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2007/03/06号◆スポットライト「アロマターゼ阻害剤:機は熟した」

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2007/03/06号◆スポットライト「アロマターゼ阻害剤:機は熟した」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年03月06日号(Volume 4 / Number 10)
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◇◆◇スポットライト ◇◆◇

アロマターゼ阻害剤:機は熟した

人体のホルモンであるエストロゲンの生産能力を妨げるアロマターゼ阻害剤(AIs)は、急速に乳癌の標準治療を変えつつある。研究者らは、ホルモン受容体陽性の乳癌女性の再発を減少させるために、これらの薬をどのように、そして、いつ用いるのが最上であるかを知る挑戦を始めている。

2つのアプローチが、乳癌のホルモン治療の中心になっている。1つ目は、エストロゲンが受容体と結合して、腫瘍の成長を加速させる細胞伝達経路を活発化するのを阻害することに焦点を当てている。この戦略は、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERMs)と呼ばれる薬に属するタモキシフェンの開発につながった。

ホルモン受容体陽性乳癌の治療薬として1977年に米国食品医薬品局に許可されて以来、タモキシフェンは治療の中心となっていた。しかしながら、時間とともに多くの女性に薬の耐性が生じるようになり、癌の再発を引き起こすようになった。さらに、タモキシフェンはエストロゲン受容体に直接に結合するため、時には、ブロックを意図されている伝達経路を活発化させうる。

「私たちは、タモキシフェンが部分的アゴニスト、つまり弱いエストロゲンであることを知っていた」と、35年以上前からアロマターゼ阻害剤の開発に取り組んでいる、メリーランド大学の薬理学・実験治療学科の教授であるAngela Brodie博士は説明する。「私たちは、タモキシフェンが腫瘍に対して最適の効果がないかもしれず、そしてさらに、それは副作用を引き起こしうると考えていた。事実、タモキシフェンは、脳梗塞や子宮体癌のリスクを高める。」

異なるメカニズム

アロマターゼ阻害剤は、エストロゲンの活動を妨げるというより、閉経後女性の体内でエストロゲンの生産を妨げるという、異なるホルモン療法のアプローチをとる。アロマターゼ阻害剤は、ステロイド前駆物質からエストロゲンを合成する最終段階の触媒である酵素アロマターゼを阻害する事により成し遂げる。

今日の臨床では、2種類の異なるタイプのアロマターゼ阻害剤が用いられている。エキセメスタン(アロマシン)のようなステロイド系アロマターゼ阻害剤は、不可逆的にアロマターゼと結合する。アナストロゾール(アリミデックス)やレトロゾール(フェマーラ)といった非ステロイド系アロマターゼ阻害剤は、可逆的にアロマターゼと結合し、エストロゲンの前駆体物質と競合する。

ステロイド系、非ステロイド系のどちらのアロマターゼ阻害剤も、大規模臨床試験によって、転移を有する乳癌女性の生存を延長させる事や、第一選択の術後補助療法として用いた際の再発防止の点で、タモキシフェンより優れている事が示されてきている。さらに、ホルモン療法を中断した場合と比較すると、タモキシフェン治療を完全に終えた後にアロマターゼ阻害剤治療を続けて行った場合、無再発生存期間が向上する。

第一線のアロマターゼ阻害剤治療による最善の治療スケジュールを決定するという挑戦が残っている。研究により、5年間のアロマターゼ阻害剤単独治療は5年間のタモキシフェン単独治療より再発防止で優れており、そして、タモキシフェンを服用中の女性が、2~3年間のタモキシフェン治療の後にアロマターゼ阻害剤に変更して服用を行えば、タモキシフェンを5年間継続して服用するより再発防止効果があることが明らかとなっている。しかしながら、ホルモン療法を受けていない女性が、タモキシフェンとアロマターゼ阻害剤の連続投与を受ける事が、アロマターゼ阻害剤単独による5年の治療より恩恵を受けるかどうかは明らかとなっていない。

タモキシフェンからアロマターゼ阻害剤に変更した試験結果を、ホルモン治療を受けたことがない女性に適用する事は出来ない。「治療は同じであるが、患者は同じでは無い事を理解する事が重要である」と、International Breast Cancer Study Groupの会長である、Beat Thürlimann医師は語る。「もしあなたがタモキシフェンを2~3年服用して再発がないなら、あなたは予後が良好なグループに属している。」

「手術後の治療を決定する際に、あなたがこの予後良好なグループに属するかどうかは分からない」とThürlimann医師は続ける。「連続投与の試験では、より幅広い患者集団をみている」。Breast International Groupによる臨床試験BIG 1-98では、早期乳癌の手術後に、タモキシフェンとレトロゾールの連続投与療法と、タモキシフェンもしくはレトロゾールの単独療法を比較している。2008年に予定されているこの試験の一部の中間結果では、ホルモン療法を受けていない女性に対する連続投与のホルモン療法に関する価値のある情報が提供されるであろう。

新たな疑問

アロマターゼ阻害剤が乳癌治療においてより重要な位置へ移るとともに、他の疑問が残る。アロマターゼ阻害剤には独特の副作用があり、一番重要なものは骨密度が減少することで、既に骨粗しょう症のリスクがある女性には特に危険である。そのため特定をする必要はあるが、一部の女性にはタモキシフェンのほうがより好ましいリスク対ベネフィット比を有しているかもしれない。

さらに、閉経前の患者に対するアロマターゼ阻害剤の役割はまだ明らかになっていない。閉経前女性に対するアロマターゼ阻害剤単独では、卵巣が大量のアロマターゼを生産することによって抑制を無効にすることが出来るので有効性がないかもしれないが、閉経前女性に対してアロマターゼ阻害剤に卵巣機能を抑える働きをするゴセレリンのような薬を併用する臨床試験が現在行われている。

アロマターゼ阻害剤は、いくつかの試験において対側乳癌の発生も減少させているので、研究者らは、化学的予防薬としてこの薬剤の試験をしている。乳癌発症のリスクが高い女性に対して、エキセメスタンとアナストロゾールを用いる2つの大規模試験が始まっている。タモキシフェンは、1998年に乳癌発症のリスクが高い女性に対する予防薬として認可されたが、予想より少ない女性がその服用を選択した。

「(健康な)女性がタモキシフェンを服用したくない理由のひとつは、副作用を恐れるからである」と、米国国立癌研究所の癌研究センターの臨床腫瘍医である、Jennifer Eng-Wong医師は説明する。アロマターゼ阻害剤が乳癌発生予防の有効性と許容出来る副作用の両方を持つ事が示されれば、アロマターゼ阻害剤とラロキシフェンのような新世代のSERMsは、ハイリスク女性に乳癌予防の助けとなる新たな選択肢を提供できるであろう。

— Sharon Reynolds

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Nogawa 訳

榎本 裕(泌尿器科) 監修

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