高用量ファスロデックス®は進行乳癌の初期治療でアリミデックス®より無進行期間を延長する

キャンサーコンサルタンツ
2008年11月

国際試験に関与した研究者らはホルモン陽性の進行乳癌患者の初期治療として高用量ファスロデックス®(フルベストラント)がアリミデックス®(アナストロゾール)と比較して無進行期間を有意に延長すると発表した。これらの結果は2008年10月10日~14日の2008年サンアントニオ乳癌シンポジウムで最近提起された。

ファスロデックスは乳癌細胞のエストロゲン受容体タンパク質の働きを抑制するエストロゲン受容体拮抗剤で、抗エストロゲン療法後に再発あるいは進行した閉経後ホルモン陽性進行乳癌患者の治療に250mg投与が承認されている。閉経後のホルモン陽性乳癌患者で、タモキシフェンを2年間投与後ファスロデックスに切り替えた場合、タモキシフェンを5年間投与した場合より再発が減少する。

最近のデータでも承認用量より高用量のファスロデックスにおいて生物活性や臨床効果が改善した可能性が示唆された。CONFIRM(再発または転移の乳癌におけるフルベストラントの比較)試験とよばれるランダム化第3相臨床試験で、再発および転移性の乳癌で高用量(500mg)と標準用量のファスロデックスの比較が進行中である。ホルモン陽性の乳癌患者に対する他のアロマターゼ阻害剤および抗エストロゲン療法を比較する試験も進行中である。

高用量ファスロデックスの効果をさらに評価するため、205人の閉経後ホルモン陽性進行乳癌患者を対象に、一次治療としての高用量ファスロデックスとアリミデックスを比較する第2相臨床試験を実施した。本試験は進行乳癌の初期治療としての高用量のファスロデックス(500mg/月、治療開始月のみ14日目に500mg追加)投与とアリミデックス(1mg/日)投与を比較するランダム化、非盲検、多施設試験でFIRST(フルベストラントによる一次治療を内分泌療法と比較する研究)試験と名付けられた。

両群ともに約4分の1の患者が病気の初期に内分泌療法及び化学療法のいずれかもしくは両方による前治療を受けていた。患者は全員、病勢が進行するか、治療の中止を余儀なくさせるような他の有害事象が出るまで治療を受けた。主要評価項目は臨床的有益性の割合(CBR)で、完全奏効、部分奏効、または24週間以上の病勢安定を達成した患者の割合とした。フォローアップの中央値は6.5ヶ月であった。

● 無進行期間(TTP)の中央値はファスロデックス患者群の方がアリミデックス患者群に比べ60%改善した。(ファスロデックス群はTTPに到達せず、アリミデックス群は12.5ヶ月。HR:0.63; 95% CI:0.39-1.00; P<0.05)

● CBRは両群の患者で同等であった。(P=0.3860)

● 高用量ファスロデックスの有害事象は承認用量で既知のものと一致した。

● 最も一般的な有害事象はファスロデックスにおいてはほてり(8%)、注射部位の疼痛(5%)及び多汗(4%)で、アリミデックスにおいてはほてり(12.6%)、関節痛(5.8%)及び頭痛(5.8%)であった。

● 何らかの理由による治療の中止はアリミデックス群よりファスロデックス群に多くみられた。

コメント:

これらの結果は確認が必要であるが、進行疾患にまだホルモン療法を受けていない閉経後のホルモン陽性乳癌患者に対する有望な追加的新たな治療選択肢の可能性を示唆している。高用量ファスロデックスによるTTPの延長が長期生存または他の臨床的有益性の改善を意味するのか判断するためにもより長期のフォローアップが必要である。

参考文献:

Ellis MJ, Llombart A, Rolski J, et al. A comparison of high-dose (HD, 500 mg) fulvestrant vs anastrozole (1 mg) as first-line treatments for advanced breast cancer: results from FIRST. Program and abstracts of the 31st Annual San Antonio Breast Cancer Symposium; December 10-14, 2008; San Antonio, Texas. Abstract 6126.


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翻訳担当者 内村 美里人

監修 橋本 仁(獣医)

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