乳癌遺伝子BRCA1の新機能を発見

NCIニュースノート

米国国立がん研究所(NCI)の研究者らは遺伝性乳癌および遺伝性卵巣癌に関連するもっとも一般的な遺伝子BRCA1の新しい機能を明らかにした。彼らは、マウスにおける実験でBRCA1が、発がん性が知られているmiR-155と呼ばれるmicroRNAをコードする、別の遺伝子の発現を抑制することを発見した。2011年9月25日Nature Medicine誌電子版に報告されたこれらの知見によると、腫瘍抑制因子として知られるBRCA1は既知の機能であるDNA修復のみならず、ある遺伝子の発現を抑制しその遺伝子の過剰発現による癌の発生を防ぐ機能も有することが示唆された。マウス腫瘍細胞内のmiR-155を不活性化させたところ、腫瘍増殖速度が低下した。BRCA1関連腫瘍がmiR-155依存性であることが確定すれば、miR-155不活性化作用を有する物質によって、遺伝性の癌の治療が可能となるかもしれない。

研究者らはまた、細胞内でBRCA1がどのようにmiR-155を抑制しているのかを詳細に調査した。NCIフレデリックのマウス癌遺伝学プログラム、癌感受性遺伝学部門(Genetics Cancer Susceptibility Section, Mouse Cancer Genetics Program)の部門長である Shyam K. Sharan博士とSuhwan Chang博士およびその研究者らは、BRCA1がヒストンデアセチラーゼ2という別のタンパク質と相互作用することにより、DNAを覆うタンパク質(ヒストン)を修飾し、その構造維持に寄与することを発見した。これらの修飾の結果、DNAによるmiR-155の発現が制御される。BRCA1遺伝子欠損があれば、このDNA修飾が起こらず、miR-155が過剰発現する。腫瘍細胞におけるBRCA1変異とmiR-155過剰発現の密接な相互関係から、miR-155がBRCA1欠損性ヒト腫瘍のバイオマーカーとして利用できる可能性があることも示唆された。

翻訳担当者 武内優子

監修 石井一夫(ゲノム科学/東京農工大学)

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