多発性骨髄腫に対するレブリミド(レナリドマイド)併用の高用量デキサメタゾンは低用量に比べ死亡率が増加

キャンサーコンサルタンツ
2008年1月

Eastern Cooperative Group臨床試験共同グループ(研究E4A03)に参加している研究者らは、多発性骨髄腫の初期治療としてレブリミド®(レナリドマイド)と高用量デキサメタゾンを併用した場合、レブリミドと低用量デキサメタゾンの組み合わせに比べ死亡率が高くなると報告した。本研究はランダム化臨床試験で、詳細は2007年12月にジョージア州アトランタで開催の米国血液学会で発表された。

レブリミドはサリドマイド誘導体の経口薬で、難治性の多発性骨髄腫の治療に効果が高い。レブリミドはサリドマイドより毒性が弱く、かつ骨髄腫に対する効果はそのままであると報告されている。現在、レブリミドは多発性骨髄腫患者の初期治療薬として評価されている。

研究E4A03は、新しく多発性骨髄腫と診断された患者445名を対象に、レブリミドと高用量または低用量のデキサメタゾンを併用したランダム化臨床試験である。高用量デキサメタゾン群のレジメンは、各サイクルとも多発性骨髄腫患者の治療における『標準』量とした(1-4日、9-12日、17-20日に各40mg投与)。本研究における低用量デキサメタゾン群は、1日、8日、15日、22日に各40mg投与とした。本研究はすべての年齢の患者を対象とし、中央値は66歳であった(35~87歳)。治療4サイクル後に部分寛解、完全寛解またはほぼ完全寛解が得られた患者は幹細胞移植に適応とした。部分寛解に達しなかった患者にはサロミド(サリドマイド)+デキサメタゾンによる治療を実施した。高用量デキサメタゾン群では低用量群に比べ深部静脈血栓症(DVT)、肺塞栓、感染症が多く発生するなど毒性が強かった。本試験の主な知見は次表のとおり。

 

レブリミド+高用量デキサメタゾン

レブリミド+低用量デキサメタゾン
患者数
223
222
寛解率
82%
71%
完全寛解率
4%
2%
VGPR(非常によい
部分寛解)以上
52%
42%
深部静脈血栓症
25%
9%
2年後生存率
75%
87%
死亡数
46
25
進行による死亡数
26
17
血栓症による死亡数
5
1
感染症による死亡数
4
3
心臓疾患による死亡数
6
2
脳卒中による死亡数
1
1
呼吸器不全による死亡数
1
0
二次的な癌による死亡数
1
0
不明
2
1

高用量のデキサメタゾンは低用量に比べ消耗性が強く副作用も多いため、患者がサルベージ療法に耐えられない可能性が高くなる、と著者らは結論づけている。また、デキサメタゾンを低用量で用いれば高用量に比べ寛解期間が長くなると示唆している。

コメント: 

多発性骨髄腫の治療には通常高用量のデキサメタゾンが用いられるが、実際には低用量が優れているかもしれないというデータは興味深い。

参考文献

Rahjynar SV, Jacobus S, Callancer N, et al. A randomized trial of linalidomide plus high-dose dexamethasone (RD) versus lenalidomide plus low-dose dexamethasone (Rd) in newly diagnosed multiple myeloma (E4A03). Blood. 2007;110:31a. Abstract 74.

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翻訳担当者 橋本 仁

監修 林 正樹(血液・線腫瘍医)

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