォローアップケアの必要性を示す根拠が揃うのに合わせて、医療従事者に対するサバイバーケアに関する教育を強化する

・個々のニーズに応え、最良の健康状態を長期的に保つため、癌サバイバーとその家族に情報を提供し、支援する

「この提言は、腫瘍学専門家グループを超えて適用されます。多くの患者が一次診療従事者や他の医療従事者のもとへ戻る際には、最良のケアを保証するためにすべての医療専門家が協力することが不可欠なのです」と、ASCOのサバイバーシップ委員会(ASCO’s Survivorship Committee)議長でスローンケタリング記念がんセンターのCancer Survivorship Initiative理事長であるMary Mcabe正看護師、修士は語った。

実行:ASCOの活動および政策の提言
ASCOは、声明の提言を遂行するため下記の活動をしている:
・年次集会における勉強会の開催およびオンラインでの継続的な医学教育(continuing medical education: CME)の提供

・各サバイバーの医療従事者(腫瘍専門医、かかりつけ医など)間で共有できる治療計画の利用を含む良質なサバイバーケア手段の構築

・サバイバーがしばしば経験する長期的および遅発性の影響、および癌の再発調査に関する臨床ガイドラインの作成

・患者向けウェブサイト、Cancer.Netによる正確で読みやすい情報の普及

ASCOは、かかりつけ医および家庭医が癌サバイバーのケア改善のため腫瘍専門医とどのように協力できるかについてさらなる指針を作成するため、主治医および家庭医との提携の機会を模索している。
またASCOは、 医療保険制度改革の条項が実行される際には、癌サバイバーのニーズを優先させることを議員らに求めている。Accountable Care Organizations (ACOs)および患者中心のメディカルホームへの取り組みを盛り込んだこの法律の一部は、慢性疾患を抱える患者に対する組織的なケアを推進することを目的としているので、わが国の癌サバイバーにとって期待できるものとなっている。ASCOは、これらの条項に基づいて癌を慢性疾患に含めること、および癌患者が直面する長期的かつ多面的な健康問題を認識することを連邦議会議員に要求している。
さらにASCOは、サバイバーに特有のサービスの提供を適切に反映するためにメディケアの還付制度の改革を要求している。役務に対するケアサービスの範囲を示す請求と還付の指針がないことが、ケアの調整を実施する際の主要な障壁となっている。Comprehensive Cancer Care Improvement Actは、癌治療計画におけるメディケアの還付体制を構築し、調整された癌治療計画を作成することによって、この問題に対処できるとASCOは確信している。
米国内の癌サバイバーの数は過去最多である。現在、癌と診断されたのち5年以上生存している人の割合は、3人に2人であるが、1970年代はおよそ2人に1人であった。米国内の癌サバイバーの数は、10年後には1800万人以上になると予測されており、癌サバイバーのケアに対応できる医療制度の役割を強化することの重要性を浮き彫りにしている。

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米国臨床腫瘍学会(ASCO)について
ASCOは、癌患者のケアに携わる医師で構成される世界トップレベルの専門家組織です。会員数3万人を超えるASCOは、学会、教育プログラム、論文審査のある学術誌を通して癌治療の向上に取り組んでいます。ASCOを支援する提携組織Conquer Cancer Foundationは、癌患者の命に明らかな変化をもたらす画期的な研究やプログラムに資金を供給しています。ASCOの情報については、サイトhttp://www.asco.orgをご覧ください。 患者向け癌情報は、http://www.cancer.netで閲覧できます。

翻訳担当者 徳井陽子

監修 太田真弓 (さいとうクリニック院長/精神科、児童精神科)

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原文掲載日 

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