レラトリマブとニボルマブの併用が転移性メラノーマの無増悪生存期間を改善

LAG-3阻害は第3の免疫チェックポイント経路として治療上重要であることが立証される

未治療の進行メラノーマ(悪性黒色腫)患者において、免疫チェックポイント阻害薬であるレラトリマブとニボルマブ(販売名:オプジーボ)の2剤併用療法は、ニボルマブ単独療法と比較して無増悪生存期間を2倍に延長し、安全性についても管理可能であることが、第2/3相RELATIVITY-047臨床試験によって明らかになった。この試験の結果は、2022年1月5日にテキサス大学MDアンダーソンがんセンターによってNew England Journal of Medicine誌で報告された。

無増悪生存期間の中央値は、併用療法群で10.1カ月、単剤療法群で4.6カ月だった。12カ月後の無増悪生存率は併用療法群47.7%、単剤療法群36%であり、病勢進行または死亡のリスクは併用療法群で25%低下した。併用療法の有用性は、事前に規定したサブグループすべてで確認され、その結果を踏まえて、米国食品医薬品局(FDA)は2021年9月に本併用療法に優先審査権を付与した。

「今回のグローバルな取り組みは、LAG-3経路を介した第3の免疫チェックポイント阻害薬の有用性を立証し、免疫療法の分野を前進させるものであり、これからの診療を変える可能性を持っています」と、筆頭著者でメラノーマ腫瘍内科教授であるHussein Tawbi医学博士は言う。「PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬の併用により、メラノーマ治療は過去10年間、歴史的な発展を遂げてきました。しかし、この併用療法は効果も高いですが、かなりの毒性も伴います。本試験はより効果的で安全な治療選択肢を提供する上で、重要かつ待望のステップとなるでしょう」。

リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)はT細胞の表面に存在する免疫チェックポイントであり、レラトリマブはこのLAG-3を阻害する新規抗体である。メラノーマでは、ニボルマブによって阻害される免疫チェックポイントPD-1と同様に、LAG-3の発現も増加していることが多い。今回のデータは、第3世代チェックポイント阻害薬を用いた初の第2/3相臨床試験の結果であり、またメラノーマにおけるチェックポイント阻害薬併用療法とニボルマブ単剤療法の比較を目的とした初の臨床試験の結果である。

転移性メラノーマの最先端の治療法として現在、PD-1阻害薬とCTLA-4阻害薬の単剤および併用療法が承認されている。併用療法は単剤療法よりも多くの患者に有効であるが、毒性の発現率が50%以上となるなど、QOL(生活の質)への影響が大きい。

本試験において、グレード3または4の治療関連有害事象は併用療法群の18.9%、単剤療法群の9.7%にみられた。グレード3または4の有害事象で最も多かったのは、膵臓および肝臓の酵素値の上昇、疲労感などであった。死亡例のうち併用療法群の3例、単剤療法群の2例は治療関連と判断された。免疫介在性の有害事象として甲状腺機能低下症/甲状腺炎、発疹、大腸炎などが認められた。安全性に関して新たに注目すべき事象は特定されなかった。健康関連のQOLの評価は患者自身が行い、両群に差はなかった。

本試験では、2018年5月から2020年12月の期間に世界の111施設で未治療かつ切除不能なステージ3または4のメラノーマ患者714人が登録された。患者はレラトリマブとニボルマブ併用群、またはニボルマブ単剤群にランダムに割り付けられ、4週間に1回の投与を受けた。患者のうち60人(8.4%)は、再発の6カ月以上前に術後療法として標的療法または免疫療法を受けたことがあるか、あるいはランダム割り付けの6週間前にインターフェロン治療を受けていた。参加者の年齢の中央値は63歳で、41.7%が女性、96%が白人だった。

データカットオフ時(2021年3月9日)において、追跡期間中央値は13.2カ月であり、470人(65.8%)がすでに治療を中止していた。中止理由の第一位は病勢進行だった(併用療法群36.3%、単剤療法群46%)。

本試験では、独立した中央審査機関での盲検判定による無増悪生存期間を主要評価項目とし、増悪の定義は、腫瘍の増大またはあらゆる原因による死亡とした。治療の有用性は、BRAF遺伝子変異の状態、腫瘍のステージ、乳酸脱水素酵素(LDH)値、LAG-3およびPD-1の発現など、事前に規定したサブグループすべてで認められた。

「PD-1阻害薬の単剤投与と比較して、併用療法が明らかに有益であるというエビデンスが得られました。奏効率と全生存期間のデータも楽しみです」とTawbi氏は述べる。「われわれは、この試験では除外となった患者、たとえば未治療の脳転移がある患者やぶどう膜メラノーマなどの患者についても考えています。進歩しているメラノーマ治療のメリットを利用する機会がすべての患者にあってほしいのです」。

この試験は、ブリストル・マイヤーズスクイブ社(BMS)から資金提供を受けている。Tawbi氏は、BMS社に対してコンサルティング/アドバイザリー業務を行っており、BMS社から研究/助成金の支援を受けている。共著者一覧および開示情報は、論文に掲載されている。

翻訳担当者 岩佐薫子

監修 中村泰大(皮膚悪性腫瘍/埼玉医科大学国際医療センター 皮膚腫瘍科・皮膚科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

皮膚がんに関連する記事

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認の画像

進行メラノーマに初の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法をFDAが承認

米国国立がん研究所(NCI) がん研究ブログ米国食品医薬品局(FDA)は30年以上の歳月をかけて、免疫細胞である腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocy...
進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測かの画像

進行メラノーマにペムブロリズマブ投与後わずか1週間でFDG PET/CT検査が治療奏効を予測か

米国がん学会(AACR)ペムブロリズマブの単回投与後のFDG PET/CT画像が生存期間延長と相関する腫瘍の代謝変化を示す 

ペムブロリズマブ(販売名:キイトルーダ)の投与を受けた進行メ...
MDアンダーソンによるASCO2023発表の画像

MDアンダーソンによるASCO2023発表

MDアンダーソンがんセンター(MDA)急性リンパ性白血病(ALL)、大腸がん、メラノーマ、EGFRおよびKRAS変異に対する新規治療、消化器がんにおける人種的格差の縮小を特集
テキサス大...
軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効の画像

軟髄膜疾患のメラノーマに対する免疫療法薬の画期的投与法は安全で有効

MDアンダーソンがんセンター
髄腔内および静脈内への同時投与により一部の患者の転帰が改善
髄腔内(IT)の免疫療法(髄液に直接投与)と静脈内(IV)の免疫療法を行う革新的な方法は、安全であり、かつ、転移性黒色腫(メラノーマ)に起因する軟髄膜疾患(LMD)患者の生存率を上昇させることが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者による第1/1b相試験の中間解析によって認められた。