癌治療に伴うリンパ浮腫の発現率に関する評価試験

キャンサーコンサルタンツ

黒色腫、頭頸部癌、泌尿生殖器癌、婦人科癌、肉腫の治療について評価した47試験を対象に、体系的なレビューを実施した結果、治療に伴いリンパ浮腫が副作用として頻繁に認められることが示された。このレビュー結果は最近Cancer誌に掲載された。[1]

リンパ浮腫は皮下組織にリンパ液が蓄積し、患部の肢体に腫脹、圧迫感および不快感を生じる。リンパ管の損傷や閉塞がリンパ浮腫の原因となり、癌患者の場合、通常手術や放射線療法が原因でリンパ管損傷が生じる。リンパ浮腫に対する単一療法はなく、患部の圧迫療法、特殊なマッサージによるリンパドレナージ施行、および特殊な運動療法など、ステップを踏んだ症状管理となる。癌の診断や早期乳癌治療に伴うリンパ浮腫の発現については十分に解明されているが、その他の癌における副作用としてのリンパ浮腫の発現についてはあまり解明されていない。研究者等により、乳癌を除く各癌におけるリンパ浮腫の発現率とリスク要因を確認する試験が最近実施された。

この試験では、1972年から2008年の間に実施された臨床試験47試験の成績について体系的なレビューを実施した。対象となった臨床試験では、黒色腫、婦人科癌、泌尿生殖器癌、頭頸部癌、並びに肉腫の治療後におけるリンパ浮腫の評価データを得た。対象となった試験におけるリンパ浮腫の全体的な発現率は15.5%であった。骨盤リンパ節郭清を受けた患者の22%にリンパ浮腫が認められた(表1参照)。また、対象試験において放射線療法を受けた患者の31%にリンパ浮腫が認められたと報告がある。対象試験の成績から、追跡調査の長さとリンパ浮腫の発現率上昇との関連があると判断された。興味深いことに、リンパ浮腫を客観的に評価する設計を取り入れた試験では、副作用としてのリンパ浮腫の高い発現率が報告されている。

表1: 各癌種に対するリンパ浮腫の発現率および対象試験数

癌種対象試験数リンパ浮腫発現率
黒色腫1516%(上肢では5%、下肢では28%)
婦人科癌2220%
泌尿生殖器癌810%
頭頸部癌14%
肉腫130%

この試験の研究者らは、癌治療が原因となるリンパ浮腫の発現率は、癌の種類や治療の程度など多様な要因に関係していると結論付けた。さらに、報告された発現率は追跡期間の長さ、ならびにリンパ浮腫の評価方法の因子の一つである。 癌治療で放射線療法またはリンパ節郭清を受けた患者は、リンパ浮腫の発現リスク、ならびに予防や管理方法について予防担当医療関係者に確認すること。

参考文献:
[1] Cormier JN, Askew RL, Mungovan KS, Xing Y, Ross MI, Armer JM. Lymphedema beyond breast cancer: A systematic review and meta-analysis of cancer-related secondary lymphedema. Cancer. [Early online publication]. July 27, 2010.

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翻訳担当者 菅原宣志

監修 辻村信一 (獣医学/農学博士、メディカルライター)

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