米国臨床腫瘍学会(ASCO)が癌の終末期医療に関する医師・患者間のコミュニケーション改善手段を提案 | 海外がん医療情報リファレンス

米国臨床腫瘍学会(ASCO)が癌の終末期医療に関する医師・患者間のコミュニケーション改善手段を提案

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米国臨床腫瘍学会(ASCO)が癌の終末期医療に関する医師・患者間のコミュニケーション改善手段を提案

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

—米国臨床腫瘍学会(ASCO)が新たなポリシー・ステートメントと患者ガイドを発行

 

連絡先:Amanda Stanley Narod (571.483.1364)

 

米国臨床腫瘍学会(ASCO)は今日、進行癌患者の生活の質(QOL)の改善に向けて、医師、医学部、保険会社などに呼びかけた。ASCOは新たな ポリシー・ステートメントで、患者が不治の病である進行癌と診断された場合、直ちに緩和ケア全般と治療オプションについて、医師が率直な対話を始めることができるよう、様々な手順を提案した。

 

[pagebreak]「癌専門医の第一の目標は患者の生存期間を延ばすことですが、各患者がその最後の日々を快適に、尊厳を保って過ごせるようにすることは、特に重要な責務です。」とASCO会長のGeorge W. Sledge, Jr.医師は言う。「患者には、十分な説明を受けた上で治療法を選択するという権利があります。癌専門医は、患者の選択の意思をきちんと尊重するために、治療法や緩和ケアについての幅広い話し合いを主導しなければなりません。」

 

患者の最適なケアには医師と患者間のコミュニケーションが欠かせないため、ASCOは進行癌患者が予後や治療、緩和ケアのオプションについて、医師に難しい話題を持ち出す際の手助けとなるガイドも発行した。ASCOは今年中に、癌専門医がこのような会話を切り出し、緩和ケア(治療)を癌治療の現場で適用できるようにするための初の臨床ガイダンスを発行する予定である。

 

「研究結果によると、苦痛緩和治療は患者のQOLを向上させるのみならず、生存期間を延期することもあります。」とSledge氏は述べた。「しかし、多くの進行癌患者は苦痛緩和やホスピスケアの選択肢について話し合う機会がなく、あったとしても死を迎える数週間か数日前という場合が多いのです。これは患者だけでなく、その介護者にとっても苦痛です。ASCOの新たな患者用パンフレットと近日発行予定の臨床ガイダンスは、治療の早い段階で患者と医師がこのような話題について話を切り出す助けとなるでしょう。」

 

ASCO Cancer Foundationが資金援助したランダム化試験によると、進行肺癌と診断されてすぐに化学療法と緩和ケアを受けた患者は、化学療法しか受けなかった患者と比較して生存期間が約3ヶ月長かった。Journal of Clinical Oncology誌で発表された別の試験では、苦痛緩和治療を受けた末期症状の患者の介護者は精神的ストレスが軽いことが分かった。ICUや院内での死亡の場合、患者が在宅ホスピスで死亡した時と比較すると、後に残された介護者の間でより多くの精神疾患がみられた。

 

さらに、ASCOのQOPI(Quality Oncology Practice Initiative)に登録されている5,500人の患者記録の予備的な解析(全米約 600人の臨床腫瘍医を対象とした革新的な品質改善計画)によると、死亡前にホスピスに入院した癌患者は全体の45% 未満であり、そのうち3分の1がホスピスに入院したのは死亡する1週間前だったことが分かった。またこの解析では、最後の2回の診察で5人に1人の患者は適切な疼痛管理を受けず、また3人に2人は息切れの適切な治療を受けていなかったことも明らかになった。

 

ASCOのポリシー・ステートメントは本日、ASCOのJournal of Clinical Oncology誌で公表された。ここには進行癌患者のケアに必要な事項がまとめられており、現在、ケア計画に関する医師と患者の会話を妨げる障壁が明らかにされている。この声明では、病気の経過中、個々の患者のニーズや目標、嗜好に応じて治療の個別化を実現するための必要な手順をリストアップしている。

