2010/02/09号◆癌研究ハイライト | 海外がん医療情報リファレンス

2010/02/09号◆癌研究ハイライト

更新日

Facebookでシェアする Twitterにツィートする LINEに送る print

2010/02/09号◆癌研究ハイライト

同号原文
NCI Cancer Bulletin2010年2月9日号(Volume 7 / Number 3)
日経BP「癌Experts」にもPDF掲載中〜

____________________

癌研究ハイライト

・卵巣癌の症状は早期発見に有用ではない
・トラスツズマブは局所進行性あるいは炎症性乳癌女性に有効
・糖タンパクを標的とする抗腫瘍抗体は早期癌検出マーカーになりうる
・髄芽腫小児患者の低い生存率と関連する遺伝子変異

卵巣癌の症状は早期発見に有用ではない

卵巣癌の女性のなかには癌と診断される前に腹痛、鼓脹、膨満感などの症状を報告する患者もいる。 しかし、新たな研究によると、どちらかというと特異的でないこれらの症状について女性患者をモニタリングすることは、卵巣癌の検出にほとんど価値がないという結論である。医師たちは卵巣癌1例を発見するのにこれらの症状がある女性100人を診察しなければならないと、Journal of the National Cancer Institute誌1月28日号オンライン版で発表された。

米国の3つの学会が統一見解として、一定期間にわたり上記の症状がある女性たちに担当医と相談することを考慮するよう勧告したが、それからほぼ3年を経た今回、これらの知見が示された。前回の見解では卵巣癌に罹患している女性たちが報告した症状を認識することは診断につながる可能性があるとされていた。

今回の新たな研究において、フレッドハッチンソンがん研究センターのDr.Mary Anne Rossing氏らは卵巣癌患者812人と卵巣癌患者ではない女性1300人に症状についての問診を行った。ほとんどの症例で、症状出現から診断までの期間が6カ月未満であった。

「私たちはみな、早期に卵巣癌を発見するための最適な方法を見つけたい。しかし、卵巣癌の徴候はかなり非特異的であることと、卵巣癌は一般人口の中で比較的稀な癌であることから、一般人口を対象にした場合これらの症状による予測精度が劣るのは当然なことである」 と同医師は述べている。

同知見は、「より優れた分子生物学的マーカーおよびよりよい卵巣癌検診のための画像診断法を開発する差し迫った必要性を強調している」と本論文に寄せられた論説の中でシダーズ・サイナイ医療センターのDr.Ilana Cas氏およびDr.Beth Karlan氏は述べている。

トラスツズマブは局所進行性あるいは炎症性乳癌女性に有効

一部の急速進行型の乳癌女性に対して、新たな治療選択肢が国際臨床試験の知見で示された。同試験では、トラスツズマブ(ハーセプチン)療法と化学療法を術前に受け(術前化学療法)、かつ術後に再度トラスツズマブ療法(術後化学療法)を受けた女性患者は、術前化学療法のみを受け、トラスツズマブ療法を受けなかった女性患者と比較して、3年後の乳癌再発または進行のリスクが低下した。同知見はLancet誌の1月30日号で発表された。

本試験に登録された女性患者230人は、HER2陽性の局所進行性あるいは炎症性乳癌のどちらかであった。トラスツズマブはHER2陽性早期乳癌および転移性乳癌女性において全生存率を改善することが明らかにされたが、同薬の効果はこれらの中間ステージの乳癌女性においてはまだ詳しく研究されていないと研究チームは記している。

トラスツズマブ療法に無作為に割付けられた患者に計1年間同薬を投与した。疾患の再発、進行または何らかの原因による死亡として定義された事象がおこらずに、3年間無病生存する確率は、トラスツズマブ療法の患者では71%、トラスツズマブ療法を受けない患者では56%であった。病理学的完全寛解を得た、または癌の存在が検出できなくなった率はトラスツズマブ投与を受けた女性でほぼ2倍であった。

現在まで、トラスツズマブ療法を受けた女性の全生存率における統計的に有意な改善はみられていない。このことは、化学療法単独群の女性のうち17%はトラスツズマブ治療も術後に受けていたという事実、および再発後にトラスツズマブを投与した患者もいたことが原因かもしれないと、Lancet podcastでイタリア国立癌研究所の同試験の主任研究者であるDr. Luca Gianni氏は説明した。

今回、心機能障害の副作用についての重要な問題はなかったが、トラスツズマブおよび同試験でも用いられた化学療法の1剤であるドキソルビシンを投与した乳癌試験では心機能障害の副作用が、繰り返し問題になっている。

フォックスチェイスがんセンター腫瘍内科部長のDr.Massimo Cristofanilli氏によると、病理学的完全寛解はこれらの種類の乳癌女性において「最も重要な予測因子である」。心機能障害の副作用の割合が低いのは、臨床試験参加者が試験開始前に乳癌の治療を受けていなかったこと、心機能が至適であったこと、ドキソルビシンの累積投与量が典型的に心毒性を伴う投与量以下であったことなどが要因とみられると同氏は述べた。

