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転移性乳がんに対する初回ホルモン療法へのCDK 4/6阻害薬併用で全生存期間が延長

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)2021プレスリリース

ホルモン受容体(HR)陽性、HER2陰性の進行乳がんの閉経後女性に対して、初回ホルモン療法にCDK 4/6阻害薬を併用すると、生存期間が1年延長することが明らかとなった。このMONALEESA-2試験の最新結果は欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会2021で発表された[1]。

これは、本患者集団において全生存期間の延長が認められた、統計学的に有意で臨床的意義のある初めての報告である。

試験の筆頭著者であり、米国ヒューストンにあるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのがん内科・乳腺腫瘍内科学教授Gabriel N. Hortobagyi氏は次のように語っている。「これまでの研究では、CDK 4/6阻害薬は標準的なホルモン治療と併用すると、無増悪生存期間とも呼ばれる疾患コントロール期間が約1年延長することが示されています。のちに、これらの薬剤は規制当局によって承認され、HR陽性、HER2陰性の進行乳がんの患者への投与が可能になっています。さらに本結果で、CDK 4/6阻害薬であるリボシクリブが生存期間を1年延長させることが示されたのです」。

本試験では、アロマターゼ阻害薬レトロゾール+リボシクリブ併用群およびプラセボ+レトロゾール併用群に患者668人をランダムに割り付けた。以前、進行期にCDK 4/6阻害薬、化学療法、ホルモン療法を受けたことがある患者は除外された。すでに報告されているように、無増悪生存期間の中央値は、リボシクリブ+レトロゾール併用群では25.3カ月、プラセボ+レトロゾール併用群では16.0カ月であった[2]。 400人死亡後に全生存期間を評価したところ、その中央値はリボシクリブ+レトロゾール併用群が63.9カ月、プラセボ+レトロゾール併用群が51.4カ月であった。

Hortobagyi氏はこう話す。「今回の結果を大局的にみると、私が腫瘍内科医として勤めた45年間で乳がんの臨床試験は何万件も行われ、無増悪生存期間の延長が実に数多くの試験で示されてきているものの、全生存期間はほとんど改善がみられていません。この型の乳がんの初回治療において、統計学的有意な生存期間の延長を示すことは困難なのです。なぜならば、耐性が生じるために患者は疾患経過中に4~15種類の治療を受けることとなり、そのため初回治療の効果が減弱化するためです」。

イタリア・ミラノにあるヨーロッパがん研究所の新薬開発部のクリニカルディレクターGiuseppe Curigliano教授は、この結果について次のように指摘している。「特筆すべき重要なことは、今回のデータは、転移性がんに対するホルモン療法治療歴のない、ホルモン感受性のある患者に関するものであることです。ホルモン療法とCDK 4/6阻害薬であるリボシクリブを併用することで、無増悪生存期間および全生存期間が延長されるということが明確に示されました。これには臨床的意義があります。

私からのアドバイスとしては、例外的に奏効を示す事例や長期間効果が持続する事例と、例外的に進行する事例や生存期間の短い事例を比較することです」と、Curigliano教授は語り、さらなる研究の必要性を示唆した。「比較を行うことで、この治療法から最も利益を受ける患者を予測する生物学的特徴を明らかにすることができるのです。耐性の機序が明らかになれば、奏効しない患者に対する新たな治療法を開発する研究に導くことができます」。

Hortobagyi氏は、治療により多少の利益を受けたサブグループが本試験において存在するかどうかを検討する研究が進行中であると述べた。「われわれは、バイオマーカー、つまりその検査結果から、医師が治療が奏効しそうな患者と奏効しなさそうな患者を判別できるようなタンパク質やその他の物質も探しています。これらの薬剤は非常に高価であり、忍容性は良好であるものの、副作用や毒性があるため、バイオマーカーによる患者の判別は非常に重要です」。

さらに、今回の結果は世界中のこの型のがん患者に適用できると語る。「本試験には、西欧、米国、東アジアの29カ国の患者が参加しており、今回の結果は、民族を問わず、HR陽性、HER2陰性の転移性乳がんに対して当てはめることが可能です」。

Hortobagyi氏は次のように結論づけた。「これまでに本疾患患者で全生存期間の延長を示しているCDK 4/6阻害薬はリボシクリブだけですが、パルボシクリブとアベマシクリブの試験結果にも期待しています。もちろん、別のキナーゼ阻害薬などの新たな治療法も出てきており、この分野では今後さらに研究が進むでしょう」。

【参考文献】

  1. LBA17_PR ‘Overall survival (OS) results from the phase III MONALEESA-2 (ML-2) trial of postmenopausal patients (pts) with hormone receptor positive/human epidermal growth factor receptor 2 negative (HR+/HER2−) advanced breast cancer (ABC) treated with endocrine therapy (ET) ± ribociclib (RIB)‘ will be presented by Gabriel N. Hortobagyi during the Proffered Paper session – Breast cancer, metastatic on Sunday, 19 September, 13:30 to 14:55 (CEST) on Channel 1. Annals of Oncology, Volume 32, 2021 Supplement 5
  2. Hortobagyi GN, Stemmer SM, Burris HA, et al. Updated results from MONALEESA-2, a phase III trial of first-line ribociclib plus letrozole versus placebo plus letrozole in hormone receptor-positive, HER2-negative advanced breast cancer. Ann Oncol. 2018;29:1541–1547.

翻訳平 千鶴

監修小坂 泰二郎(乳腺外科・化学療法/医療社会法人石川記念会 HITO病院)

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