2012/12/11号◆特集記事「10年間のタモキシフェン療法により乳癌再発が減少し、生存期間が改善する」 | 海外がん医療情報リファレンス

2012/12/11号◆特集記事「10年間のタモキシフェン療法により乳癌再発が減少し、生存期間が改善する」

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2012/12/11号◆特集記事「10年間のタモキシフェン療法により乳癌再発が減少し、生存期間が改善する」

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NCI Cancer Bulletin2012年12月11日号(Volume 9 / Number 24)

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◇◆◇ 特集記事 ◇◆◇

10年間のタモキシフェン療法により乳癌再発が減少し、生存期間が改善する/【SABCS】

大規模国際共同臨床試験の結果によれば、一部の乳癌患者では、最初の治療後に補助療法としてタモキシフェン(ノルバデックス)を10年間服用することにより、5年間のみの服用よりも、乳癌再発、死亡の減少につながる。

このATLAS試験の結果は、サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)で発表され、12月5日付Lancet誌で公表されたが、臨床診療を変える可能性があると研究者らは述べた。

1996~2005年に、ほぼ7,000人のエストロゲン受容体陽性の早期乳癌患者がこの試験に登録した。5年間のタモキシフェン服用後、参加者は、タモキシフェンをさらに5年間継続する群と服用を中止する群のいずれかに無作為に割り付けられた。

タモキシフェン治療開始後5~9年目では、両群で結果にほとんど差がなかった。この結果は、5年間のタモキシフェン療法により、その後数年の再発と死亡リスクが大幅に低下することを示した他のタモキシフェン補助療法の試験の知見と一致する。これは、試験責任医師の一人である英国・オックスフォード大学のDr. Richard Gray氏が「持越し効果」と呼ぶものである。

タモキシフェンをより長期間服用することで結果の改善がみられるのは10年の時点を超えた場合のみであると、Gray氏はSABCSの記者会見で述べた。タモキシフェンを5年間服用した女性に比べて、10年間服用した女性では、タモキシフェン開始後10~14年目の乳癌再発リスクは25%低く、乳癌による死亡リスクはほぼ30%低かった。

全体では、タモキシフェン治療開始後5~14年目の再発リスクおよび死亡リスクは、10年間服用した人のほうが5年間服用した人よりも低かった。(表を参照)

5年間または10年間のタモキシフェンによる補助療法開始後5~14年目の乳癌再発および死亡

5 10
再発リスク 25.1% 21.4%
乳癌による死亡リスク 15.0% 12.2%

タモキシフェンには、のぼせ、疲労、血栓症や子宮内膜癌のリスク上昇などの副作用がともなう場合がある。しかし、より長くタモキシフェンを服用した人に、子宮内膜癌罹患や死亡などの重篤な副作用の大幅な増加はないとGray氏は報告した。5年間服用した人に比較した10年間服用した人の子宮内膜癌による死亡の絶対リスク上昇は0.2%であった。

どのような治療でもリスク・ベネフィット(利益)比は必ず真剣に考えなくてはならないと同氏は強調した。だが、延長タモキシフェン治療の場合、「リスクはベネフィットよりもはるかに小さいのです」と論じた。

少なくとも1件の他の延長タモキシフェン療法の試験で、ATLAS試験と反対の結論が示された。このずっと小規模な試験(患者数約1,200人)は、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP:米国乳癌・大腸癌アジュバント・プロジェクト)により1980年代初期~1990年代中期にわたって米国で実施された。この試験では、タモキシフェンによる補助療法を5年を超えて継続しても乳癌再発や死亡リスクは低下しないことが示された。

なぜこの試験で異なる結果が出たのかは不明である。しかし、ATLAS試験のほうが規模が大きく、追跡期間も長く、より信頼がおけると言う研究者らもいる。

ATLAS試験の結果は、エストロゲン受容体陽性の早期乳癌で「閉経前の女性に大きな直接的な影響」があるだろうと、記者会見の司会を担当したテキサス大学サンアントニオ校健康科学センターのDr. Peter Ravdin氏は述べた。

この患者集団は、毎年米国で乳癌と診断される女性の多数を占め、約3万~3万5千人にあたる。エストロゲン受容体陽性の早期乳癌で閉経後の女性は、タモキシフェンの後にアロマターゼ阻害剤による治療を受ける場合が多い。しかし、閉経前の女性にはアロマターゼ阻害剤は効果がないため、このような患者にはタモキシフェンが標準治療であるとRavdin氏は説明した。

「10年間(のタモキシフェン治療)は5年間よりも優れていることを臨床的証拠が示していると、私たちは今(閉経前の患者に)伝えることができます」。

しかし、タモキシフェンを延長使用する決定は決してわかりやすいものではないと同氏は強調した。

補助療法が終わったずっと後に再発するリスクが高い人、たとえば癌がリンパ節に浸潤している人や腫瘍が大きい人などは、「確実に(タモキシフェン)治療継続の有力候補者です」と同氏は述べた。しかし、どの時点でも再発リスクが低い人が「5年を超えてタモキシフェンを服用したくないと決めるのも理にかなっているでしょう」とも語った。

この知見は閉経後の女性にも影響があるだろうと、ジョージタウン・ロンバルディ総合がんセンターの乳癌プログラム共同責任者Dr. Claudine Isaacs氏は述べた。

閉経後の女性に対してアロマターゼ阻害剤による5年間の補助療法が行われることが多い。(一部の女性は、タモキシフェン服用後5年間アロマターゼ阻害剤を用いる。)しかし、かなり多くの人が副作用のためアロマターゼ阻害剤に耐えられないので、ATLAS試験の結果から、一部の臨床医とその閉経後の患者はタモキシフェンによる補助療法の期間を延長することが適切かどうかを考えることになるかもしれないと、Isaacs氏は指摘した。

アロマターゼ阻害剤を受けられる閉経後の女性に対しても、ATLAS試験の知見は別の疑問を提起すると、がんセンターロンドン の Dr. Trevor Powles氏はLancet誌の付随論説で述べた。

「5年間の(アロマターゼ阻害剤)レトロゾールによる治療が、10年間のタモキシフェン治療に比べて長期ベネフィットに関してより優れていることを示唆するデータはありませんが、10年間のタモキシフェン治療には再発と死亡の長期リスク低下という点では立証された効果があります」とPowles氏は書いている。

乳癌サバイバーであり癌患者支援者であるAnneMarie Ciccarella氏は、「Chemobrain」ブログのある投稿記事で、タモキシフェンによる補助療法の候補者である人は、閉経前か後かに関係なく、自分の選択肢について慎重に考えるよう促した。「主治医と話し合いましょう。質問しましょう。この試験があなた自身の状況にどう影響するのかを理解しましょう」と書いている。「一律の答えはないことをおぼえておきましょう」。

— Carmen Phillips

参考文献: 「さらに個別化に向かう乳癌ホルモン療法

【画像下キャプション訳】  ATLAS試験の結果が発表された2012年サンアントニオ乳癌シンポジウムには90を超える国々から7,500人以上が参加した。 [画像原文参照

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鈴木久美子 訳
上野直人(乳癌、幹細胞移植・細胞療法/MDアンダーソンがんセンター) 監修
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