ハーセプチンとアリミデックスの併用療法は、HER2陽性、ホルモン依存性進行乳癌の無増悪生存期間を延長

キャンサーコンサルタンツ
2006年12月

最近開催された2006年のサンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)の結果によると、ハーセプチン(トラスツズマブ)アリミデックス(アナストロゾール)の併用療法は、HER2陽性でホルモン依存性の乳癌患者の無増悪生存期間を、アリミデックス単独療法の時より延長させた。しかし、これらの薬剤を別々に続けて投与する治療(sequential)が、同時投与(concurrent)と比べて治療成績を改善するかどうかは依然として疑問である。

今までの試験で、HER2陽性の乳癌患者の約45%-50%は、エストロゲン受容体も陽性であることが示されている。そのため研究者らは、このグループの患者には、両方の生物学的経路の薬剤であるハーセプチンアリミデックスを併用した方が、単独の薬剤に比べて、治療結果を改善させるであろうと推測した。

世界中のいくつかの施設の研究者らは、TANDEM試験と呼ばれる、HER2陽性、ホルモン依存性の転移性乳癌患者に対して、ハーセプチンアリミデックスを加えた治療とアリミデックス単独治療を直接比較する第三相臨床試験を行った。研究者らにより、207人の閉経後女性を、A+H群(アリミデックス1mg/日に加えて、ハーセプチン4mg/kgを初日にそしてその後は毎週2mg/kg)、あるいは、A群(アリミデックス1mg/日)に無作為に割り付ける試験が行われた。最初はA群に割り付けられた患者であっても、病気が進行した場合には、A+H群に切り替えることが許された。

・最初A群に割り付けられた患者の70%がA+H群に切り替わった。
・A+H群の全奏功率は20.3%であり、A群では僅か6.8%であった。
・無増悪生存期間と無進行期間はA+H群では両方とも4.8ヶ月であるのに対して、A群では2.4ヶ月であった(p<0.05)。
・A+Hによる治療を受けた患者の全生存期間は28.5ヶ月であるのに対して、A単独治療の患者は23.9ヶ月であった。
・肝転移を除く患者の全生存期間の中央値は、A+H群の患者では41.9ヶ月であるのに対して、A群では32.1ヶ月であった(p=0.0399)。
・A+Hの併用治療を受けた患者の15%以上においては、少なくとも2年間癌の進行が無かった。
・A+Hの治療を受けた患者は、A単独治療の患者に比べて心臓への副作用が大きかったが、しかしながら、A+H群のわずか1人の患者に心不全の兆候が認められだけであった。

研究者たちは、アリミデックスハーセプチンを加えることで、HER2陽性でホルモン陽性の転移性乳癌患者の無増悪生存期間が2倍になり、癌の無進行時間と全生存時間を改善させると結論付けた。しかしながら、この患者集団における臨床効果を正確に究明するためには、これらの薬剤を別々に続けて投与する治療と同時アプローチを比較する必要がある。

参考文献:

Mackey J, Kaufman B, Clemens M, et al. Trastuzumab Prolongs Progression-Free Survival in Hormone-Dependent and HER2-Positive Metastatic Breast Cancer. Proceedings from the 2006 annual San Antonio Breast Cancer Symposium. December 2006. Abstract #3.(2006年のサンアントニオ乳癌シンポジウムからの議事録 2006年12月抄録#3)


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 Nogawa

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

乳がんに関連する記事

HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望の画像

HER2陰性進行乳がんにエンチノスタット+免疫療法薬が有望

ジョンズホプキンス大学ジョンズホプキンス大学キンメルがんセンターの研究者らによる新たな研究によると、新規の3剤併用療法がHER2陰性進行乳がん患者において顕著な奏効を示した。この治療で...
英国、BRCA陽性の進行乳がんに初の標的薬タラゾパリブの画像

英国、BRCA陽性の進行乳がんに初の標的薬タラゾパリブ

キャンサーリサーチUKタラゾパリブ(販売名:ターゼナ(Talzenna))が、英国国立医療技術評価機構(NICE)による推奨を受け、国民保健サービス(NHS)がBRCA遺伝子変異による...
乳がん術後3年以降にマンモグラフィの頻度を減らせる可能性の画像

乳がん術後3年以降にマンモグラフィの頻度を減らせる可能性

米国がん学会(AACR)  サンアントニオ乳癌シンポジウム(SABCS)50歳以上で、初期乳がんの根治手術から3年経過後マンモグラフィを受ける頻度を段階的に減らした女性が、毎年マンモグ...
早期乳がんにリボシクリブとホルモン療法の併用は転帰を改善:SABCSの画像

早期乳がんにリボシクリブとホルモン療法の併用は転帰を改善:SABCS

MDアンダーソンがんセンターアブストラクト:GA03-03

Ribociclib[リボシクリブ](販売名:Kisqali[キスカリ])とホルモン療法の併用による標的治療は、再発リスクのあ...