2008/01/22号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2008/01/22号◆癌研究ハイライト

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2008/01/22号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2008年1月22日号(Volume 5 / Number 2)
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◇◆◇癌研究ハイライト◇◆◇

転移の要因を特定した2つの研究

1月10日号のNature 誌に掲載された研究によると、乳癌転移の抑制に役立つ複数のマイクロRNA(miRNA:遺伝子発現を調節する小さなRNA 鎖)が特定された。

スローンケタリング記念がんセンターの研究者らは、対照として用いた乳癌細胞株と比べ、骨や肺に極めて転移能の高い乳癌細胞株のmiRNAを調べた。その際、転移細胞において発現が非常に低下していた6 つのmiRNA に関する詳細検討に焦点を絞ることにした。

そのうちのmiR-335、miR-206 およびmiR-126 と呼ばれる3 つのmiRNA の機能を遺伝子治療で回復することによって、その乳癌細胞株を移植したマウスにおける骨転移形成が著しく抑えられた。それでも転移した極めて数少ない特殊な細胞では、その3 つのmiRNAの発現の低下が認められた。

これらのmiRNA のヒト腫瘍における発現を測定するために、研究者らは、転移性乳癌の女性患者11 例および転移していない乳癌の女性患者9 例の保存組織サンプルを使用した。原発腫瘍におけるその3 つのmiRNAの発現が低かった患者では、「転移による再発までの期間の中央値が他よりも短い」ことが明らかになった。

特に、低レベルのmiR-335もしくはmiR-126については、「これらのmiRNA を高レベルで発現する腫瘍グループと比較して、全体的な無転移生存期間が非常に短くなっていた。」詳細検討では、miR-335 によって調節される、再発に直接関連する遺伝子が同定された。

1 月11 日号のScience 誌に掲載されたもう一つの研究では、(腫瘍の血液供給を担う)血管新生スイッチに関わる腫瘍内微小環境における細胞の特定の働きと、それに関連した肺の微小転移から致死的なマクロ転移への進行が同定された。

Cold Spring Harbor Laboratory の研究者らは、異種移植および自然発症の両方の癌のマウスモデルにおいて微小転移は、骨髄由来内皮前駆細胞(EPC)と呼ばれる細胞を未熟な血管へ補充して血液の供給を行うことを認めた。

研究者らはまた、腫瘍部位へEPC を誘導するために必要とされるid1 と呼ばれるタンパク質も同定した。モデルマウスにおいてこのタンパク質を抑制すると、血流中のEPC 数は著しく減少し、腫瘍血管の増殖が抑えられた。「…これらの結果は、…臨床試験で用いた血管新生阻害剤の有効性が、初期腫瘍の血管系だけでなく、{骨髄}由来のEPC を直接標的とした結果である可能性を
示唆している」と、著者らは結論している。

英国の黒人女性はより若くして乳癌と診断される

英国黒人女性の乳癌の形態について初の発表となった1 月8 日号のオンライン版British Journal of Cancer誌掲載の研究によると、黒人女性では浸潤性乳癌診断時の年齢中央値が白人女性と比べて著しく低く、また、高悪性度の腫瘍、エストロゲン受容体(ER)陰性およびbasal-like(トリプルネガティブ)腫瘍の頻度はアフリカ系アメリカ人女性と同じように高いことが研究者らによって明らかにされた。

Cancer Research UK の研究者らは、ロンドン東部の病院で1994 年~2005 年の間に浸潤性乳癌と診断された黒人女性102 例および白人女性191 例を同定した。診断時の年齢は、白人患者の中央値67 歳と比較して、黒人患者は中央値46 歳であった。その地域の人種分布において黒人患者と白人患者の間に差異は認められなかったことから、「実際に、若い黒人女性における乳癌の頻度が高いことが確認された。」

黒人患者はまた、グレード3 の腫瘍、リンパ節転移、並びにER 陰性、プロゲステロン受容体陰性およびbasal-like 腫瘍の頻度がより高かった。しかしながら、すべての年齢グループにおいて腫瘍のグレードだけが著しく異なっていた。社会経済的背景による調整後も、その結果が変わることはなかった。

黒人患者と白人患者の間で、全生存期間において著しい差異は認められなかった。しかし、腫瘍のサイズが2cm 以下の患者については、黒人患者の生存期間がより短くなっていた。黒人患者は白人患者よりも多くの補助療法を受けていると記録されていたことから、著者らは、「認められた差異が、…治療状況の違いよるという証拠はない」という結論を下している。