糖タンパクを標的とする抗腫瘍抗体は早期癌検出マーカーになりうる

ある概念実証試験において、NCIが研究費を提供した癌および癌リスクの検出のための糖鎖生物学者らによる研究グループは、腫瘍によって産生された異常な糖タンパク(糖分子がついたタンパク質)を標的とする自己抗体が癌検出バイオマーカーとして機能しうることを明らかにした。自己抗体とは腫瘍細胞など自己組織に直接反応する抗体である。同知見はCancer Research誌2月2日号で発表された。本研究はNCIの癌予防部門で癌バイオマーカー研究グループ(CBRG)のDr.Karl Krueger氏によって計画された。

癌細胞表面のO-結合型糖タンパクと呼ばれるある種の糖タンパクに結合している糖が異常であることが明らかにされたので、コペンハーゲン大学のDr.Hans H. Wandall氏主導による研究チームは多数の異常な糖化ペプチド(断片化したタンパク質)を合成し、それらを用いて異常なO結合型糖タンパクに対する自己抗体を検出するためのマイクロアレイを作った。糖化とはタンパク質、脂質(脂肪)、または他の生体分子に糖分子を結合する過程である。

研究者らは、O-結合型糖タンパクを標的とする抗癌ワクチンの臨床試験に登録された乳癌患者20人から得た血液サンプルを用いてそのマイクロアレイの試験を行った。研究者らは、当該患者の多くが数種のO-結合型糖タンパクに対する免疫グロブリンG(IgG)抗体を産生していたことを以前の分析から知っており、これらの自己抗体が実際今回の新たなマイクロアレイによって検出された。

その次に研究者たちは同マイクロアレイを用いて、新たに乳癌、卵巣癌、前立腺癌と診断された患者58人と年齢および性別を一致させた健常対照群39人の血液サンプルを精査した。

同マイクロアレイ上の数種のO-結合型糖タンパクに対する自己抗体が、乳癌患者26人中5人、卵巣癌患者20人中5人、前立腺癌患者10人中4人で認められた。 健常対照群ではいかなる種類のO-糖結合型タンパクに対する自己抗体も認められなかった。

「今回の研究で用いられたマイクロアレイなど新技術のおかげで、研究者たちは特定の癌の早期発見と診断のための新たな標的となりうる糖タンパクの糖質(糖)部分を基にしたバイオマーカーを同定した。それでもなお、この方法論の臨床的価値を十分に確認するためには、さらに研究が必要でさらに多くの検体が解析されなければならない」とCBRGチーフのDr.Sudhir Srivastava氏は述べた。

髄芽腫小児患者の低い生存率と関連する遺伝子変異

小規模なレトロスペクティブ研究の結果によると、小児の脳腫瘍で最も多い種類である髄芽腫の小児患者では、ある単一の遺伝子変異が生存率の低さと関連する可能性があることが示唆された。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2月8日号で発表された同研究で、大多数の患者が治療後の疾患進行リスクが平均的であると考えられるにもかかわらず、腫瘍細胞のTP53遺伝子が変異していた髄芽腫患者はだれも5年後には生存していなかったとトロント小児病院のDr.Cynthia Hawkins氏らは報告した。

最新の治療プロトコルを用いれば、平均的リスク(患者の腫瘍が完全に摘出されたかどうか、患者の年齢および転移の有無に基づいて分類した)を有する髄芽腫患者の約80%は5年以上生存している。「このように、平均すれば良好な成績を得ている患者群を臨床的因子に基づいて特定したが、それでもこれらの患者の20%は死亡しており、その理由はわからない」と同氏は語った。

同研究には1995〜2007年の間に髄芽腫の治療を受けた小児患者108人が参加した。これら小児患者49人からDNA塩基配列決定用の腫瘍サンプルが得られ、8人にTP53遺伝子の変異があった。TP53遺伝子の変異は腫瘍の早期再発と強い関連性があった。この小児群49人のうち27人は平均的リスクであると考えられ、5年以内に8人が死亡したがその内6人にTP53遺伝子の変異があった。

全体としては、腫瘍のTP53遺伝子が正常(野生型)である患者の5年生存率は74%であるのに対して、TP53遺伝子に変異がある患者の5年生存率は0%であった。平均リスク群では、無増悪生存率の相違はさらに大きく、前者が87%に対して後者は0%であった。

「TP53遺伝子の変異がある髄芽腫の全患者が限局性腫瘍として発症し、全員が局所再発を来たした。これは髄芽腫の播種と関連する他の分子変化に反して、TP53遺伝子の変異が別の機序によって進行の早い表現型を生じることを意味する」と、研究者らは記している。

TP53の状態と髄芽腫の予後とのあいだに関連性があるとの知見は「重要な情報である」とNCIの癌研究センター小児腫瘍科Dr.Javed Khan氏は述べる。同氏は、本知見がより大規模なプロスペクティブ研究で確認されることが必要であるという著者らの意見に同意している。

******
福田 素子 訳
寺島 慶太(小児科医/テキサス小児病院) 監修

******

printこの記事を印刷する Facebookシェアする Twitterツィートする LINE送る

免責事項当サイトの記事は情報提供を目的としてボランティアで翻訳・監修されています。翻訳の記事内容や治療を推奨または保証するものではありません。

注目キーワード

新着ドキュメント

一覧

arrow_upward