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進行性腎細胞癌に対する新たな治療選択肢

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進行性腎細胞癌に対する新たな治療選択肢

キャンサーコンサルタンツ

3つの第3相臨床試験の結果から、進行性腎細胞癌患者の治療選択肢に新たな光が当てられた。これらの試験は、ウィーンで開催された欧州臨床腫瘍学会ESMO 2012年次総会で発表された。

 

米国では毎年58,000人以上が腎臓癌と診断される。最も一般的なタイプの腎臓癌は、腎臓内の非常に小さな管(尿細管)の内壁から始まる腎細胞癌(RCC)である。進行性腎細胞癌(体の他の部位に転移した癌)患者にとって、分子標的療法は重要な役割を果たしている。

 

COMPARZ試験

COMPARZ 試験は、転移性RCCの初回治療として2つの分子標的薬、ボトリエント®(パゾパニブ)およびスーテント®(スニチニブ)を比較した、非盲検のランダム化第3相臨床試験である[1]。両薬剤は、癌の増殖や転移に関与する複数の生物学的経路を阻害することによって作用する、経口の分子標的薬である。スーテントが標準治療と考えられてきたが、ボトリエントは副作用がより少なく、スーテントと同等の効果がある可能性が、いくつかのデータによって示された。この試験は2つの薬剤の有効性、安全性、忍容性を直接比較することを目的に実施された。

 

前治療歴のない、淡明細胞型の転移性腎細胞癌患者、1,100人がこの試験に参加した。患者はランダムにボトリエントあるいはスーテントが割り付けられ、投与された。試験の主要評価項目は、両薬剤間の無増悪生存期間が同程度であるかどうかを検証することだった。副次的評価項目は、安全性と生活の質であった。

 

試験の結果から、2つの薬剤には同等の効果があることがわかった。無増悪生存期間中央値は、両薬剤とも10カ月をわずかに上回った。双方の薬剤に副作用が見られたが、ボトリエントを投与された患者では、疲労および手足皮膚症候群という、煩わしく生活の質に影響を与える副作用の発現が少なかった。生活の質に関する質問表において、スーテントよりもボトリエントが支持され、ボトリエントの方がより忍容性のある薬剤であることが示された。

 

この試験結果はボトリエントがスーテントに劣っておらず、転移性RCCの初回治療に第2の選択肢をもたらした点で重要である。

 

INTORSECT試験

INTORSECT試験は、スーテント治療が奏効しなかった転移性RCC患者において、トーリセル®(テムシロリムス)とネクサバール®(ソラフェニブ)の有効性と安全性を比較した、非盲検の多施設共同ランダム化第3相臨床試験である。[2]

 

両薬剤は分子標的薬だが、異なる増殖因子を阻害する。トーリセルは細胞の成長や増殖を制御するmTOR(mammalian target of rapamycin kinase)を標的にするが、ネクサバールはVEGF(vascular endothelial growth factor)受容体など、複数のチロシンキナーゼを阻害する。

 

INTORSECT試験は、この設定の下でVEGF阻害剤とmTOR阻害剤を直接比較した初めての第3相臨床試験であり、試験結果は転移性RCCの治療に大きな影響をもつ。

 

この試験には、スーテントによる初回治療の後に増悪し、全身状態がECOGの0あるいは1のRCC患者、511人が参加した。この試験結果から、トーリセルがネクサバールより優れてはいないことが示された。無増悪生存期間中央値は、ネクサバールが3.91カ月だったのに対し、トーリセルは4.28カ月だった。全生存期間中央値は、ネクサバールが16.64カ月だったのに対し、トーリセルは12.27カ月だった。

 

研究者らは、2次治療においてトーリセルはネクサバールより生存率を改善しないと結論づけ、スーテント治療後に増悪した患者にとって、mTOR阻害剤よりもVEGF阻害剤の方がよりよい選択肢である可能性を示唆した。

 

INTORACT試験

INTORACT試験は、淡明細胞型の転移性腎細胞癌患者を主とする791人において、初回治療としてトーリセルとアバスチン®(ベバシズマブ)の併用療法とインターフェロンとアバスチンの併用療法を比較した、非盲検の多施設共同ランダム化第3b相臨床試験である。[3]

 

アバスチンがVEGF経路を阻害する分子標的療法であるのに対し、トーリセルはmTOR経路を阻害する。早期の結果では、トーリセルとアバスチンの併用療法がインターフェロンとアバスチンの併用療法よりも優れているように見えたが、最終的な結果では、それは認められなかった。

 

無増悪生存期間中央値は、トーリセルグループは9.1カ月だったのに対し、インターフェロングループが9.3カ月だった。全生存期間中央値は、トーリセルグループが25.8カ月で、インターフェロングループは25.5カ月だった。

 

研究者らは、淡明細胞型の転移性RCC患者の初回治療において、トーリセルとアバスチンの併用療法がインターフェロンとアバスチンの併用療法より優れてはいない、と結論づけている。

 

参考文献:

[1] Motzer RJ, Hutson TE, Reeves J, et al. Randomized, open label, phase III trial of pazopanib versus sunitinib in first-line treatment of patients with metastatic renal cell carcinoma (mRCC); Results of the COMPARZ trial. Presented at the 37th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Vienna, Austria, September 28-October 2, 2012. Abstract LBA8.
[2] Hutson T, Escudier B, Esteban E, et al. Temsirolimus vs Sorafenib as Second Line Therapy in Metastatic Renal Cell Carcinoma: Results From the INTORSECT Trial. Presented at the 37th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Vienna, Austria, September 28-October 2, 2012. Abstract LBA22.
[3] Rini BI, Bellmunt J, Clancy J, et al. Randomized Phase IIIb Trial of Temsirolimus and Bevacizumab versus Interferon and Bevacizumab in Metastatic Renal Cell Carcinoma: Results from INTORACT. Presented at the 37th Congress of the European Society for Medical Oncology (ESMO), Vienna, Austria, September 28-October 2, 2012. Abstract LBA21.

 


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原文掲載日

翻訳井上陽子

監修須藤智久(薬学/国立がん研究センター東病院 臨床開発センター)

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