英国における現在の政府支援乳癌スクリーニングプログラムは、50 歳から開始される。著者らは、「黒人対象集団の発症パターンをより良く反映するために、このグループに提供されるスクリーニングサービスの変更が検討されるかもしれない」と述べている。

メラノーマの標的となる腫瘍幹細胞が発見

数年前、化学療法に耐性をもたらす可能性があるメラノーマ内の細胞が同定された。現在、ABCB5タンパク質を発現するこれらの細胞は、腫瘍の形成およびその増殖の促進に特に適している可能性がある、と言われている。ハーバード大学医学部のDr. Markus Frank氏とその研究チームは、1月17日号のNature誌で、このタンパク質に対する抗体が動物モデルにおいて腫瘍発生の予防に役立つ可能性があると報告している。

今回の研究では、メラノーマ腫瘍内の細胞の階層性が説明されている。研究者らは、組織幹細胞の特徴である、自己複製能力および多様な分化能力はABCB5陽性細胞に集中している、と結論づけている。腫瘍の分析により、臨床的に進行した症例におけるABCB5の発現は、あまり進行していない症例と比較して多いことが明らかにされており、この細胞とメラノーマの進行との関連が示唆される。

癌幹細胞の仮説では、ごく一部の自己複製細胞集団によって作られる癌があるとされ、脳、乳房、および膵臓の腫瘍を含む様々なタイプの腫瘍において幹細胞の報告がある。メラノーマに関する以前の報告では、タンパク質CD133およびCD20は腫瘍幹細胞のマーカーとなる可能性があるとされている。

腫瘍幹細胞の根絶は患者に効果をもたらすであろうという考えが2~3の研究で検討されてきた。その考えは、今回の研究 で、ABCB5陽性細胞に対する抗体がマウスの腫瘍を抑制したことによって、裏付けられている。

「今回の研究は、癌幹細胞を特異的に標的とすることが腫瘍の増殖を阻止するであろうという仮説の妥当性を確認するものです」とDr. Frankは述べ、その方法がヒトに応用される前にさらに多くの研究が必要であることを示唆している。すべてのABCB5陽性細胞が腫瘍を形成する細胞とは限らないことから、クローンレベルでメラノーマ幹細胞をさらに特徴づける追加のマーカーも必要となる。

脳腫瘍幹細胞は遺伝子の不活性化に依存する可能性

NCI 癌研究センターのDr. Howard Fine 氏らは、神経幹様細胞の発達段階にて異常に不活性化された遺伝子をin vitro で特定した。この所見は、同様の細胞がin vivo では高悪性度の脳腫瘍となる可能性の理由を説明する上で役立つであろう。神経膠芽腫細胞に由来するヒト細胞株でさらに実験を行ったところ、サイレント遺伝子を活性化させると正常な発達段階が回復することから、患者の治療戦略となる可能性が示唆された。

腫瘍幹様細胞は、正常な幹細胞と同様に自己再生するが、幹細胞と異なる点は正常な細胞型に分化しないことである。その代わりに腫瘍幹様細胞は細胞の調整不全を引き起こして腫瘍へ進行するとみられる。この新しい研究では、遺伝子制御の変化が培養幹様細胞の生存に関与することを示し、同時に弱点も明らかにした。

主任研究者であるFine 氏は薬剤開発者と共同し、同種の欠陥を伴う神経膠芽腫の一部集団において不活性遺伝子を活性化させうる化合物を特定しようとしている。神経幹様細胞を成熟させることによって脳腫瘍の進行阻害ができるのではないかと期待される。

Cancer Cell誌の1 月号に掲載されている不活性化された遺伝子は、細胞分化に関与する骨形態形成タンパク質受容体1B(BMPR1B)である。サイレンシング(不活性化)は、遺伝子が化学的に変化するメチル化と呼ばれる後成的変異を介して起こる。

驚くべきことに、脳腫瘍幹様細胞は遺伝子欠陥や後成的変異を伴うにもかかわらず、BMRP1B 受容体を再活性化させるだけで同細胞を正常に成長および分化させることができるのである。Fine 氏は、「その他のあらゆる遺伝子異常を修復する必要もなく、薬剤を用いてこれらの腫瘍幹細胞を分化させることができるかもしれない。また、幹様細胞の経路は、標準的な癌遺伝子経路に対する切り札となる可能性があるとも言える」と記している。

また同所見から、癌のあらゆる幹様細胞が同一の欠陥を伴うわけではないと示唆される。本疾患を治療するためには、個々の癌細胞で阻害されている経路を特定する必要があると考えられる。同研究者らは、BMPR1B 遺伝子が不活性となるのは神経膠芽腫の症例中15~20%であると推測している。

