術後の抗生物質療法が胃癌の異時性再発を減少

キャンサーコンサルタンツ
2008年8月

日本の研究者らは胃癌の患者で抗生物質の治療が異時性の再発率を低下させることを報告した。このランダム化試験の詳細は2008年8月発行のLancet Oncology誌に掲載された。[1]

胃癌の患者数は米国で着実に減少しているが、アジアではいまだに主要な死因となる癌で、日本では癌による死亡の18%を占める。世界的には胃癌は癌による死因の第2位である。いくつかの危険因子が胃癌の発現リスク増加に関係している。

それらは以下の因子である。

● ヘリコバクターピロリ菌の感染
● 喫煙
● 硝酸塩の多い食事
● ビタミンA、Cの少ない食事
● 燻製食品の摂取
● 質の悪い飲料水
● 冷蔵庫の不足

ピロリ菌の感染の根絶が胃癌発症のリスクを減少するかもしれないと多くの試験によって示唆された。欧米では胃非噴門部腺癌の半数以上は喫煙、胃潰瘍、硝酸塩の過剰摂取、またはピロリ菌が原因ではないかと考えられている。アジアでは胃癌の原因としてピロリ菌の割合はより高いかもしれない。ピロリ菌の根絶が胃癌の発症率を減少できるかもしれないことが提唱されている。欧米では、この菌に感染した患者は日常的に治療されている。中国の研究者らはピロリ菌の根絶によって大部分の人が胃癌のリスクを減少するが、前癌病変は減少しないと報告した。

今回の試験は、胃癌の切除手術を受けた患者で、ピロリ菌を根絶するようにデザインされた術後抗生物質療法の効果に着目した。この試験は内視鏡で治療された早期胃癌患者544人を対象とした。患者らはアモキシリンとクラリスロマイシンを1週間投与されるようにランダムに割り付けられた。3年間のフォローアップ後に、胃癌の異時性発症は抗生物質投与群では9人で、対照群では24人であった。これは抗生物質の使用によって2次原発胃癌のリスクが70%減少したことを示した。

コメント:
この試験は早期胃癌の治療を受けた患者でヘリコバクターピロリ菌の根絶と2次原発胃癌の発症率を減少することに関する抗生物質の有効性を確認した。

参考文献:
[1]Fukase K, Kato M, Kikuchi S, et al. Effect of eradication of Helicobacter pylori on incidence of metachronous gastric carcinoma after endoscopic resection of early gastric cancer: an open label, randomized controlled trial. Lancet Oncology. 2008;372:392-397.


 c1998- 2008CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 内村美里人

監修 林正樹(血液・腫瘍科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

胃がんに関連する記事

二重特異性免疫チェックポイント阻害薬カドニリマブはPD-L1発現に関係なく胃がん生存率を改善の画像

二重特異性免疫チェックポイント阻害薬カドニリマブはPD-L1発現に関係なく胃がん生存率を改善

PD-1/CTLA-4二重特異性抗体cadonilimab(カドニリマブ)と化学療法の併用は、PD-L1低値腫瘍患者を含む、未治療のHER2陰性局所進行または転移性胃/胃食道接合部がん...
意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果の画像

意図せぬ体重減少はがんの兆候か、受診すべきとの研究結果

ダナファーバーがん研究所意図せぬ体重減少は、その後1年以内にがんと診断されるリスクの増加と関連するという研究結果が、ダナファーバーがん研究所により発表された。

「運動習慣の改善や食事制限...
進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法の画像

進行胃/胃食道接合部腺がんにフルキンチニブ+パクリタキセル併用療法

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「FRUTIGA試験において、fruquintinib[フルキンチニブ]とパクリタキセルの併用は、進行した胃/胃食道接合部腺がん...
胃がんの遺伝的リスクがある人の予防的胃切除術の影響は長期に及ぶの画像

胃がんの遺伝的リスクがある人の予防的胃切除術の影響は長期に及ぶ

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログある若い女性にとって、その診断を受けたことで「悲しみ、不安、恐怖 」がつきまとった。別の一人は、「毎日(そのことを)考えたわけではないと言え...