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心理的介入が乳癌の生存期間を延長

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心理的介入が乳癌の生存期間を延長

キャンサーコンサルタンツ
2008年11月

米国オハイオ州立大学の研究者らは、治療期間中に心理的介入を受ける乳癌患者において、全生存期間が改善するのみならず、癌再発リスクが低減すると報告した。本研究の詳細は、2008年11月17日号のCancer誌電子版で報告された。[1]

 

癌の診断を受けたことによるストレスは、身体的な衰弱を引き起こす可能性がある。患者は死に直面する恐怖と向き合わなくてはならないばかりか、治療費など金銭的な問題、副作用を乗り越えるという課題、治療と仕事の両立や家族とのバランスなど、その他たくさんのストレス因子に対応していかなくてはならない。現にある研究では、乳癌の診断を受けた女性の47%が著しい心理的苦痛または精神障害に相当する判定基準を満たしていたと示した。[2] (また一方で、ストレスが原因で乳癌発症率が低下しうると示唆した報告も数件あることに留意すべきである。)

 

癌の病因にストレスが関与しているのかは十分に理解されていない。これはストレスの程度を測定するのが困難という事実に起因する部分もある。その反面、ストレスは種々のホルモン要因に影響を及ぼす可能性があることや、乳癌のようなホルモン依存癌の要因となりえることで知られている。これまでの研究で、診断後5年間に極度にストレスの多い生活を1回以上経験した乳癌女性は再発リスクが低いことが認められた。ストレスの多い生活経験をした女性の相対リスクはストレス症状のなかった女性の約半分であった。この知見は、統計学的に有意であった (p=0.03)。[3] デンマークの研究者らは、自己報告されたストレスの程度が高いと、乳癌発症率が40%低下することを示した。[4]本試験に関与した研究者らは、反応を段階的に低・中等・高ストレスとした。低ストレスの女性と比較して、乳癌発症率は中等ストレス女性で20%低く、高ストレス女性では40%低いことが認められた。

 

しかしながら、慢性ストレスは免疫系を抑制することでも知られており、一部の研究者はストレスの延長が癌の進行や転帰にマイナスの影響を与えうると推測した。オハイオ州立大学の研究者らは、ストレス対処に有用な心理的介入を受けた乳癌患者を対象に、こういったサポートを受けなかった患者と比べ、生存期間の優位な延長が認められるか否か判定するための試験を実施した。

 

本試験には、局所乳癌の外科的治療を受けたことのある女性227人が含まれた。術後補助療法を開始する前に心理診断および行動評価を行った。患者の約半数は心理的介入を受けるよう割り当てられたのに対し、残る半数にはそれ以降の評価は行なわなかった。心理的介入は、心理士2名の主導のもと少人数群で週1セッションを4か月間行う強化期間と、それに続けて維持管理期間として月1セッションを8か月間行なうこととした。患者は、12か月間にわたって計26セッション(39時間治療)に参加した。このセッションには、ストレスの軽減、気分の好転、保健行動の見直しなどを試みる方法や、癌の治療と処置を遵守し続けるための方法が含まれた。

 

11年間の追跡調査後、女性62人で癌再発が認められ(介入群29人、評価のみ群33例人)、女性54人で死亡が認められた(介入群24人、評価のみ群30人)。介入群のほうが癌再発までの平均期間が長く(介入群約3年、評価のみ群約2年)、平均生存期間も長かった(介入群約6年、評価のみ群約5年)。この結果から、心理的介入を受けた女性は再発リスクおよび乳癌死亡リスクが有意に低いことが示された。研究者らは、適切な心理的介入を行うことで乳癌女性の生存期間が改善する見込みがあると結論づけた。

 

コメント:

本試験結果に基づくと、心理的サポートや介入を受けた乳癌患者は、独自で行動する患者より、結果がよいという印象がみられる。他の試験でも癌を有する既婚者は、未婚者より結果がよいと示されてきた。どのような作用機序によって心理的サポートを受ける乳癌患者の死亡リスク減少に影響を及ぼしているのかをこの知見から結論づけるのは困難である。これはストレスの測定法が非常に主観的なものであるため、依然として研究の不明瞭な分野となるであろう。

 

参考文献:
[1] Andersen BL, Yan HC, Farrar WB, et al. Psychologic intervention improves survival for breast cancer patients. Cancer [early online publication]. November 17, 2008.
[2] Hegel MT, Moore CP, Collins ED et al. Distress, Psychiatric syndromes, and impairment of function in women with newly diagnosed breast cancer. Cancer. 2006;107:2924-2931.
[3] Graham J, Ramirez A, Love S, et al. Stressful life experiences and risk of relapse of breast cancer: observational cohort study. British Medical Journal. 2002;324:1420.
[4] Mielsen NR, Zhang Z-F, Kristensen TS, et al. Self reported stress and risk of breast cancer: prospective cohort study. British Medical Journal. 2005;541-545.

 


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翻訳遠藤香利

監修林 正樹(血液・腫瘍科)

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