米国血液学会の年次総会(ASH 2008)で発表された多発性骨髄腫の新しい治療薬 | 海外がん医療情報リファレンス

米国血液学会の年次総会(ASH 2008)で発表された多発性骨髄腫の新しい治療薬

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米国血液学会の年次総会(ASH 2008)で発表された多発性骨髄腫の新しい治療薬

キャンサーコンサルタンツ
2008年12月

 

12月にサンフランシスコで開催された米国血液学会の年次総会(ASH 2008)で、多発性骨髄腫患者に対して治療効果が期待できる新薬の口頭発表が数件あった。

 

■Zolinza™〔ゾリンザ〕(一般名:vorinostat〔ボリノスタット〕)およびべルケイド® 

Zolinza™ (ゾリンザ)はさまざまなリンパ球系悪性腫瘍を対象に試験が実施されているヒストン脱アセチル化酵素阻害剤である。2006年10月6日に米国食品医薬品局(FDA)はゾリンザを、2度の全身療法後に病勢の進行や持続ないし再発を示した皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)患者にみられる皮膚発現の治療を対象に承認した。ASH 2008では、米国の研究者がゾリンザ™(ボリノスタット)およびベルケイド®(ボルテゾミブ)が再発性または難治性骨髄腫の治療に奏効すると報告した[1]。本試験には、34人の再発性または難治性骨髄腫患者が参加した。結果、21%のミニマルレスポンスに加えて26%の部分奏効率が得られ、53%に病勢安定がみられた。追加の21例では、ゾリンザとベルケイドにデキサメタゾンが併用された。結果、極めて良好な部分奏効が2例、部分奏効が7例、病勢安定が10例となった。本研究の発表者はゾリンザとベルケイドの併用は、ベルケイドの前治療歴がある患者においても奏効すると結論した。

 

■Carfilzomib〔カーフィルゾミブ〕とデキサメタゾン

Carfilzomib(カーフィルゾミブ)は新しいエポキソミシン関連の非可逆的プロテアソーム阻害剤で、現時点では多発性骨髄腫の治療を目的としたオーファンドラッグである。前臨床試験はカーフィルゾミブが骨髄腫細胞の標準薬に対する耐性を克服でき、デキサメタゾンとの併用では相乗作用することを示した[2]。ASH 2008において、米国における多施設試験(PX-171-004)に携わる研究者は、カーフィルゾミブ+デキサメタゾンが骨髄腫に対する新しい化学療法として期待されると報告した[3]。本試験には31人の再発性骨髄腫患者が参加し、87%に幹細胞移植歴があった。ベルケイドによる治療歴がない13例においては、完全奏効1例、極めて良好な部分奏効2例、部分奏効4例を含む全奏効率が54%となり、4例に病勢安定がみられた。16人の患者がベルケイドによる前治療歴を有し、そのうちの19%が部分奏効し、ミニマルレスポンス1例、病勢安定9例という成績となった。

 

2件目の試験(PX-171-003)では、ベルケイドの前治療歴がある39例を対象にカーフィルゾミブについて評価を実施したが、89%に幹細胞移植歴があった[4]。臨床的有用性は26%で、これには部分奏効5例が含まれた。

 

間違いなくカーフィルゾミブは、比較的進行度の低い疾患に対しても評価が実施されるはずである。また、骨髄腫に対する初回治療を目的としたベルケイド療法との比較試験も実施されるものと思われる。

 

■Pomalidomide〔ポマリドマイド;CC4047〕

ポマリドマイド(CC4047)はサリドマイド類似体の経口剤で、著明な免疫修飾作用を呈す。ポマリドマイドは血管成長を阻害し免疫系の機能を刺激するが、癌細胞を直接殺す可能性を有す。また、ポマリドマイドは血管新生阻害剤でもある。ポマリドマイドを再発性または難治性骨髄腫患者に毎日投与した第1相試験では、17%の完全寛解率が得られ、54%の患者で50%以上のパラプロテイン値の低下がみられた[5]。主たる副作用は、初期および後期に発現する深部静脈血栓症である。このため、第2相試験では血栓症の副作用を軽減すべくポマリドマイドを隔日投与するレジメンが採用された[6]。結果、隔日投与法は血栓症の合併を除去すると思われた。本試験には20人の患者が参加、10%の完全奏効率が得られ、半数の患者で50%を超えるパラプロテイン値の低下がみられた。ASH 2008では、37人の再発性または難治性骨髄腫患者を対象にポマリドマイドの連日投与および低用量デキサメタゾン投与療法についての評価が行われたが、全患者は血栓症の合併予防にアスピリンを服用した[7]。76%の患者に幹細胞移植歴があり、62%にサロミド(Thalomid®)(サリドマイド)もしくはレブリミド®(レナリドマイド〔lenalidomide〕)による前治療歴があった。全奏効率は62%で、24%にきわめて良好な部分奏効がみられた。レブリミドによる前治療歴を有す患者の奏効率は29%であった。骨髄腫患者の治療分野において、ポマリドマイドはレブリミドやサロミドと競合する薬剤として期待される。

