2007/04/03号◆スポットライト「術前乳癌治療の指針を決定すべき」

同号原文
NCI Cancer Bulletin2007年4月3日号( Volume 4 / Number 14)

NCIキャンサーブレティン顧問:古瀬清行
●2007/4よりNCI隔週発行となりました
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◇◆◇スポットライト ◇◆◇

術前乳癌治療の指針を決定すべき

3月26日から27日にかけてNCIは「浸潤性乳癌の術前治療」と題して、科学的現状の見直しと新しい研究の方向性を開拓する会議を開催した。

術前全身化学療法は、局所的に進行した浸潤性乳癌および炎症性乳癌に対する標準治療の一部として確立されてきた。多くの患者の場合、手術前に全身治療を全コース受けることにより、そのままでは手術を行うことが不可能であると思われる腫瘍を切除可能とし、または乳房切除から乳房温存手術へと、ダウンステージングを図ることが可能となる。

より多くの早期乳癌を患う女性患者に対して、ネオアジュバント療法としても知られる術前療法を用いることは学会で大いに興味がもたれている。ランダム化比較対照臨床試験では、術前化学療法を行った場合、生存率が低下することなく乳房温存率が向上することが示された。しかし、生物学的特性および予後要因が多様な腫瘍を有する女性患者の場合、術前治療の原理を適用する際に生じる疑問点を解決するためには、さらなる研究が必要である。

本会議の共同座長であるダナファーバー癌研究所のエリック・ウィナー医師は、「われわれは、この数年間で、より多くの術前治療が臨床で行われるようになったのを見てきた…しかし、標準(術後)療法に対するアプローチと比較すると、術前治療を行う際に患者を治療する基準については十分に明らかにされているわけではない」と述べた。またさらに、「(本会議場で)われわれが行おうとしていることは主に、われわれにとって既知のことおよび未知のことに関する合意と、そして最重要であると思われることには、乳癌に関する臨床的および生物学的な重要な問題に答えるために何を知る必要があり、術後治療をどのようにして施行していくか、について一定の合意に至ることである。」と述べた。

会議の発表者らは、手術可能な乳癌に対する術前治療に関する既存のデータ、および乳癌に対して術前療法を広く導入することを妨げている最も差し迫った問題について見直した。ここで扱われた問題には、内分泌および生物学的治療を術前療法レジメンに組み込むこと、術前療法に対する反応を評価するために既に確立された画像検査法および試験段階の画像検査法をいかにして最もうまく用いるべきか、術前療法後に行われる最適な局所療法をいかにして決定するべきか、センチネルリンパ節生検の役割とタイミング、術前に全身療法を行うことで利益を得る患者を選ぶ最善の方法、および術前療法に対する腫瘍の反応がさらなる治療の指針となり得るか否か、が含まれていた。

2日間の発表および質疑応答によって出された問題を取り上げるパネルディスカッションの後、本会議は座長らによって準備された「科学の声明」によって締めくくられた。この声明では次世代の臨床試験において扱われる必要がある主な未解決の臨床的問題が確認された。

手術のタイミング、レジメンの途中で治療を変更する可能性、再発リスクが高い患者に対する追加療法について焦点を合わせた本声明では、本会議中繰り返し持ち上がった問題である、臨床腫瘍医、外科医、放射線腫瘍医、形成外科医そしてその他の専門家による、集学的な参加が必要であることも強調された。

NCIのDivision of Cancer Treatment and Diagnosis(癌治療および診断部門)の乳癌の専門家であり本会議の主催者でもあるJo Anne Zujewski医師は、「臨床試験の計画および分析のみならず、臨床においても乳癌に対する術前療法を受けている女性患者の治療の各段階において、われわれは共に取り組むことが必要不可欠である」と述べた。
「科学の声明」を含む、本会議のビデオ放送は下記URLで公開されている。http://videocast.nih.gov.

— Sharon Reynolds

翻訳担当者 佐々木 了子   、

監修 島村 義樹 (薬学)

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原文掲載日 

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