高悪性度漿液性卵巣癌の3つのサブタイプが明らかに/ダナファーバー癌研究所 | 海外がん医療情報リファレンス

高悪性度漿液性卵巣癌の3つのサブタイプが明らかに/ダナファーバー癌研究所

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高悪性度漿液性卵巣癌の3つのサブタイプが明らかに/ダナファーバー癌研究所

2012年9月19日

タグ:卵巣癌

研究成果は、患者の治療反応性を示している可能性がある

 卵巣の癌で最も多いのは高悪性度漿液性卵巣癌(HGSOC)であるが、まもなく、ダナファーバー癌研究所の研究者らによる新しい研究によって、特定の種類の薬剤が有効であるHGSOC患者を特定することが可能になるかもしれない。

 研究者らは、遺伝情報のうち遺伝子単位での異常を検出できる技術を用いて、癌細胞内における特定の種類の遺伝子の損傷度合いによりHGSOC患者の腫瘍検体を3つのサブタイプに分類した。遺伝子損傷度が最も大きいサブタイプに属する患者は全HGSOC患者の1/3〜1/2を占めており、カルボプラチンなどのプラチナ製剤による化学療法に対する耐性を獲得する速度が最も遅かった。結局、これらの患者は他の2つのサブタイプの患者よりも無増悪生存期間が長かった。

 「我々の研究成果によって、高悪性度漿液性卵巣癌の中でも特定の種類の薬剤に反応する可能性が最も高い患者を特定できる、ということが初めて示唆されました。婦人科領域で最も治療が難しい癌の1つであるこの癌に対し、この研究は重要な一歩となります。」と、統括研究者の1人であるダナファーバー癌研究所のUrsula Matulonis医師は述べる。本研究はClinical Cancer Research誌の電子版に掲載されている。

 本研究のもう1人の統括研究者はダナファーバー癌研究所およびBrigham and Women’s HospitalのJ. Dirk Iglehart医師であり、代表研究者はダナファーバー癌研究所のZhigang Wang医学博士である。

 HGSOC細胞は「ゲノム不安定性」が高度で、核内には増幅または欠失した染色体や染色体断片が多数混在している。この状態が原因で生じる現象の1つに、ヘテロ接合性消失(LOH)というものがある。通常、遺伝子は正常な2つのコピーがそれぞれ1対になっているが、LOHが起こる細胞では、ある遺伝子対の一方が正常で他方が変異している。このミスマッチを起こした遺伝子対のうち正常な方の遺伝子に不活化や変異が生じた場合、細胞内に正常な遺伝子が存在しなくなってしまうため、ヘテロ接合性消失と呼ばれる。

 本研究では、研究者らは遺伝情報の内容をひとつずつ解読していく技法である一塩基多型(SNP)アレイを用いて、HGSOC組織検体中のLOHを精査した。被検検体は、LOHの存在パターンによって綺麗に3つのグループに分類された。

 このうち1つのグループは、LOH頻度の高さと第13染色体の部分欠失が特徴的だった。このグループに属する患者の診療記録を確認したところ、化学療法薬に対する耐性の獲得が遅いことが明らかになった。

 「LOH頻度が最も高いグループの患者さんは、治療後に病状が進行しない期間である無増悪生存期間が最も長かったのです。ある種の薬物治療によって最も高い治療効果が得られるのは、このグループです。」とWang医師は述べる。

 LOHが癌細胞の生存能力を阻害するため、癌細胞は損傷を受けた染色体を修復するタンパク質に生き残りを大きく依存することになる。これらの修復タンパク質を標的とした薬剤としてPARP阻害剤などが知られているが、LOH頻度の高いHGSOC細胞に著効を示す可能性があると研究報告者らは主張している。

 また、HGSOCにおけるLOHのパターンは、同様に高度な染色体不安定性を特徴とする乳癌の一種であるトリプルネガティブ乳癌(ホルモン療法・ハーセプチン®ともに無効な難治性乳癌)のものと類似していることも明らかになった。報告者らの主張によると、この発見はHGSOCの治療に有効な薬剤がトリプルネガティブ乳癌にも有効であるかもしれないという。

本研究は主にBreast Cancer Foundationの資金提供を受けた。

 Matulonis、IglehartおよびWangの他、本研究の著者は、ダナファーバー癌研究所のAedin Culhane, PhD、Aquila Fatima、Ruiyang Tian, PhD、Matthew Schwede、Kathryn Daniels、Joyce Liu, MD、Alexander Miron, PhDおよびJohn Quackenbush, PhD、ダナファーバー癌研究所およびデンマーク工科大学のNicolai Juul Birkbak, PhD、ダナファーバー癌研究所およびBrigham and Women’s HospitalのRonny Drapkin, MD, PhD、豪州メルボルン大学のKathryn Alsop、Dariush Etemadmoghadam, PhD、Gillian Mitchell, PhDおよびDavid Bowtell, PhD、Brigham and Women’s HospitalのHuiying Piao, MDおよびRoss Berkowitz, MD、ノルウェーベルゲン大学のHelga Salvesen, MD, PhDおよび豪州シドニー大学のAnna DeFazio, PhDである。

 卵巣癌の治療は、Dana-Farber/Brigham and Women’s Cancer CenterのGynecologic Cancer Treatment Centerにて実施している。

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佐々木真理 訳
喜多川 亮(産婦人科/NTT東日本関東病院) 監修
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原文

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