ジェムザールにタルセバを追加することで膵臓癌患者の生存率が改善

キャンサーコンサルタンツ
2007年5月

国際ランダム化試験において、ジェムザール(ゲムシタビン)にタルセバ(エルロチニブ)を加えることで、進行膵臓癌患者の生存率が改善することが立証された。この研究の詳細は2007年4月26日のJournal of Clinical Oncologyオンライン版にて発表された。

米国において、膵臓癌は癌関連死の4番目を占めている。今まで、切除不能な膵臓癌に対しては、ジェムザールとの併用療法が予後を有意に改善することがなかったため、典型的にジェムザール単剤が使用されてきた。残念なことに、進行膵臓癌の長期全生存率は芳しいものではない。大部分の膵臓癌では、上皮増殖因子受容体(EGFR)が過剰発現しているので、経口EGFRチロシンキナーゼ阻害薬であるタルセバによる治療は、膵臓癌に対する効果的な治療アプローチとなる可能性がある。現在タルセバは、進行、治療抵抗性の非小細胞肺癌(NSCLC)に単剤使用される薬品として承認されている。

カナダ国立癌研究所の臨床試験グループ(NCIC-CTG)の研究者らは、膵臓癌治療におけるタルセバの有効性を評価する目的で、第3相ランダム化試験を行った。この試験では、過去に全身化学療法を受けていない(放射線療法を併用した化学療法を除く)569人の切除不能な膵臓癌患者を対象とした。EGFRの過剰発現は登録の際の必須条件とはしなかった。患者らはジェムザール(1000mg/m2を週1回の静脈注射によって、8週間のうちに7回投与、その後週1回の投与を4週間で3回実施)とタルセバ(100mg連日内服)の投与を受ける群と、もしくはジェムザールとプラセボの群とに二重盲検方式で無作為に割り付けられた。はじめの段階ではタルセバの投与量は100mg連日(n=521)であったが、認容性が非常によかったために、後から登録された患者(n=48)では投与量を150mg連日内服へ増量した。

・一年後、タルセバ・ジェムザールで治療を受けた患者の生存率が23%であったのに対し、ジェムザール単剤では17%であった。
・タルセバ・ジェムザールで治療を受けた患者では、ジェムザール単剤の治療を受けた患者よりも病変の安定割合が多かった。
・タルセバ・ジェムザールで治療を受けた患者の方が副作用の頻度が多かったが、そのほとんどが軽度のものだった。

研究者らは、進行膵臓癌患者では、ジェムザール単剤よりジェムザールにタルセバを追加した方が生存率を向上させると結論づけた。著者らは「われわれが理解している範囲では、このランダム化3相試験は、ゲムシタビンに他剤を追加することで進行膵臓癌の生存率を統計学的に有意に改善させた初めての研究である。」と、述べている。

コメント: 

これらのデータはすでに学会等で発表されており、本論文はこの研究の詳細を記した最終報告である。

参考文献
Moore M, Goldstein D, Hamm J, et al. Erlotinib plus gemcitabine compared with gemcitabine alone in patients with advanced pancreatic cancer: a Phase III trial of the National Cancer Institute of Canada Clinical Trials Group. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. April 23, 2007. DOI: 10.1200/JCO.2006.07.9525.


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 根本 明日香

監修 島村 義樹(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

膵臓がんに関連する記事

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
定位放射線療法(SBRT)と増感剤スーパーオキシドの併用は膵臓がんの治療成績を改善の画像

定位放射線療法(SBRT)と増感剤スーパーオキシドの併用は膵臓がんの治療成績を改善

MDアンダーソンがんセンター高線量の体幹部定位放射線療法に対する腫瘍の放射線感受性を高める局所進行膵臓がんにおいて、増感剤と特定の放射線療法との併用がより効果的で、より高い無増...
膵がん患者の不安治療にロラゼパム投与は転帰の悪化に関連か ーアルプラゾラムは有効の画像

膵がん患者の不安治療にロラゼパム投与は転帰の悪化に関連か ーアルプラゾラムは有効

米国がん学会(AACR)がん治療中の不安に対して一般的に処方されるベンゾジアゼピン系薬剤であるロラゼパム(販売名:ワイパックス)を使用した膵がん患者は、使用しなかった患者よりも無増悪生...
膵がんワクチンにニボルマブとウレルマブを併用で膵がんの免疫系反応が促進の画像

膵がんワクチンにニボルマブとウレルマブを併用で膵がんの免疫系反応が促進

ジョンズホプキンス大学外科手術可能な膵がん患者に膵がんワクチンのGVAX、免疫チェックポイント治療薬のニボルマブ(販売名:オプジーボ)、抗CD137アゴニスト抗体治療薬のウレルマブ(u...