経口ビスフォスフォネート剤が食道癌発症率を上昇させる可能性を示した新しい分析

キャンサーコンサルタンツ

イギリスのUK General Practice Research Databaseを新たに分析した結果、経口ビスフォスフォネート剤(骨粗鬆症の予防または治療のために使用される薬剤)が食道癌発症のリスクを上昇させる可能性が示された。British Medical Journal誌に発表されたこの調査結果は、同じデータベースを使用した先回の調査と異なっている。

骨粗鬆症の特徴は骨密度の減少や骨構造を劣化である。アメリカでは50歳以上で1000万人の患者が存在し、毎年約150万人が骨粗鬆症を原因とした骨折を経験している。これらの骨折は手首、股関節部、背骨に起こることが多いが、体のどの部位にも起こりうる。

ビスフォスフォネート剤は、骨粗鬆症の予防または治療のために一般的に使用される薬剤であり、経口投与した場合、食道炎を起こす患者もいる。経口ビスフォスフォネート剤にはフォサマックス(アレンドロネート)、アクトネル(リセドロネート)、ボニーバ(イバンドロネート)などがある。

胃食道逆流症(GERD)によって起こる食道炎は、食道癌の発症率を上昇させることが知られている。しかしビスフォスフォネート剤による炎症が発症率に影響するかは確認されていない。

Journal of the American Medical Association誌に2010年8月に発表された記事によると、経口ビスフォスネート剤は食道癌の発症リスクを有意に上昇させないと結論づけた。[1]この調査はUK General practice Research Databaseをもとに実施された。

今回の2番目の研究もこのデータベースを使用し、経口ビスフォスネート剤と食道癌の発症リスクの関連性を調べた。この最近の調査は異なった研究デザインを用いて、長期の追跡調査を行った。(今回の調査の平均追跡期間は7.7年、前回は4.5年)[2]

研究者らは、食道癌の情報だけでなく、胃癌と大腸癌の情報も収集した。これによって、ビスフォスフォネート剤は食道癌のリスクを上昇させるが、他の消化器癌のリスクには影響しないという予測の検証が可能になった。

今回の調査は、40歳以上の男女を対象とし、2,954人の食道癌患者、2,018人の胃癌患者、10,641人の大腸癌患者の情報を利用した。非癌患者の情報も多数収集された。

•ビスフォスフォネート剤を服用していない人に比べ、1回以上の処方を受けた人は、食道癌の発症率が30%以上上昇した。処方が10回以上のビスフォスフォネート剤服用者は食道癌の発症リスクが2倍近く上昇した。
•経口ビスフォスフォネート剤の胃癌および大腸癌の発症率への影響は見られなかった。

食道癌の発症率が2倍に上昇することを具体的にみると、60歳から79歳の人の食道癌発症率は、ビスフォスフォネート服用しない者では5年間に1,000人あたり約1例、ビスフォスフォネート服用者では5年間で1,000人あたり約2例である。

研究者らは、今回の調査結果は他の研究により裏付けられる必要があると指摘した。それまでは、「医師は患者に嚥下困難や喉、胸部、消化器官に不快を感じる時は報告するように伝え、即座に診断できるようにすべきである」と付随の論説で述べられている。

参考文献:

[1] Cardwell CR, Abnet CC, Cantwell MM, Murray LJ. Esposure to oral bisphosphonates and risk of esophageal cancer. Journal of the American Medical Association. 2010;304:657-663.

[2] Green J, Czanner G, Reeves G et al. Oral bisphosphonates and risk of cancer of oesphagus, stomach, and colorectum: case-control analysis within a UK primary care cohort. British Medical Journal [early online publication]. September 2, 2010.


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翻訳担当者 芝原広子

監修 野長瀬祥兼(工学/医学)

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