 

■CNTO 328

CNTO 328はヒトIL-6に対して高親和的結合性および中和作用を有すキメラ型モノクローナル抗体である。リンパ腫およぶ骨髄腫の患者を対象とした第1相試験が実施された。前臨床の研究は、CNTOのベルケイドとの相乗作用を示唆した[8]。米国での多施設試験に携わっている研究者はASH 2008で、再発性または難治性骨髄腫患者に対してベルケイドとCNTO 328の併用が奏効すると報告した[9]。本試験には21人の患者が参加し、11人に幹細胞移植歴があり、8人がベルケイドもしくはサロミドによる前治療歴を有していた。結果、57%の患者に部分ないし完全寛解がみられ、病勢進行までの期間中央値は280日となった。本研究の発表者はベルケイド+CNTO 328とベルケイド+プラセボの比較試験を実施する予定である。

 

■ベルケイド®およびperifosine〔ペリホシン〕

米国の数施設でベルケイドによる前治療歴がある多発性骨髄腫患者を対象とした臨床試験に携わっている研究者は、ペリホシンとベルケイド®(ボルテゾミブ)の併用療法が40%の全奏効率を示したと報告した[10]。ペリホシンは細胞膜を標的とする新しい抗腫瘍剤のクラスに属し、Akt活性化を阻害することでアポトーシスを誘発する。

本試験には、76人の再発性または難治性多発性骨髄腫患者が参加し、ペリホシン+ベルケイド±デキサメタゾン併用療法を受けた。いずれの患者もベルケイドによる前治療歴を有し、35人がベルケイドに対して難治性であった。本試験では、57例が奏効に関して評価可能となった。結果、全奏効率は40%で、30%に病勢安定がみられた。全症例を対象とした腫瘍進行までの期間中央値は19週間であったものの、奏効例における腫瘍進行までの期間中央値は得られなかった。ベルケイドに対して難治性の患者における全奏効率は37%で、腫瘍進行までの期間中央値は23週間となった。ベルケイドとペリホシンの併用は耐性良好と報告された。以上のデータから、ペリホシンが骨髄腫患者の治療において新しい有用な治療薬となる可能性が示された。

 

コメント:

多発性骨髄腫に対する新しい革新的な治療薬は比較的速いスピードで開発されつつあり、その多くが今後の治療において大きな影響を及ぼすことになると察せられる。

 

参考文献:
[1] Weber D, Badros AZ, Jagannath S, et al. Vorinostat plus bortezomib for the treatment of relapsed/refractory multiple myeloma: Early clinical experience. Blood. 2008;112:322, abstract number 871.

[2] Kuhn DJ, Chen O, Voorhees PM, et al. Potent activity of carfilzomib, a novel, irreversible inhibitor of the ubiquin-proteasome pathway, against preclinical models of multiple myeloma. Blood. 2008;110:3281-3290.

[3] Vij R, Wang M, Orlowski R, et al. Initial results of PX-171-004, an open-label, single-arm, phase II study of carfilzommib (CFZ) in patients with relapsed myeloma (MM). Blood. 2008;112:320, abstract number 865.

[4] Jagannath S, Vij R, Stewart AK, et al. Initial results of PX-171-003, an open-labele, single-arm, phase II study of carfilzomib (CFZ) in patients with relapsed and refractory multiple myeloma (MM). Blood. 2008;112:319, abstract number 864.

[5] Schey SA, Field SP, Bartlett JB, et al. Phase I study of an immunomodulator thalidomide analog, CC-4047, in relapsed or refractory multiple myeloma. Journal of Clinical Oncology. 2008;22:3269-3276.

[6] Streetly MJ, Gyertson K, Daniel Y, et al. Alternate day pomalidomide retains anti-myeloma effect with reduced adverse events and evidence of in vivo immunomodulation. British Journal of Haematology. 2008;141:41-51.

[7] Lacy MQ, Hayman SR, Gertz MA, et al. Pomalidomide (CC4047) plus low-dose dexamethasone (Pom/dex) is highly effective therapy in relapsed multiple myeloma. Blood. 2008;112:320, abstract number 866.

[8] Voorhees PM, Chen O, Kuhn DJ, et al. Inhibition of interleukin-6 signaling with CNTO 328 enhances the activity of bortezomib in preclinical models of multiple myeloma. Clinical Cancer Research. 2007;13:6469-6478.

[9] Rossi J-F, Manges RF, Sutherland HJ, et al. Preliminary results of CNTO 328, an anti-interleukin-6 monoclonal antibody, in combination with bortezomib in the treatment of relapsed or refractory multiple myeloma. Blood. 2008;112:320, abstract number 867.

[10] Richardson P, Wolf J, Jakubowiak et al. Phase I/II results of a multicenter trial of perisosine (KRX-0401) + bortezomib in patients with relapsed or relapsed/refractory multiple myeloma who were previously relapsed from or refractory to bortezomib. Blood. 2008;112:321, abstract number 870.

 


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翻訳村中 健一郎(生物物理学)

監修林 正樹(血液・腫瘍科)

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