 

ASCOが癌ケアを個別化するために必要であるとした要素は以下の通りである。

• 医師は、患者が進行癌と診断されたらすぐに予後について率直に話し合うべきである。現在このような会話は、進行癌患者の40%未満でしかなされていない。
• 進行癌の全治療過程を通じて、QOLを明確な優先項目とするべきである。医師は、患者の予後や、実施可能な癌治療がもたらしうるリスクとベネフィット、QOLの考察などについて患者が完全に理解できるよう努めるべきである。積極的な治療でも生存を延長できる見込みがない場合は、併用療法または代替治療として緩和ケアを検討すべきである。
• 臨床試験の機会を増やすべきである。現在は試験の厳格な適格基準やQOL問題を取り上げた臨床試験の不足、またさまざまな障壁のため、ごく少数の進行癌患者しか試験に参加していない。これらの患者が試験から利益を得られるようになり、癌ケアの改善に貢献する機会を増やすことを最優先にするべきである。

 

現在多くの障壁が、医師と患者が進行癌の最適なケア計画を立てることを困難にしている。「癌専門医は進行癌の緩和ケアやQOL尺度の重要性を認識していますが、医師の教育や研修プログラムはこれまで、この分野での指導をほとんど行ってきませんでした。」とASCOのCEO、Allen S. Lichter医師は言う。「患者は、緩和ケアと治療オプションについて詳細な説明を受けて選択する権利がありますが、現在のアメリカの医療制度はこのような決定の指針となる対話を軽視しています。」”

 

ASCOは進行癌のケア計画の障壁に取り組むために次のことを提案している。

• 医師教育と研修プログラムで進行癌のケア計画に力を入れる。
o 癌専門医の初期研修や医学生涯教育(CME)で、予後や緩和ケアのオプションを検討するためのコミュニケーション能力に重点を置く。
o 臨床腫瘍医は進行癌のケア計画を、現在行われている品質改善プログラムの中核とする。
o 緩和ケアを米国内科専門医学会(American Board of Internal Medicine, ABIM)の腫瘍学研修および認定医試験、腫瘍学フェローシップ・プログラムに組み入れる。

• 進行癌のケア計画に対して保険がカバーする。緩和ケアオプションに関する医師と患者との対話の重要性が明らかになっているにもかかわらず、多くの公的・民間の医療保険はそれに対する支払いを行なわず、支払ったとしてもごく少額である。これらの課題に対処するため、ASCOはこの声明で以下のことを呼びかけている。
o 公的および民間の保険会社は、進行癌ケア計画に関する話し合いに対して、診療報酬を払うこと。
o 民間保険会社は、患者が癌を中心とした治療を放棄することなしに、ホスピスなどの緩和ケアの質を最大限に高めるためのパイロットプログラムを展開すること。(現在の保険プランでは、緩和ケアを受けるために患者が癌治療を終了せざるを得ないことが多く、癌を治療することとQOLを最大限に高めることの間で誤った選択を強いている)

• 進行癌患者が臨床試験に参加する機会を増やす。ASCOは研究者と研究の出資者に次のような研究を優先するよう呼びかけている。
o 進行癌患者のQOLを最大限に高める戦略を評価する研究
o 緩和ケアに患者個人の目標や思考を反映するために、癌専門医と患者とのコミュニケーションを向上させる方法を調査する研究
o 新規治療法から最も恩恵を受ける進行癌患者を特定し、薬剤に対して耐性を示す癌の生物学的機序を克服する方法などについて評価する研究。

• 進行癌患者のための教育資料を増やす。医師と患者の間の、困難だが重要な対話を切り抜けられるよう、ASCOは無料の総合的な情報パンフレットを進行癌患者のために用意している。詳細情報とパンフレットはCancer.Net.で請求できる。パンフレットPDF(※JAMTにより翻訳中)

原文掲載日

翻訳山本 容子

監修後藤 悌(呼吸器内科/東京大学大学院医学系研究科)

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