非小細胞肺癌ステージIIIB期の生存率がL-BLP25ワクチンで改善する可能性

キャンサーコンサルタンツ
2005年9月

カナダと英国からの研究者らは、L-BLP25ワクチンを投与してMUC1蛋白に対するワクチン化をすることで、非小細胞肺癌(NSCLC)のステージIIIB期にある患者の生存率が改善したことを報告した。この無作為第IIB相試験の結果は、2005年9月20日号の科学誌「Journal of Clinical Oncology」に掲載された。

癌患者に対するワクチン療法は、これまで期待はずれであり、充実性腫瘍を持つ患者に対し承認されたワクチンは存在しなかった。糖蛋白ワクチンの一つであるL-BLP25は、リポペプチドを生成する25のアミノ酸から構成される。このワクチンは、NSCLC内部に過剰発現しまた異常糖化したMUC1に対して作用する。ワクチンは、脂質補助剤と共に投与される。

この試験では、ファーストライン療法後に奏効または病態が安定したNSCLCステージIIIB期またはステージIV期の171例が、ワクチン投与または支持療法(best supportive care 、BSC)に無作為に割付された。この試験の観察期間の中央値は、26ヵ月であった。21%でワクチンに対する免疫反応が認められたが、これは生存予測とはならなかった。ワクチンは、発疹やインフルエンザ様症状が認められたのを除いて良好な耐用性を示した。表1は、この臨床試験の主要な知見を要約したものである。

表1:NSCLCステージIIIB期とステージIV期におけるワクチン投与有群vsワクチン投与無群

ワクチン投与有ワクチン投与無P value
症例数8883
NSCLCステージIIIB期35例30例
NSCLC IIIB MPE期
またはステージIV期
53例53例
生存率中央値17.4ヶ月13.0ヶ月P=0.066
調整後2年生存率43.2%28.9%P=0.112
NSCLCステージIIIB LR期
2年生存率
60%36.7%P=0.069
NSCLCステージIIIB LR期
生存中央値
中央値に到達せず13.4ヶ月P=0.069

略語:MPE(malignant pleural effusion、悪性胸水)、LR(loco-regional、局所)

この試験は、ステージIIIB期にある患者に対する生存率改善の可能性を示したが、ステージIV期の病態に対しては可能性を示せなかった。また、ワクチン投与有のグループにおける患者ではより良い生活の質が得られたことが報告された。

コメント

この試験は、維持療法として治療効果のある可能性を示す数少ないワクチン試験である。このデータは、NSCLCステージIII期にある患者における大規模第III相試験で確認される必要がある。ワクチン投与試験の対象として興味のあるもう一つのグループは、残った病変は少ないが再発の可能性が高いNSCLCステージI期とII期にある患者である。

出典

Butts CA, Marshall E, Murray NR, et al. Randomized phase IIB trial of BLP25 liposome vaccine in stage IIIB and IV non-small cell lung cancer. Journal of Clinical Oncology. 2005;23:6674-6681.

関連ニュース
Survival of Stage IIIB NSCLC Improved with L-BLP25 Vaccine (11/17/2004)


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翻訳担当者 ウルフ

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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