悪性度の高い皮膚癌と関連する新ウイルスの発見

ピッツバーグ大学癌研究所のDr. Yuan Chang氏とDr. Patrick Moore氏を筆頭とする研究者らはこれまで未知であったウイルスを発見し、メルケル細胞癌と関連付けた。メルケル細胞癌とは稀ではあるが、通常急速に死に至る皮膚癌である。同研究者らによると、同ウイルスがメルケル細胞癌の原因となっているかどうかはまだわからないが、同ウイルスが一因である可能性がエビデンスから示唆されている。

同研究者らがメルケル細胞ポリオーマウイルス(MCV)と命名したウイルスは、Science に1 月17 日付けで掲載された。このウイルスはポリオーマウイルス群に属し、動物において癌を引き起こすと知られている。メルケル細胞癌は、日光曝露や免疫力低下と関連しているが、その原因は不明である。米国での症例数は毎年約1,500 例である。発症率は、特にAIDS や免疫抑制剤によって免疫系に障害が生じている人で増加しつつある。

研究で用いた10 個のメルケル細胞癌のうち8個でMCV DNA が検出された。それに対し、体のさまざまな部位から採取した対照組織では59 個のうち5 個(8%)、対照皮膚組織では25 個のうち4 個(16%)で同DNA が検出された。大半(全てではない)のメルケル細胞癌が同ウイルスに感染していた理由は明らかになっていない。

ヒト細胞が悪性化する前にウイルスに感染していたことがこの実験で示された。また、ウイルスDNA は8 個の癌のうち6 個において組み込まれていた。このことは、ウイルスが癌に関わっていることを示唆しており、同所見はウェブサイトに掲載されている。デジタル・トランスクリプトーム・サブトラクションと呼ばれる手法を用いて、既知の全ウイルスと類似しているが異なるウイルスDNA シーケンスを単離した。

MCV が癌に関与することが証明されれば、致死的な本疾患の解明および治療に新たな手がかりが得られるであろう。NCI 癌研究センターのDr. Kishor Bhatia 氏は、この発見が他の癌とも関連するであろうと記している。1994 年にMoore 氏とChang 氏はカポジ肉腫を引き起こすウイルスを発見した。同疾患は、AIDS 患者においてもっとも頻繁にみられる悪性腫瘍であり、アフリカにおいて最も多い癌である。

併存疾患によって前立腺併用療法のベネフィットが制限されうる

放射線療法(RT)にアンドロゲン抑制療法(AST)を加えることによって局所前立腺癌や再発の危険因子を有する男性の全生存率が改善するが、生存に対するベネフィットが得られるのは、他の中程度~重度の疾患を呈していない男性のみであると考えられる。ブリガム・ウィメンズ病院(ボストン)のDr. Anthony V. D’Amico 氏を筆頭とする研究者らによる本報告は、Journal of the American Medical Association 誌に1 月23 日付けで掲載されている。これまでに行われた観察研究やランダム化試験の統合解析から、AST が高齢男性における心臓発作やその他の心血管イベントの危険性増加と関連する可能性が示唆されていた。

本試験では、局所前立腺癌で高い再発危険因子を有する男性206 名をRT 群またはRT+AST 群にランダムに割り付け、6 カ月にわたって治療した。対象となった男性(平均年齢72.5 歳)を、併存疾患(糖尿病や心臓発作歴など)の重症度に基づいてさらに分類した。

追跡調査期間中央値7.6 年後、推定8 年生存率は、RT+AST 群で74%、RT 群で61%であった。計74名が死亡した。その内訳は、RT 群で44 名、RT+AST 群で30 名であった。軽微な併存疾患を有していた157 名のうち死亡したのは、RT 群で31 名、RT+AST 群で11 名であった。一方、中等度~重度の併存疾患を有していた49 名のうち死亡したのは、RT 群で13 名、RT+AST 群で19 名であった。

Dr. Anthony V. D’Amico 氏らは、「もとより併存疾患がある場合は、AST など特定の抗癌治療の逆の効果を増加させうる」と結論づけた。AST 治療を受けている男性を対象として、この相互作用をさらに評価するため、および余命を短縮させる可能性が特に高い疾患を特定するための追跡臨床試験を推奨して
いる。

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豊、 齋藤 芳子 訳
小宮 武文(NCI研究員)、林 正樹(血液・腫瘍科)監修

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